読書の気力があまり湧いてこないので、本棚から2冊のモーリス・ド・ヴラマンク(1876-1958)の図録を2冊引っ張り出してきた。ひとつは1989年に日本橋三越で開催された「没後30年・フランス野獣派の旗手 ブラマンク展」と、1997年にBunkamuraザ・ミュージアムで開催された「生誕120年記念 ヴラマンク展」の図録である。
「花瓶の花」(1939-40年)は前者に展示され、「花」(1940年)は後者に展示されていた。
激しい嵐の風景画を描くブラマンクが、静物画、しかも花瓶の花を描くのかと驚いたものだが、激しいタッチの花々が花瓶からあふれ出るように描かれている。大変印象的な作品を両展覧会で堪能した。
特に黄色の細い花弁とつややかな黒い花瓶が印象的な「花」を私は気に入っている。白い花弁に呼応するように多分室内の光の乱反射を描いたと思われる白い光線の短い煌めきも線香花火のように忘れられない。
この外の花瓶と花を描いた作品が多数展示されていた。硬質で陶器の表面のつややかな花瓶をねっとりとした質感に描き、対称的にそれまでの画家が柔らかく描こうとした花を勢いのある強い筆致で描いた転換が私の目に新鮮に映った。粗い勢いのある筆致と言ったが、決してぞんざいではなく、花の形や色彩は良く計算された描き方でもある。
しかしこの激しい生の横溢に圧倒されるような花と花瓶は、狭く密閉された日本の家屋には合わない。少なくとも我が家の壁に掛けたら、圧倒されて居住者である私は縮こまってしまいかねない。
2冊の図録はだいぶぼろぼろになってきた。