Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

謡曲「海士」

2020年04月26日 20時27分42秒 | 芸術作品鑑賞・博物館・講座・音楽会等

 家にずっといると結局読書もしないでボーっとしている時間のほうが長いような気がする。読書もそれほどはかどらない。このようなときは謡曲などに目をとおすのもいいものである。
 「なみだふるはな」を読んでいる間に、謡曲の「海士」を捲ってみた。以前に読んでいる。数回は読んだと思う。
 この曲は藤原北家の房前(ふささき)の出生譚。

 房前大臣は母の追善に讃岐の志度(しど)寺に行く。海士が、水底の月を見るために梅松布(みるめ)を刈るよう命ぜられた昔話を語る。大陸からもたらされた玉をこの浦で龍神に奪われ、房前の父、鎌足が海士と契りを交わし、宝珠を取り返せば子を世継にすること約束。海士は命がけで竜宮に向かい宝珠を取り戻す。語り終えた海士は、自分が房前の母だと名乗り海中に消える。房前は亡母の手紙を読み十三回忌の供養とする。龍女姿の母の霊が現れ、法華経の功徳で成仏したと喜び舞を舞う。

 この曲は、海士が玉を取りに行く場面「玉ノ段」が印象的である。
「大悲の利剣を額に当て、龍宮の中に飛び入れば、左右へばつとぞ退いたりける。その隙に宝珠を盗み取つて逃げんとすれば守護神追つかく。かねて企みしことなれば、持ちたる剣を取り直し、乳の下をかき切り玉を押しこめ、剣を捨ててそ伏したりける。龍宮の慣らひに死人を忌めば、あたりに近づく悪龍なし。約束の縄を動かせば、人びと喜び引きあげたりけり‥」
 写実的にと思ってしまうほどで、明治期の神話に題材をとった「歴史画」などを思い出してしまう。

 なお、引用は新潮日本古典集成「謡曲集 上」による。 



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