メランコリア

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『イグアナの嫁』(幻冬舎)

2013-05-08 16:21:51 | マンガ&アニメ
『イグアナの嫁』(幻冬舎)
細川貂々/作

『ツレがうつになりまして。』『その後のツレがうつになりまして。』の2冊を読んで、
書いた順番としては、この『イグアナの嫁』は上記2冊の間にあたるのかな???
図書館でも人気で予約待ちが多い1冊。

わたしは虫以外の生物なら大抵へーきだから、イグアナさんも可愛いと思うけど、
体長1m50cmまで成長するとか、脱皮とか、噛まれて大出血とか聞くと、
これまで、ほとんど生態を知らなくていちいち驚いた



【内容抜粋メモ】
ペットショップで間違えて仕入れちゃったから飼育本+爬虫類用石型ヒーター+流木を付けて
「千円でどうですか?と勧められ、半ば衝動的に飼われたイグさん。
後になって「イグ」て名は、犬の「ポチ」みたく一般的と知るw

イグアナは太陽の光を浴びてビタミンを作るため、日光浴しないと病気になる。
直射日光に当たると体が黒くなるが、部屋に戻ると元の緑に戻る。
日光浴を繰り返していると皮膚が白くなって脱皮する。(笑えるけど、ちとコワイ・・・



引っ越して、温室から自分でガラス戸を開けて出てくるようになるイグ。



イグさんのマンガの連載が決まって有頂天になるテンテンさん。だが、連載は半年で終わる。
友だちから
「理不尽だと思ったら、ちゃんと相手に伝えないと一生なめられるよ。
 人の言いなりに人生送ってるからいつまでたってもダメなんじゃない?」と言われ涙

“私って頭が悪いのかも。いつもしばらくしてから感情が出てくる。”
“言われた通りにしかできな自分。だからいつも人のせいにしてる自分。
 すぐに自分の意見を言えない自分。言いたいことがちゃんと言えなかったので、いつまでも暗い気持をひきずることになる”
てとっても共感。。。

ここからは『ツレがうつになりまして。』ともつながるけど、最初は遊園地でツレが「極度の貧血」を起こしたことから始まる。
(絶叫マシンとか人間の乗るものではないと思う。うん
ツレは20歳でひどい皮膚病になり、肉と魚を食べるのをやめたら皮膚病は治ったが、貧血になったようだ。

冬から春にかけてイグさんの発情期のコーフンがエスカレートし、ついにテンテンさんの手を噛み重傷を負わせてしまう
・・・てか、あんなに流血してるのに、オロナイン塗って一晩様子見るって方法はどう考えても違うと思う

2003年末ころ、ツレはライブハウスにハマり、仕事も過剰なのに、ライブ通い等に夢中になる(なんだか似てるような・・・
→ものすごいイビキ、原因不明の背中痛、食欲不振→ライブも行けなくなる
そして、ある日「死にたいんだ・・・」ともらし、「うつ病」と診断され、会社を辞めさせて家で休養させることに。

自他共に認める「なままけ姫」だったテンテンさんは、これまで“強い夫”に頼って当たり前のように生きてきたが、
突然、逆に生計を立てなければならない立場になって混乱する。

「病気で辛いところ悪いんだけど、いつか本にするから、今の状況を全部日記に書いといてくれる?」と頼む。
→それが1年後『ツレがうつになりまして。』以降のヒット作につながる。



発情期のイグさんは、一日中ツレを熱い視線で見つめて、結果的にツレの心の支えとなっていた。



ツレのうつから1年後、友人が飼っている生後数ヶ月のメスのイグアナを預かる。名前はしーちゃん!
イグさんはその温室の前を行ったり来たりしてアピールするも、数日後には帰宅していなくなってしまったため、初めての失恋

2005年の夏、ツレは急にハイになって、毎日3時間以上散歩するようになるが、
2週間後に大雨が降ってウォーキングに行けなくて、その日を境にまた寝たきりになる(フシギだね、ヒトの脳って・・・

ツレは病気になって自分の弱さを知った。
「マイナス思考クイーン」だった私はツレの病気のおかげで前向きになれた。

2006年3月、イグのお嫁さん「まぐちゃん」が家にやってきたところで本作は終わっている。




【ツレからもひとこと、からの抜粋メモ】
グリーンイグアナは、故郷の中南米では食用なんだそうな
イグアナは警戒・威嚇するためにしっぽで床を叩く。1.5mのイグに叩かれるとミミズ腫れになる。
さらにエキサイトさせるとしっぽを「自切」してしまうこともあるらしい/滝汗

うつ病になった原因は実は今でもハッキリ分からないという。貧血治療の副作用も一因かも?
仕事のストレスに対する最初の防衛として「軽躁状態」になっていたのが、
ムリなライブ通い、イベント等への参加という行動。「自分は強い人間」という幻想があった。


「うつ病は意欲の病」
病気は本来治りたいと願うことにより治癒するが、うつは治りたいと願う意欲そのものが冒される。
未来には「いいことなんか何もない」ように思え、治ったところで困難の連続で、
やりたいことなど何もない。期待もない。楽しみもない。
と同時に過去も病む。
悪かった出来事ばかりが強調され、欺瞞に満ちた出来事として歪めて解釈される。

でもそんな枯れ木も、やがて芽吹く。
前の葉ほど立派じゃないけど、若々しくつやつやした小さな葉が出てくるのだ


【まとめ うちの人生年表、からの抜粋メモ】
2004年にはリクガメ「松井君」も飼う

【おわりに(ツレ)、からの抜粋メモ】
為無為、事無事、味無味。(無為を為し、無事を事とし、無味を味わうの意)『老子』63章

自然が持つシステム「道(タオ)」の持つ無限性と矛盾性について書かれているらしい。
「無作為を信条とし、何事も積極的にせず、蛋白な味を楽しむ気持で生活しよう」という生活のモットー。
悪く言えば、目的など持たず日々流されて生きたまえ、明日できることは今日やらず、
享楽すら求めず、ぼーっとしていたまえ、ということだ。(深いっ


【山田昌弘さんによる解説、からの抜粋メモ】
『家族ペット』という山田さんの著書にはテンテンさんが解説を書いたという縁。

本書は時代状況を映す鏡のような作品となっている。
アーティスト志望のフリーター、リストラ、正社員の長時間労働、そして、うつ。
現代の若者が直面している仕事状況がリアルに描き出されている。

私は、1990年代後半から始まる社会変化、特に、若者の生活の変化に注目してきた。
それ以前は、男性なら正社員となって終身雇用で収入が保証され、
女性は正社員男性と結婚し主婦となって一生安定した生活が送ることができた。

しかし、1990年代後半から経済状況が大きく変化し、非正規雇用が増え、リストラも始まった。
低収入で不安定なフリーターが増え、同時に、正社員として就職している若者も、
リストラの不安に怯えながら、健康を害するほどの長時間労働に曝される人が増える。

私は、そのような中で、若者から希望が失われていく状況を「希望格差社会」と名付けた。
「努力がいつか報われる」から「努力しても無駄である」と感じる時、希望とは逆の絶望が現れる。
それが繰り返されると「うつ」の症状が現れると私は考えている。

山田さんは、フリーランスの生活状況を安定させる社会保障制度の変革、長時間労働の禁止、
特に、若者の雇用状況の改善を発言しているという。
「Chabo!」というプロジェクト(印税の一部を世界の被災民の自立支援に使う)
を行うNPO「ジェン」という団体の理事・木山啓子さんに、
『誰かのためなら人はがんばれる』という本がある。

他の誰かの幸せのためにという気持が生まれた時、初めて、人は自分の能力を100%引き出せるものだ。


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