Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

「この道」(古井由吉)

2022年04月01日 20時59分32秒 | 読書

   

 古井由吉の最晩年の短編集「この道」には8編の短編が並んでいる。本日は最初の「たなごころ」を読み終わった。
 古井由吉の小説は40年ぶりくらいであり、さらに濃密で視点の移動などを追うのが難しいので、その文章の呼吸に馴れるまでは時間がかかる。じっくりと読んだ。古典の詩歌の知識なども読み進むにあたって必要なので、さらに時間がかかる。わからないことはスマホで検索などもしながら喫茶店で読んだ。

「死はそのこの事もさることながら、その言葉その観念が、生きている者にはこなしきれない。死を思うというけれど、それは末期のことであり、まだ生の内である。私は死んだとは、断念や棄権の比喩でなければ、あるいは三途の川へ向かう道々のつぶやきか、心が残って人の枕上に立つようなことでも思うのでなければ、理に合わぬ言葉である。わたしは死んだと知る、そのわたしが存在しない。かりに臨終の意識の、影のようなものがしばし尾を曳くとしても、記憶が失われれば、自己同一性とやらも消える。」(「たなごころ」15頁)



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