半藤一利氏が亡くなった。90歳と報道されている。
現在私の本棚には「漱石俳句を愉しむ」(PHP選書)しか残っていない。しかし、「漱石先生ぞな、もし」「漱石先生がやって来た」「漱石先生大いに笑う」と読んだ記憶がある。考えてみると単行本としては購入していなかったかもしれない。
夏目漱石に関係する文章は、月刊誌などに載ったものを時々読んだだけだったかもしれない。はっきり言ってこの程度に、決していい読者ではない。
だが、軽妙で飄々とした文章に引き込まれて、愉しめたことは確かだ。特に漱石に関する文章は、小難しく漱石を語ろうとすることに警告を発しているように感じた。
「吾輩は猫である」を楽しく読んだように漱石の俳句を軽妙に語る語り口は楽しかった。何しろ、漱石の長女筆子の四女の夫である。漱石には思い入れがあるのだろう。そうはいっても生まれは1930年だから、そのとき漱石はすでに亡くなっている。
反原発の立場での発言や、東京大空襲で死の淵をさまよった体験からいわゆる護憲派として最近目にすることも多くなり、私も短い文章を時々目にした。しかし私にとってはやはり漱石俳句の解説者のイメージであった。
良い読者ではなかったが、勉強させてもらったことに感謝したい。