メランコリア

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ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

1993 WIMBLEDON

2004-01-31 23:00:00 | テニス
今年も一面に青々と伸びた緑のコート、快晴の空の下、ウィンブルドンが開催した。
とくに女子は100回記念(男子は107回)ということで、ウェアの移り変わりの歴史も流されて、
一層お祭り気分が盛り上がっている。

そして、ナブラチロワが100回記念に10度目の優勝を狙って(スコートをショートパンツに履き替えて)、チャレンジしてる。

ここまで(7/1)のあらましを言うと、まず日本選手は相変わらず2、3回戦の厚い壁が敗れずに、
期待の伊達さんは試合直前の故障でリタイア。

女子は、ガヴィ他も勝ち上がってはいるけど、まずはグラフの優勝は目に見えてて、
とくにエキサイティングなゲームはない。

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それより今年のウィンブルドン男子シングルスは、好カードの連続。
近年なかなか観られなかったシード選手同士、つまりトップランキング同士の素晴らしいプレーが堪能できそう。

レンドルが、またしても2回戦止まりでランキングではずいぶん格下の選手に敗れ(ああ、これが最後のチャンスなのに!)、
チャンも1回戦で消えたほかは、まず、ベッカー×ルコントのゲームがなかなかよかった。

好調のルコント。彼独特のプレイとパフォーマンスを楽しめたのは嬉しい。
過激なシェイプアップをして(エリック・クラプトン似)今年ここ一番に賭けてるベッカーには惜しくも敵わなかったけど。

噂の婚約者も応援していて、シュティッヒとのクォーターファイナルは、第5セットにまでもつれこみ、
延々4時間のゲームの末、ベスト4に上がったのはボリス。


それから他のシード選手は、おなじみのエドバーグ、クーリエ、そして我らがアガシ×ピートのゲームは中盤のベストだろう。

ディフェンディングチャンピオンで、シード8、これは史上最低という、また新たな記録を作ったアガシは、
大会初日、お定まりのセンターコートで、伸び盛りのドイツ選手をストレートで下した時は、
手首を痛めてロランギャロスも欠場、2ヵ月半ぶりのゲームということもあるし、
正直いって2度の優勝は誰も期待してなかったんじゃないかしら?と思っていたら、
調子が良さそうで、もしかして、もしかしたら!?という希望も持てた。

一方のサンプラスも大会直前に痛めた右肩の筋肉の痛みが想像以上に悪化して、
第1セット、第2セットをとったにも関わらず、3、4セットをアガシが奪い返して、
ファイナルセットにもつれた。


まるで悪魔が突然この日だけとりついていたみたいにアガシのフォームを変えた。
ファーストサーヴがことごとく(冗談みたく)決まらずに、
その影響でか、他のショット、決め球も何もかもガタガタに崩れてたって感じ。

それに比べて、トレーナーを呼んでマッサージを受けていたとは思えないほど、
終盤に近づけば近づくほど、こちらは神がかったようにピートのファーストサーヴが決まって、
もつれにもつれた結果、最後は3つのサーヴィスエース(信じられる???)に、
もう1つのポイントを重ねて、6-2、6-2、3-6、3-6、6-4でピートがベスト4に進んだ。

1日休養をとっての次の試合にのぞめるといっても、これからが正念場になるのに、
ピートの勝利には暗雲がたちこめているようにも思えるけど、後半はなるべく試合を長引かせないために、
飛びついてのショットで転んだり、レストチェアに突っ込んだりと、
まさに苦痛の中での死闘で勝ち取ったサンプラスは見事で、
彼とファイナルセットを戦い切ったアガシも両選手まったく素晴らしい試合だった。

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1993年のウィンブルドンが幕を閉じた。

後半を簡単に説明すると、まず女子。

女子決勝 グラフ×ノボトナ
100回記念に10回目の優勝を狙っていたマルティナは、
ノボトナ(すっかり雰囲気が変わった)の好調なサーヴィス&ボレーに敗れ、
女子ファイナルは、グラフ×ノボトナというカードになった。

第1セットは予想通りグラフがとったが、第2セットは6-1でノボトナ。
このセットに一体何が起こったのか結局見れなかった。ただ言えるのは、
'80後半、グラフが絶対的脅威だった時期に比べたら、それほど強くはないということ。
そして第3セットも4-1とノボトナがリードしてからが問題だった。

初優勝、それもウィンブルドンタイトルを目前としたプレッシャーとはどんなものなのか。
彼女のその後のプレーを見ればよく分かる。

それまでの積極さが落ち、3度のダブルフォルトで自滅。
結局、グラフが6-4で5度目の優勝を果たした。

表彰式では、思わずケント夫人の肩でノボトナが顔をうずめて涙を流したというシーンがあったらしいが、それさえ見逃してしまった。


男子決勝 ピート・サンプラス×ジム・クーリエ
しかし、今年のハイライトは、なんといってもMEN'S FINAL。
66年ぶりに男子の1~4シード選手が勝ち残ったという記録も生まれて、
'70以降20年ぶりに大会中、一滴の雨が降らなかったという嬉しいニュースも重なり、
これほどの好カードがウィンブルドンで実現したというだけで、テニスファンには嬉しい年だった。

セミファイナルでベッカーを敗ったピートと、エドベリを敗ったクーリエ。
「天候のせいで固くなったセンターコートのおかげだ」と彼自身も言っているとおり、
グラスコートでの対戦は初めての2人だが、ほとんど影響はなかった。

ウィンブルドン初優勝の年齢が、マック、エドベリ、ほか大勢が22歳だったという記録もこの2人にほとんど当てはまった。
クーリエ22歳、ピートも今年8月で22歳。
選手として心身ともに最も充実する年齢なのかもしれない。
ちなみに、7/4、アメリカの独立記念日に、アメリカン同士の対戦となった。

第1セットも、第2セットもまったく似通ったサーヴィスキープの後のタイブレイク合戦。
1ポイントのちょっとしたミスがそのままセットポイントにつながり、2セットともピートが取った。
その完璧なサーヴィス中心のプレーに隙が出てきた第3セットに、
すかさずクーリエが得意の強烈なショットで、まず1セット取り返す。

第4セット、ピートがクーリエのゲームをブレイクして向かえたサーヴィング・フォー・ザ・マッチ。
そのファーストポイントは、歴史的超スーパーショットの応酬で、クーリエが取った。
あとがないジムの底意地を見せて、食らいついていく姿はさすが。
結果、6-3で初優勝を飾ったサンプラス。

去年のアガシの感激シーンと比べると、両手を真っ直ぐ静かに上げているサンプラスは、
スタイルの違いがハッキリ表れていた。

いったんベンチに戻ってから観衆の声援で思い出したようにもう一度立ち上がり、
両手を上げている姿が印象的だった。


それにしても、なんというカルマ
アガシはクーリエに勝てなくて、なぜかクーリエはサンプラスに勝てない。
でも、この2人のパワーと安定したゲーム運びを観れば、
この混沌とした男子テニス界で、まだ2強として君臨することは間違いない。
肩の故障なんかなんのその、久々に完璧なテニスで優勝シーンを観た気がする。

試合前の本人のコメント。
「今年でなくても、近いうちにウィンブルドンタイトルをものにする自信はある」
「最近は、プレーに円熟味も出てきた気がする」

単にクールでキューリで、いつのまにか世界NO.1になってただけじゃない彼の自信が伝わる。
サーヴィスの威力、コース、鋭さはもちろん、グランドストロークも、クーリエに負けない。
タイプの違ったパワーとキレ、安定感がある。

かつてレンドルにストロークの練習をしてもらったというが、確かにふとしたショットの瞬間、
あの全盛期のコンピュータのように正確で、まったく信じられない速さと威力を持った彼のストロークを観たような気がした。

現在NO.1ランカーのピートに、彼のショットが受け継がれているとすれば、
ウィンブルドンだけ制することができないレンドルにも芝生に対する大きな功績が残せたということができる。

7-6、7-6、3-6、6-3 ピート・サンプラス


彼の背にまた別の猿が登るかしら???

 


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