個人金融資産を預貯金や保険などの形で持っているのでは、そのお金は銀行や保険会社等が選んだ企業に融資・投資されるだけであり、人権や環境に配慮する企業の応援には回らない、自分が応援したい企業への直接の投資や環境保護等に配慮した投資を行うファンドの購入によって、自分のお金をある程度のリターンを確保しながら活かしていくことが有益だ、自分自身が投資しない場合でも機関投資家、特にGPIFのような公的年金基金の運用に国民が意見をいうことで投資の運用のあり方を変えていくチャンスがあるということを論じた本。
著者が言いたい基本の主張は、理解できますが、その前段として、株式投資はギャンブルでないとして正当化を図る部分は、やはり証券会社のシンクタンクの利害が優先しているように見えます。上場株に関していえば、バブル期以降は時々数年レベルの上昇はあっても全体としては下げ基調で、数年間の上げ相場のうちに買って売った(売り抜いた)人は利益を上げられても、バブル以降に買って長期間持っていた株主はほぼおしなべて株価が低下して損をしているというのが通常の感覚だと思います。著者が118~119ページで示しているチャートを見ても、ふつうはそう読むでしょう。ところがこの著者は「長期の動きをみると大きく成長しているのです。」「日経平均株価は、1949~2013年までの65年で、実に170倍近くに成長しています。」「株式投資は長期投資であればバクチではなくて、手堅い資産運用と考えることができます。」(118ページ)などというのです。「長期投資」って、終戦直後から持ち続けてる人のことですか。今から投資するように勧誘する相手に、終戦直後の破滅的な状態からの上昇やもう2度と来ることが考えられない高度経済成長期の上昇を含めたというか、上昇のほとんどがそういうものである過去の上昇を使って説明するのって、もし相手が信じたら詐欺じゃないでしょうか。こういう説明をされると、社会的投資の推進という目標には同意できても、この著者の説明全体の信用性に疑問を持ってしまいます。監視し意見をいうべき相手とするGPIFの資産運用が、安倍政権になって株式投資に大幅にシフトして「アベノミクス」を粉飾する株価底上げに使われていること(その挙げ句、株価下落でとんでもない規模の損を出して年金の将来に暗い影が生じていることは、この本の脱稿後に明らかになったのですが、それを置いても)にはまったく触れず、安倍政権の「女性活躍社会」を賞賛しという立ち位置も、著者の主張を素直に信じにくいものにしています。
「生産性出版」という出版元の名前もすごいですが、全体に「てにをは」系を中心に誤植が目立ちます。
河口真理子 生産性出版 2015年6月30日発行
著者が言いたい基本の主張は、理解できますが、その前段として、株式投資はギャンブルでないとして正当化を図る部分は、やはり証券会社のシンクタンクの利害が優先しているように見えます。上場株に関していえば、バブル期以降は時々数年レベルの上昇はあっても全体としては下げ基調で、数年間の上げ相場のうちに買って売った(売り抜いた)人は利益を上げられても、バブル以降に買って長期間持っていた株主はほぼおしなべて株価が低下して損をしているというのが通常の感覚だと思います。著者が118~119ページで示しているチャートを見ても、ふつうはそう読むでしょう。ところがこの著者は「長期の動きをみると大きく成長しているのです。」「日経平均株価は、1949~2013年までの65年で、実に170倍近くに成長しています。」「株式投資は長期投資であればバクチではなくて、手堅い資産運用と考えることができます。」(118ページ)などというのです。「長期投資」って、終戦直後から持ち続けてる人のことですか。今から投資するように勧誘する相手に、終戦直後の破滅的な状態からの上昇やもう2度と来ることが考えられない高度経済成長期の上昇を含めたというか、上昇のほとんどがそういうものである過去の上昇を使って説明するのって、もし相手が信じたら詐欺じゃないでしょうか。こういう説明をされると、社会的投資の推進という目標には同意できても、この著者の説明全体の信用性に疑問を持ってしまいます。監視し意見をいうべき相手とするGPIFの資産運用が、安倍政権になって株式投資に大幅にシフトして「アベノミクス」を粉飾する株価底上げに使われていること(その挙げ句、株価下落でとんでもない規模の損を出して年金の将来に暗い影が生じていることは、この本の脱稿後に明らかになったのですが、それを置いても)にはまったく触れず、安倍政権の「女性活躍社会」を賞賛しという立ち位置も、著者の主張を素直に信じにくいものにしています。
「生産性出版」という出版元の名前もすごいですが、全体に「てにをは」系を中心に誤植が目立ちます。
河口真理子 生産性出版 2015年6月30日発行