コペルニクスからアインシュタインとビッグ・バン宇宙論までを「クラシックな宇宙論」、加速膨張する宇宙と宇宙の始まり・未来についての現在の天文学者の共通理解を「モダンな宇宙論」、ブラックホールとワームホール、超ひも理論とブレーン宇宙論を「SFのような宇宙論」として、サイエンス作家の立場から一般人向けに宇宙論を解説した本。
アインシュタインの相対性理論の大前提として光速を超えられるものは存在しないという原則があることを高校生の時に読んでそういうものとして育った者としては、多数の恒星からの光を受けながら夜が昼間のように明るくならない理由を説明するのに遠く離れるほど遠ざかる速度が速くなり十分離れると地球から遠ざかる速度が光速を超えて恒星の光が届かなくなる(15~18ページ)というのも、やや違和感を覚えつつもこれは相対速度なのでそれぞれは光速以下の範囲で説明できるとしても、宇宙が加速膨張していてその結果遠くほど相対速度が大きくなる(62~65ページ)とすると理論上は遠く離れた宇宙と地球の相対速度は光速の2倍を超えうることになるのではという疑問に突き当たります。そうなると、それぞれの速度も光速以上に、理論上はなるはずで、光速を超えるものはないという相対性理論の前提はどこへ行ってしまうのか、「相対速度が光速を超えれば観測できない以上それは存在しないも同然」で済ませられないような気がするのですが。
そういうことも含めて、あちこちで詰めなかったり触れなかったりわかっていないというところが多くて欲求不満が残るのと、まえがきで著者がすね気味なのがちょっとひっかかります。とはいえ、宇宙論について、一般読者が何とか読んでみようかという気になれる読み物として貴重というか手頃な本で、その点は評価したいと思います。

竹内薫 ちくま新書 2012年3月10日発行
アインシュタインの相対性理論の大前提として光速を超えられるものは存在しないという原則があることを高校生の時に読んでそういうものとして育った者としては、多数の恒星からの光を受けながら夜が昼間のように明るくならない理由を説明するのに遠く離れるほど遠ざかる速度が速くなり十分離れると地球から遠ざかる速度が光速を超えて恒星の光が届かなくなる(15~18ページ)というのも、やや違和感を覚えつつもこれは相対速度なのでそれぞれは光速以下の範囲で説明できるとしても、宇宙が加速膨張していてその結果遠くほど相対速度が大きくなる(62~65ページ)とすると理論上は遠く離れた宇宙と地球の相対速度は光速の2倍を超えうることになるのではという疑問に突き当たります。そうなると、それぞれの速度も光速以上に、理論上はなるはずで、光速を超えるものはないという相対性理論の前提はどこへ行ってしまうのか、「相対速度が光速を超えれば観測できない以上それは存在しないも同然」で済ませられないような気がするのですが。
そういうことも含めて、あちこちで詰めなかったり触れなかったりわかっていないというところが多くて欲求不満が残るのと、まえがきで著者がすね気味なのがちょっとひっかかります。とはいえ、宇宙論について、一般読者が何とか読んでみようかという気になれる読み物として貴重というか手頃な本で、その点は評価したいと思います。

竹内薫 ちくま新書 2012年3月10日発行