■『精神』(2009)
監督・製作・撮影・編集:想田和弘
先日、想田監督のドキュメンタリー映画『Peace(ピース)』を観て、その他の作品も気になって借りてみた。
本作は、『Peace』を観る前から気になってはいたけど、自分の気分が安定している時じゃなきゃムリかもと思って後回しにしていた。
古い民家?を利用した病院で、待合室というより、みんなで休み、集う場所があるのが特徴的。
生保指定医の山本医師は、患者さんを公私にわたって何十年もかけて見守り続けている。
今作にもマザーテレサの引用が出てきた。世界中の大勢の心の支えになっているんだな。
▼内容抜粋メモ(患者さんの名前や話の内容の記憶違いがあったらすみません/謝
うつ病患者の女性・美咲さん
「友だちがいなくなって、大量服薬してしまった。もう死にたい!」
と自殺願望を訴え、腕にはたくさんの自傷行為の跡もある。
ものすごい数の薬を処方されていて、服用数を間違えると致死量になるという/驚
「人間が飲む量じゃない」
生保を受けていて「1割負担になったら食べれなくなる」
今は13歳と10歳になる2人の子どもがいて、お寺にある施設に預けられていて週1で電話や手紙がくるのが楽しみ。
子どもが小さい頃は、育てるためにやむなく売春もしたという。
子どもを殺してしまった躁鬱の女性・藤原さん(だっけ?
頭の中で声が聞こえて耐えられなくなり家を出て、公園で野宿していたので病院の宿泊施設に1泊することになった。
「ここから出てけ!」などという声は、何十年も会ってない父親の声に似ているという。
昔から母との折り合いが悪く、ワープロの資格をとろうとしても「行くな」と言って家から出してくれない。
母が子宮がんになり、その看病の負担が重く、薬を大量服用し、「いのちの電話」で逆探知され、入院した。
結婚して、子どもが泣いてばかりいるので口を塞いでしまい、植物状態になって亡くなって、警察が来た。
夫に「お前に子育てが出来ないことはない」「育て方が悪いんだ」「精神病院に通院するなら離婚する」と言われ、
隠れて通院していて、幻覚も見るので、入退院を繰り返した。
夫からは「お前が子どもを殺した」、警察からは「その罪は一生抱えていくんだ」と責められ、
その後、また子どもができたが、今でも亡くなった長男が成長した夢を見る。
頭の中で声がするという男性・吉澤さん(だっけ?
「わたしはそれをインベーダーと呼んでいる。数分後に自分が何をしでかすか分からないから、
犯罪をするかもしれない不安があり、もしそうなったらちゃんと責任はとりたいと思っている」
「自分がやりたいことをしたい」「孤立が原因」
行きがい(場所)+居きがい=生き甲斐であるというメモを山本医師から渡される。
認知を分かりやすく図式化・視覚化して見せるのは、いい方法だと思うな。
短期目標を決めて実行すれば、成功体験が積めて、自己肯定力も高まると提案され、
「ラジオを聴くとホッとするから、それを続けてみる」と約束する。
非定型うつ病の女性
「体験者じゃなきゃ分からないですよ。自分を責めてばかりいるから、自分に○をつけるようにしている」
セクハラの手紙が届いて困っていると医師に見せる
病院の食堂の食事は患者さんとスタッフの補助で作る。栄養バランスの整った定食のセットが380円は安い!
「夢工房パステル」での奉仕活動
「牛乳配達は採算合うが、ほかは政府からの助成金なしではムリ」
医療費が高くなると“受診回数を減らす”“副作用の強い安い薬に替える”という弊害が出てくる。
親亡き後の生活をどうするか患者同士で話し合う
お金のやりくりなどがポイント。
傷病手当て金には医師の証明書が必要だが、提出しても社会保険事務所から戻されてしまうケースもある。
摂食障害の女性
生育歴もあるが、会社で「脚が太い」と言われたなど、人間関係のトラブルが原因。
病院で薬の調合を手伝うことがやる気につながるという。
息子に3年会ってない女性
精神病が理由で息子に絶縁され、電話をしても切られてしまう。
回復期にある患者の男性
「暗いニュースばかりで、親切心が感じられない」という訴えに、
山本「田舎で百姓するなら月6万円で暮らせる。元手の苗は近所から譲ってもらえるそうだ」と提案する。
ごちゃごちゃの部屋で、自活のためにスタッフから料理を教えてもらう男性
食は自活の第一歩だものね。
スタッフの女性は、引きこもりがちな患者さんのために、近所のイベントを探して掲示板に張り出している。
「無料ってゆうのがポイントですv」
「山本先生は、半分道楽でやっているというところがあるから儲かってはいません
給料は月10万円ほど。それは先生の年金と講演料も含んでいる」
訪問看護師養成講習会
「四角い枠を書いてみてください。その次にバランスよく○を書いてみてください」
私は正方形の中に○を均等に下2つ、上に1つで描いたけど、
みんなで見合わせてみるといろんな描き方があることに気づいて驚く!
“一方向性のコミュニケーションの結果”であるという山本医師。
「なんでも本人に尋ねるのが一番イイ。本人は無視され、無視され、無視され続けているから、
もう“自分はダメな人間だ”という風に周囲から見られている、と思っている。
皆さんの活動が本当にこれから大事になると思いますなあ」
講演会の後、質問を受ける。
Q:骨折だというので医師が行くと、精神病患者で、家族も隠したいためにリハビリを拒否されるのはどうしたらよいのか?
A:親が権力を握っているから、少しずつ本人の意向を入れて、本人が選べるよう援助するしかない。
山本医師と25年の付き合いだという躁鬱患者の男性・菅野さん
「人の悩みを聞けば自分の心の傷も癒される」
若い頃に1日18時間、半年間勉強して、教師に対して点数をつけて提出したら「こいつは変だ」と思われた。
夜は大学に通い、昼は働く生活をしていたら倒れた。手持ちのお金が10円ほどになって、
山本先生に電話をしたら、たった1人の患者のために名古屋まで来てくれた。
統合失調症でクリスチャンの男性
男性「なぜ映画を撮っているのか?」
想田「精神病患者と健常者の間には、見えないカーテンがあるように思った。その奥を世間に見せたいと思った」
同意した男性いわく
「偏見というカーテンは、ヘタすると当事者から健常者にも作る場合がある。
病が良くなると、健常者もよく見えてくるから、カンペキな人間など1人もいないと分かってくる。健常者にも欠陥がある。
では、会社や組織に入った時に、健常者を補う役割になればいいと思って闘ってきた」
音楽サークルに参加しようとする男性患者
男性「人間関係で不安がある」
山本「そう差はないよ」
男性「(精神障害者保健福祉)手帳を持ったほうがいいか?」
山本「手帳を持つことに自分で偏見がなければイイ。それが特別に思われるならやめたほうがイイ」
休憩室で集う患者さんたち。
菅野さんは写真撮影も趣味で、そこに自作の素晴らしい詩も書いている。
踏まれても、踏まれても、咲き誇るタンポポが好きだという。
マザーテレサの名刺に書かれた言葉を引用して、「違う意見でも、両方正しいこともあるんやな」
非定型うつ病の女性は短歌を詠んだ。
「頭なで 自分で自分を褒めてやる よくぞここまで 生きてきたねと」
「世の中の 冷たき視線を受けながら 清く生きるは とても苦しき」
最後は、脚の障害と精神疾患のために、市営住宅に入居が許可されない?男性の様子もあった。
なぜ、何十年も投薬+通院しても回復しないのだろう、と素朴な疑問がおこった。
投薬と傾聴の治療が果して充分と言えるのか?
頭の中でずっと自己否定の声がしていたら、そりゃあ生きているのも耐えられないに違いない。
根本的な理由は人それぞれあるだろうけれども、患者・健常者の境界線もなく
みんなでより良く変えられることがあるとするなら一体何があるのだろうか???
本作に出演されていたうちの3人がすでに亡くなられたことが最後に追記されていた。合掌。
監督・製作・撮影・編集:想田和弘
先日、想田監督のドキュメンタリー映画『Peace(ピース)』を観て、その他の作品も気になって借りてみた。
本作は、『Peace』を観る前から気になってはいたけど、自分の気分が安定している時じゃなきゃムリかもと思って後回しにしていた。
古い民家?を利用した病院で、待合室というより、みんなで休み、集う場所があるのが特徴的。
生保指定医の山本医師は、患者さんを公私にわたって何十年もかけて見守り続けている。
今作にもマザーテレサの引用が出てきた。世界中の大勢の心の支えになっているんだな。
▼内容抜粋メモ(患者さんの名前や話の内容の記憶違いがあったらすみません/謝
うつ病患者の女性・美咲さん
「友だちがいなくなって、大量服薬してしまった。もう死にたい!」
と自殺願望を訴え、腕にはたくさんの自傷行為の跡もある。
ものすごい数の薬を処方されていて、服用数を間違えると致死量になるという/驚
「人間が飲む量じゃない」
生保を受けていて「1割負担になったら食べれなくなる」
今は13歳と10歳になる2人の子どもがいて、お寺にある施設に預けられていて週1で電話や手紙がくるのが楽しみ。
子どもが小さい頃は、育てるためにやむなく売春もしたという。
子どもを殺してしまった躁鬱の女性・藤原さん(だっけ?
頭の中で声が聞こえて耐えられなくなり家を出て、公園で野宿していたので病院の宿泊施設に1泊することになった。
「ここから出てけ!」などという声は、何十年も会ってない父親の声に似ているという。
昔から母との折り合いが悪く、ワープロの資格をとろうとしても「行くな」と言って家から出してくれない。
母が子宮がんになり、その看病の負担が重く、薬を大量服用し、「いのちの電話」で逆探知され、入院した。
結婚して、子どもが泣いてばかりいるので口を塞いでしまい、植物状態になって亡くなって、警察が来た。
夫に「お前に子育てが出来ないことはない」「育て方が悪いんだ」「精神病院に通院するなら離婚する」と言われ、
隠れて通院していて、幻覚も見るので、入退院を繰り返した。
夫からは「お前が子どもを殺した」、警察からは「その罪は一生抱えていくんだ」と責められ、
その後、また子どもができたが、今でも亡くなった長男が成長した夢を見る。
頭の中で声がするという男性・吉澤さん(だっけ?
「わたしはそれをインベーダーと呼んでいる。数分後に自分が何をしでかすか分からないから、
犯罪をするかもしれない不安があり、もしそうなったらちゃんと責任はとりたいと思っている」
「自分がやりたいことをしたい」「孤立が原因」
行きがい(場所)+居きがい=生き甲斐であるというメモを山本医師から渡される。
認知を分かりやすく図式化・視覚化して見せるのは、いい方法だと思うな。
短期目標を決めて実行すれば、成功体験が積めて、自己肯定力も高まると提案され、
「ラジオを聴くとホッとするから、それを続けてみる」と約束する。
非定型うつ病の女性
「体験者じゃなきゃ分からないですよ。自分を責めてばかりいるから、自分に○をつけるようにしている」
セクハラの手紙が届いて困っていると医師に見せる
病院の食堂の食事は患者さんとスタッフの補助で作る。栄養バランスの整った定食のセットが380円は安い!
「夢工房パステル」での奉仕活動
「牛乳配達は採算合うが、ほかは政府からの助成金なしではムリ」
医療費が高くなると“受診回数を減らす”“副作用の強い安い薬に替える”という弊害が出てくる。
親亡き後の生活をどうするか患者同士で話し合う
お金のやりくりなどがポイント。
傷病手当て金には医師の証明書が必要だが、提出しても社会保険事務所から戻されてしまうケースもある。
摂食障害の女性
生育歴もあるが、会社で「脚が太い」と言われたなど、人間関係のトラブルが原因。
病院で薬の調合を手伝うことがやる気につながるという。
息子に3年会ってない女性
精神病が理由で息子に絶縁され、電話をしても切られてしまう。
回復期にある患者の男性
「暗いニュースばかりで、親切心が感じられない」という訴えに、
山本「田舎で百姓するなら月6万円で暮らせる。元手の苗は近所から譲ってもらえるそうだ」と提案する。
ごちゃごちゃの部屋で、自活のためにスタッフから料理を教えてもらう男性
食は自活の第一歩だものね。
スタッフの女性は、引きこもりがちな患者さんのために、近所のイベントを探して掲示板に張り出している。
「無料ってゆうのがポイントですv」
「山本先生は、半分道楽でやっているというところがあるから儲かってはいません
給料は月10万円ほど。それは先生の年金と講演料も含んでいる」
訪問看護師養成講習会
「四角い枠を書いてみてください。その次にバランスよく○を書いてみてください」
私は正方形の中に○を均等に下2つ、上に1つで描いたけど、
みんなで見合わせてみるといろんな描き方があることに気づいて驚く!
“一方向性のコミュニケーションの結果”であるという山本医師。
「なんでも本人に尋ねるのが一番イイ。本人は無視され、無視され、無視され続けているから、
もう“自分はダメな人間だ”という風に周囲から見られている、と思っている。
皆さんの活動が本当にこれから大事になると思いますなあ」
講演会の後、質問を受ける。
Q:骨折だというので医師が行くと、精神病患者で、家族も隠したいためにリハビリを拒否されるのはどうしたらよいのか?
A:親が権力を握っているから、少しずつ本人の意向を入れて、本人が選べるよう援助するしかない。
山本医師と25年の付き合いだという躁鬱患者の男性・菅野さん
「人の悩みを聞けば自分の心の傷も癒される」
若い頃に1日18時間、半年間勉強して、教師に対して点数をつけて提出したら「こいつは変だ」と思われた。
夜は大学に通い、昼は働く生活をしていたら倒れた。手持ちのお金が10円ほどになって、
山本先生に電話をしたら、たった1人の患者のために名古屋まで来てくれた。
統合失調症でクリスチャンの男性
男性「なぜ映画を撮っているのか?」
想田「精神病患者と健常者の間には、見えないカーテンがあるように思った。その奥を世間に見せたいと思った」
同意した男性いわく
「偏見というカーテンは、ヘタすると当事者から健常者にも作る場合がある。
病が良くなると、健常者もよく見えてくるから、カンペキな人間など1人もいないと分かってくる。健常者にも欠陥がある。
では、会社や組織に入った時に、健常者を補う役割になればいいと思って闘ってきた」
音楽サークルに参加しようとする男性患者
男性「人間関係で不安がある」
山本「そう差はないよ」
男性「(精神障害者保健福祉)手帳を持ったほうがいいか?」
山本「手帳を持つことに自分で偏見がなければイイ。それが特別に思われるならやめたほうがイイ」
休憩室で集う患者さんたち。
菅野さんは写真撮影も趣味で、そこに自作の素晴らしい詩も書いている。
踏まれても、踏まれても、咲き誇るタンポポが好きだという。
マザーテレサの名刺に書かれた言葉を引用して、「違う意見でも、両方正しいこともあるんやな」
非定型うつ病の女性は短歌を詠んだ。
「頭なで 自分で自分を褒めてやる よくぞここまで 生きてきたねと」
「世の中の 冷たき視線を受けながら 清く生きるは とても苦しき」
最後は、脚の障害と精神疾患のために、市営住宅に入居が許可されない?男性の様子もあった。
なぜ、何十年も投薬+通院しても回復しないのだろう、と素朴な疑問がおこった。
投薬と傾聴の治療が果して充分と言えるのか?
頭の中でずっと自己否定の声がしていたら、そりゃあ生きているのも耐えられないに違いない。
根本的な理由は人それぞれあるだろうけれども、患者・健常者の境界線もなく
みんなでより良く変えられることがあるとするなら一体何があるのだろうか???
本作に出演されていたうちの3人がすでに亡くなられたことが最後に追記されていた。合掌。