「チーム・バチスタの栄光」に続く田口・白鳥シリーズ第2作。バチスタ・スキャンダルから9か月後の東城大学医学部付属病院で、救命救急センターからたまたまベッドが空いていた神経内科に回され田口が担当することになった肝硬変の伝説の歌姫と眼球摘出手術が待ち受ける小児科病棟の患者の少年を担当する病院一の歌唱力を持つ看護師が絡み合ううちに少年の父親が殺され…という展開です。
前作に続き、序盤から中盤への展開の巧さ、飽きさせずに読ませる筆力には驚きます。病院の人間関係の妙や医療現場の描写のリアリティは本職の医師だからある種お手の物でしょうけど、キャラ設定や構想力も含めて、とても2作目の新人とは思えません。
他方、ミステリーの仕掛けと謎解きは凡庸で、読みながら他の答えが探しにくくこの状況でどうやってどんでん返しを作るんだという興味で読んでいたらどんでん返しがなく終わったという感じです。「チーム・バチスタの栄光」では手術室という通常人にはなじみがない領域でのミステリーだったためにミステリー部分の工夫のなさが目に付かなかったのですが、本作ではごく普通の殺人事件の設定なのでそれがあからさまに見えてしまいます。あえて「ミステリー」と分類せずに、病院と変人キャラの人間関係と展開の妙で読ませる新たなタイプのエンターテインメントと位置づけて読む方がよさそうな気がします。
本作では、アル中の歌姫と看護師の歌に特殊な力を持たせ、警視正がデジタル・ムービー・アナリシス(電脳紙芝居)なるコンピュータなら何でもできるような幻想のソフトが登場し、ファンタジーとSFの趣向となっていて、だいぶ足が地から離れたというか妄想っぽくなっています。私には誇大妄想的な最後を迎える「ケルベロスの肖像」で終わる田口・白鳥シリーズのその後の展開を示唆しているように思えました。
作品冒頭の2ページの序章、一応は謎解きに絡みはするのですがかなり間接的にで、これだけ思わせぶりに拡げた場面の使い方としては期待外れ感があります。
海堂尊 宝島社文庫 2008年9月19日発行(単行本は2006年10月)
《田口・白鳥シリーズ》
1.チーム・バチスタの栄光:2014年1月26日の記事で紹介
2.ナイチンゲールの沈黙:2014年1月28日の記事で紹介
3.ジェネラル・ルージュの凱旋:2014年2月1日の記事で紹介
4.イノセント・ゲリラの祝祭:2014年2月14日の記事で紹介
5.アリアドネの弾丸:2014年2月14日の記事で紹介
6.ケルベロスの肖像:2013年12月9日の記事で紹介
前作に続き、序盤から中盤への展開の巧さ、飽きさせずに読ませる筆力には驚きます。病院の人間関係の妙や医療現場の描写のリアリティは本職の医師だからある種お手の物でしょうけど、キャラ設定や構想力も含めて、とても2作目の新人とは思えません。
他方、ミステリーの仕掛けと謎解きは凡庸で、読みながら他の答えが探しにくくこの状況でどうやってどんでん返しを作るんだという興味で読んでいたらどんでん返しがなく終わったという感じです。「チーム・バチスタの栄光」では手術室という通常人にはなじみがない領域でのミステリーだったためにミステリー部分の工夫のなさが目に付かなかったのですが、本作ではごく普通の殺人事件の設定なのでそれがあからさまに見えてしまいます。あえて「ミステリー」と分類せずに、病院と変人キャラの人間関係と展開の妙で読ませる新たなタイプのエンターテインメントと位置づけて読む方がよさそうな気がします。
本作では、アル中の歌姫と看護師の歌に特殊な力を持たせ、警視正がデジタル・ムービー・アナリシス(電脳紙芝居)なるコンピュータなら何でもできるような幻想のソフトが登場し、ファンタジーとSFの趣向となっていて、だいぶ足が地から離れたというか妄想っぽくなっています。私には誇大妄想的な最後を迎える「ケルベロスの肖像」で終わる田口・白鳥シリーズのその後の展開を示唆しているように思えました。
作品冒頭の2ページの序章、一応は謎解きに絡みはするのですがかなり間接的にで、これだけ思わせぶりに拡げた場面の使い方としては期待外れ感があります。
海堂尊 宝島社文庫 2008年9月19日発行(単行本は2006年10月)
《田口・白鳥シリーズ》
1.チーム・バチスタの栄光:2014年1月26日の記事で紹介
2.ナイチンゲールの沈黙:2014年1月28日の記事で紹介
3.ジェネラル・ルージュの凱旋:2014年2月1日の記事で紹介
4.イノセント・ゲリラの祝祭:2014年2月14日の記事で紹介
5.アリアドネの弾丸:2014年2月14日の記事で紹介
6.ケルベロスの肖像:2013年12月9日の記事で紹介