■「星の王子さま」@100分 de 名著 for ティーンズ 第1回
【司会】伊集院光、島津有理子
【ゲスト講師】斎藤孝(明治大学教授)
【特別ゲスト】鈴木福、ヤマザキマリ
【朗読】谷原章介、小芝風花
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予録のまとめ見シリーズ
この有名な児童文学を初めて知ったのは、短大で第二外国語にフランス語を選んで
「読めなくても、辞書を引きながら原書で読んでみて」と課題を出された時じゃなかったか?
もちろん読めなかったが、和訳本を読んで、ストーリーと世界観、哲学はがっつり私好みだった
「象を飲み込むうわばみ」が、後に大人になれず、母親の胎内から出られない子ども
「インナーチャイルド」にもつながると心理学で知ったり
作者が描いたイラストも可愛いから、昔「星の王子さまミュージアム」にもNさんと行って
グッズを買ってきたりした
サン・テグジュペリミュージアム(2000.6.17)
【内容抜粋メモ】
『星の王子様』は、300以上の国や地域で翻訳されたロングセラー
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マリさんは母から本書を薦められて、こんなに読んだ本はないというほど繰り返し読んだ
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斎藤:
一見、フワっとした子どもの本のように思いますが
すごい深い言葉が入っていると思います
日本の小学生は、結構本を読むんだけれども、中学校になると急にあんまり読まなくなる傾向がある
児童書のものから離れるんですね いきなり大人の本になってしまう
その架け橋として、この「星の王子さま」はいいんじゃないかと思います
作者の紹介 サン・テグジュペリ
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島津:作者の経歴を見ると、ちょっと星の王子さまと重なるところがありますね
斎藤:
語り手の飛行士が、作品のもう一人の主人公
幼い頃に絵描きになりたかったけれども、周囲の大人に理解してもらえず
結局なれなくて挫折した そういう思いを抱いている飛行士
それが王子さまと出会うという話です
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島津:その飛行士が書いた絵がこちら 福くん、何に見えますか?
福:本にも出てきますが、帽子とか山とかに見える
島津:実は象を飲み込んだうわばみ(大蛇)
マリ:
読者が「想像力」という努力を駆使しないと見えてこないもの
大人になるということは「合理性」を求めすぎちゃって、
その辺は二の次三の次になるという象徴的な絵じゃないですか
斎藤:
子どもだったら、これを見れば面白いと思うと思うんですよ
でも大人だと「だからなんだ」みたいな
大人にとっては「想像力」って、ちょっと無駄なもののように思えちゃう
本当は、これからの社会では「アイデア」って大事ですよね
マリ:
想像力が失われた社会ほど怖いものはない
これを見抜ける能力を失ってはいけないよっていうメッセージですよね
美しいバラの花
王子さまは、たった一人で小さな星に住んでいました
そこにある日、小さな種が芽をふき、それは美しいバラの花でした
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王子さまはバラの花に惹かれ、世話を始めます
しかし、薔薇は自分の美しさを鼻にかけて王子さまを苦しめました
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島津:福くんが花に言われたようなことを言われたらどう思いますか?
福:
なんか変だな 嫌だなと思うだろうけど
でも、薔薇のことが好きだからやってあげるかもしれない
マリ:
急に大人っぽいやりとりになる
薔薇を何かに例えているのかなとか 奥さんかなとか 色々思うわけです
自分が一緒に暮らすもの、愛しているものが、いくら愛しても、自分の思い通りにはならない
理想通りの存在ではないっていうことを、ここですごく具体的に説明してくれていますよね
だけども愛するっていう いろんな不都合があっても 想いはなえない
王子さまは旅に出ることを決意する
しかし、別れのときにバラの花はこんなことを言います
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斎藤:
敢えて意地悪な態度をとることで自分を守る
バラの花にはそういう性質がありますね
それがその当時の王子さまには理解できなかった
もしかしてこの作品は、経験を積む良さも伝えているのかもしれない
マリ:
自分に都合が悪いものを「排除」すればいいと思っている大人は
今の世の中にもたくさんいるじゃないですか
でもそうじゃなくて「受け入れよう」と思う
寛容に彼女の欠点の部分も受け入れることで
分かることがあるかもしれないっていう懐の大きさと言うか
斎藤:この場面は福くんの恋愛に影響を与えますね
マリ:恋愛している?
福:してないです
故郷の星から旅立った王子さまは6つの星を巡る
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「王さまの星」
自分以外の人は、みんな家来だと思っている王さまがいた
「うぬぼれ男の星」
この男は「自分に感心しろ」と王子さまに迫る
「呑み助の星」などなど
いろんな大人たちに出会って、王子さまは「大人って変だな」と思う
斎藤:
自分の中の弱さがあって、その弱さに鎧をつけて隠していく
偉くなるといろんな「肩書き」がつくでしょう それによっても守られている
マリ:
成長するにつれて、どんどん色々な「レイヤー」を身につける
「世間体が認める自由」という形にしていかないといけない
例えば、私は子どもの時から絵がすごく好きで、白いところがあればすぐ描いちゃう
成長すると、学校で「絵なんかじゃ食べていけませんよ」
「絵描きでどうやって生きていくんですか」
と言われるわけじゃないですか
私は、そこで「分かった じゃあ大人が言うように絵はやめて、
普通に会社とかで勤められる自分にしていかなきゃいけないのかな」と思っている時に
うちの母親がいきなり「ヨーロッパに一人で行って来い」と言い出して
1ヶ月くらいかけて旅して、最終的にルーブル美術館に行ったんですけど
アナ:お母さんも「画家の夢を諦めて欲しくない」という思いがあったんですか?
マリ:
諦めてほしくないというよりは、行ってくるべきだなと
情報とか狭い選択に囚われて、本当に分かりもしないことを押し付けてしまうのはちょっとどうかなと
あとはこの子の判断で決める 福くんと同じ14歳の時です
王子さまが最後にたどり着いたのは、7番目の星「地球」
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王子さま:
あの花の言うことなんか取り上げずに
することで品定めしなけりゃいけなかったんだ
僕はあの花のおかげで、いい匂いに包まれていた 明るい光の中にいた
だけど、僕は、あんまり小さかったから、
あの花を愛するってことが分からなかったんだ
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キツネが1匹現れる
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王子さまが「一緒に遊ばないか」と誘うとキツネはこう言います
キツネ:俺、あんたとは遊べないよ 飼い慣らされちゃいないんだから
王子さま:飼いならすって、それ何のことだい?
キツネ:
仲良くなるってことさ
あんたの目から見ると、俺は10万ものキツネと同じなんだ
だけど、あんたが俺を飼いならすと、俺たちはもうお互いに離れちゃいられなくなるよ
あんたは、俺にとって、この世でたった一人の人になるし
俺は、あんたにとって、かけがえのないものになるんだよ
なんなら俺と仲良くしておくれよ
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王子さま:
僕、とても仲良くなりたいんだよ
だけど、僕、あんまり暇がないんだ
友だちも見つけなきゃならないし
それに、知らなければいけないことが、たくさんあるんでね
キツネは仲良くするためにこんな提案をする
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福:拘束されてるみたいで嫌な感じもしますよね お仕事みたい
斎藤:キツネも寂しがり屋 約束をすることで特別な存在になりたい
マリ:
一緒にいることで守ってあげる 一緒にいるから孤独を与えない
そういう友好関係ってどうなんだろうと思うわけですよね
人間がこの世で一番恐れているのは「孤独」だと思うんだけど
自分を守ってくれるものを敢えて捨てていく あえて拒絶していく
島津:キツネとは友好的な関係になれると思うんですけど、敢えて離れていくんですよね
斎藤:もっと広い世界で、いろんな見聞を広めてみたい
マリ:
頼りがいのある自分を作りたい
例えば私が子どもの時から旅を繰り返しているのは
誰かを頼ったり、依存するんじゃなくて、自分の中で、自分を俯瞰視してくれる
頼りがいのある自分が欲しいと思っているから
だから王子さまのこういう行動を本で読むと、すごくそこに自分の感覚を当てはめてしまう
キツネと王子さまの別れ
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「肝心なことは目には見えない」 王子さまは、その言葉を大切に受け止めた
島津:有名なセリフが出てきました
「心で見なくちゃ物事はよく見えないってことさ 肝心なことは目に見えないんだよ」
マリ:
この本の中の一番のマジックというか、最大のテーマだと思うんです
「想像力」を失っていくことで、何が発生していくかというと
例えば今の社会では、「宗教戦争」「紛争」はまだ終わってないですよね
そんなことは何世紀も前から始まっていることなのに
あれっていうのはやっぱり、自分たちが信じていることを、他の人たちが信じないのは「許せない」とか
「想像力の欠落」からくると思う
何かがちょっと世間体とズレているのは「ダメだ」
と言われてしまう
想像力が補ってくれると、人には豊かな暮らしが保証されるはず
斎藤:
想像力があると楽しくなることもありますよね
目の前にキツネはいない でも金色の穂を見ると
それだけで王子さまの金色の髪を思い出して幸せになる
想像力があると「一人幸せ」ができる
想像力は豊かな気持ちを提供してくれる
それによって生き方も変わってくると思う
王子さまは、飛行士とともに砂漠に井戸を探しに行く
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王子さまは、飛行士にこんなふうに言います
「砂漠が美しいのは、どこかに井戸を隠しているからだよ」
マリ:
サン・テグジュペリがこの物語を書いた時っていうのは、
非常に世界の情勢が悪い状態の時で、戦争の真っ只中
それを砂漠と置き換えていたと思うんですね
それとは別に、先ほど出てきた色々なレイヤーをまとってしまった
不思議な大人たちが作り上げた社会をもうひとつの砂漠と捉えて
でも、その大人たちの中には、実はものすごく美しい泉のようなものがある
どこかで作者の望みや希望っていうものを垣間見せるような言葉じゃないかなと
彼はどこかで地球の美しさを信じている
人間はこうじゃないっていう気持ちを持っているのかなと感じます
最後に王子さまは故郷の星に帰る
そのためには重い体を捨てることが必要だった
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“王子さまは、まだ何かもじもじしていましたが、やがて立ち上がりました
王子さまの足首のそばには、黄色い光がキラッと光っただけでした
王子さまは、ちょっとの間、身動きもしないでいました
そして、一本の木が倒れでもするように静かに倒れました”
翌朝、王子さまの姿は影も形もなくなり、飛行士は故郷へ帰ったのだと納得します
福:
この後に帰って、もう1回薔薇と会話してというお話だったら、
もっとハッピーエンドでいいなって思うけど
斎藤:
サラっとしたお話なんだけど、いろんな見方もあるし
ずっとそのモヤモヤ感が余韻を残す
マリ:完全に想像力に投げてますよね
斎藤:この後は読者が想像するように
マリ:
星の王子さまの話をすると、読んだ経験者がみんな語りたがる
そして、みんなが腑に落ちない
世界中の人たちが「あれはどうなったんだ一体」って
いろんな大事な書籍があると思うけれども
私はこの「星の王子さま」が、どこに引っ越しても本棚にある
そう思うと、なにかぼんやりしたエンディングの中で
自分の探している答えっていうのは、その都度見えてくるのかなとか
本当にこれは、おばあさんになっても、死ぬまで
ふとした瞬間に、その場で見えてこなかったことが、見えてくるかもしれないと思う
***
最初に本書を読んだ時、私は王子さまが死んだと思っただろうか? 記憶がない
ファンタジーとして、浅く捉えていたかもしれない
バラの花を愛していることに気づいて、死すら選ぶってことも
改めてこうして振り返ると、その純粋さに泣きそうになる
「死んで可哀相」ではけしてなく、有機体の体を脱ぎ捨てれば、またバラに会える
飛行士にも「星を見れば、自分を思い出せる」と言う
これはとてもスピリチュアルな物語なんだ
1つだけ疑問に思うのは、ほかの星へは自由に行き来出来るのに
故郷に戻る時だけは、なぜ死ななきゃ帰れないのか、謎
今回は夏休みスペシャルとして、もっと子どもたちに本を読んで欲しいという企画だったけれども
私の大好きな『フラニーとゾーイ』なども、ぜひぜひ、手にとって世界に浸って欲しいなあ
感想文をネットから丸写しではなく
読んだ体験は、大人になっても自分を支えてくれるに違いない
都内には、駅からちょっと歩けばすぐに図書館がある
地方では考えられないほど恵まれているのに、なかなかそれに気づいていない人も多いし
最初から難しい本ではなく、児童書、「ヤングアダルト図書」
(児童書から一般書への橋渡し的意味合いで、中学・高校生世代へ提供する本)のコーナーは、
子どもだけでなく、大人のココロも癒して、貴重な学びがある
次回の予告は『ソロモンの指環』
読んだことがないけれども、なんだかいろんな動物に囲まれて、ヘヴン・・・
番組の予録はしなかったが、内容が気になる
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【ブログ内関連記事】
『サン=テグジュペリ 大空をかけぬけた「星の王子さま」の作家』(小学館)
『フラニーとゾーイ』
【司会】伊集院光、島津有理子
【ゲスト講師】斎藤孝(明治大学教授)
【特別ゲスト】鈴木福、ヤマザキマリ
【朗読】谷原章介、小芝風花
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この有名な児童文学を初めて知ったのは、短大で第二外国語にフランス語を選んで
「読めなくても、辞書を引きながら原書で読んでみて」と課題を出された時じゃなかったか?
もちろん読めなかったが、和訳本を読んで、ストーリーと世界観、哲学はがっつり私好みだった
「象を飲み込むうわばみ」が、後に大人になれず、母親の胎内から出られない子ども
「インナーチャイルド」にもつながると心理学で知ったり
作者が描いたイラストも可愛いから、昔「星の王子さまミュージアム」にもNさんと行って
グッズを買ってきたりした
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【内容抜粋メモ】
『星の王子様』は、300以上の国や地域で翻訳されたロングセラー
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マリさんは母から本書を薦められて、こんなに読んだ本はないというほど繰り返し読んだ
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斎藤:
一見、フワっとした子どもの本のように思いますが
すごい深い言葉が入っていると思います
日本の小学生は、結構本を読むんだけれども、中学校になると急にあんまり読まなくなる傾向がある
児童書のものから離れるんですね いきなり大人の本になってしまう
その架け橋として、この「星の王子さま」はいいんじゃないかと思います
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島津:作者の経歴を見ると、ちょっと星の王子さまと重なるところがありますね
斎藤:
語り手の飛行士が、作品のもう一人の主人公
幼い頃に絵描きになりたかったけれども、周囲の大人に理解してもらえず
結局なれなくて挫折した そういう思いを抱いている飛行士
それが王子さまと出会うという話です
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島津:その飛行士が書いた絵がこちら 福くん、何に見えますか?
福:本にも出てきますが、帽子とか山とかに見える
島津:実は象を飲み込んだうわばみ(大蛇)
マリ:
読者が「想像力」という努力を駆使しないと見えてこないもの
大人になるということは「合理性」を求めすぎちゃって、
その辺は二の次三の次になるという象徴的な絵じゃないですか
斎藤:
子どもだったら、これを見れば面白いと思うと思うんですよ
でも大人だと「だからなんだ」みたいな
大人にとっては「想像力」って、ちょっと無駄なもののように思えちゃう
本当は、これからの社会では「アイデア」って大事ですよね
マリ:
想像力が失われた社会ほど怖いものはない
これを見抜ける能力を失ってはいけないよっていうメッセージですよね
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王子さまは、たった一人で小さな星に住んでいました
そこにある日、小さな種が芽をふき、それは美しいバラの花でした
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王子さまはバラの花に惹かれ、世話を始めます
しかし、薔薇は自分の美しさを鼻にかけて王子さまを苦しめました
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島津:福くんが花に言われたようなことを言われたらどう思いますか?
福:
なんか変だな 嫌だなと思うだろうけど
でも、薔薇のことが好きだからやってあげるかもしれない
マリ:
急に大人っぽいやりとりになる
薔薇を何かに例えているのかなとか 奥さんかなとか 色々思うわけです
自分が一緒に暮らすもの、愛しているものが、いくら愛しても、自分の思い通りにはならない
理想通りの存在ではないっていうことを、ここですごく具体的に説明してくれていますよね
だけども愛するっていう いろんな不都合があっても 想いはなえない
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しかし、別れのときにバラの花はこんなことを言います
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斎藤:
敢えて意地悪な態度をとることで自分を守る
バラの花にはそういう性質がありますね
それがその当時の王子さまには理解できなかった
もしかしてこの作品は、経験を積む良さも伝えているのかもしれない
マリ:
自分に都合が悪いものを「排除」すればいいと思っている大人は
今の世の中にもたくさんいるじゃないですか
でもそうじゃなくて「受け入れよう」と思う
寛容に彼女の欠点の部分も受け入れることで
分かることがあるかもしれないっていう懐の大きさと言うか
斎藤:この場面は福くんの恋愛に影響を与えますね
マリ:恋愛している?
福:してないです
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「王さまの星」
自分以外の人は、みんな家来だと思っている王さまがいた
「うぬぼれ男の星」
この男は「自分に感心しろ」と王子さまに迫る
「呑み助の星」などなど
いろんな大人たちに出会って、王子さまは「大人って変だな」と思う
斎藤:
自分の中の弱さがあって、その弱さに鎧をつけて隠していく
偉くなるといろんな「肩書き」がつくでしょう それによっても守られている
マリ:
成長するにつれて、どんどん色々な「レイヤー」を身につける
「世間体が認める自由」という形にしていかないといけない
例えば、私は子どもの時から絵がすごく好きで、白いところがあればすぐ描いちゃう
成長すると、学校で「絵なんかじゃ食べていけませんよ」
「絵描きでどうやって生きていくんですか」
と言われるわけじゃないですか
私は、そこで「分かった じゃあ大人が言うように絵はやめて、
普通に会社とかで勤められる自分にしていかなきゃいけないのかな」と思っている時に
うちの母親がいきなり「ヨーロッパに一人で行って来い」と言い出して
1ヶ月くらいかけて旅して、最終的にルーブル美術館に行ったんですけど
アナ:お母さんも「画家の夢を諦めて欲しくない」という思いがあったんですか?
マリ:
諦めてほしくないというよりは、行ってくるべきだなと
情報とか狭い選択に囚われて、本当に分かりもしないことを押し付けてしまうのはちょっとどうかなと
あとはこの子の判断で決める 福くんと同じ14歳の時です
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王子さま:
あの花の言うことなんか取り上げずに
することで品定めしなけりゃいけなかったんだ
僕はあの花のおかげで、いい匂いに包まれていた 明るい光の中にいた
だけど、僕は、あんまり小さかったから、
あの花を愛するってことが分からなかったんだ
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王子さまが「一緒に遊ばないか」と誘うとキツネはこう言います
キツネ:俺、あんたとは遊べないよ 飼い慣らされちゃいないんだから
王子さま:飼いならすって、それ何のことだい?
キツネ:
仲良くなるってことさ
あんたの目から見ると、俺は10万ものキツネと同じなんだ
だけど、あんたが俺を飼いならすと、俺たちはもうお互いに離れちゃいられなくなるよ
あんたは、俺にとって、この世でたった一人の人になるし
俺は、あんたにとって、かけがえのないものになるんだよ
なんなら俺と仲良くしておくれよ
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王子さま:
僕、とても仲良くなりたいんだよ
だけど、僕、あんまり暇がないんだ
友だちも見つけなきゃならないし
それに、知らなければいけないことが、たくさんあるんでね
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福:拘束されてるみたいで嫌な感じもしますよね お仕事みたい
斎藤:キツネも寂しがり屋 約束をすることで特別な存在になりたい
マリ:
一緒にいることで守ってあげる 一緒にいるから孤独を与えない
そういう友好関係ってどうなんだろうと思うわけですよね
人間がこの世で一番恐れているのは「孤独」だと思うんだけど
自分を守ってくれるものを敢えて捨てていく あえて拒絶していく
島津:キツネとは友好的な関係になれると思うんですけど、敢えて離れていくんですよね
斎藤:もっと広い世界で、いろんな見聞を広めてみたい
マリ:
頼りがいのある自分を作りたい
例えば私が子どもの時から旅を繰り返しているのは
誰かを頼ったり、依存するんじゃなくて、自分の中で、自分を俯瞰視してくれる
頼りがいのある自分が欲しいと思っているから
だから王子さまのこういう行動を本で読むと、すごくそこに自分の感覚を当てはめてしまう
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「肝心なことは目には見えない」 王子さまは、その言葉を大切に受け止めた
島津:有名なセリフが出てきました
「心で見なくちゃ物事はよく見えないってことさ 肝心なことは目に見えないんだよ」
マリ:
この本の中の一番のマジックというか、最大のテーマだと思うんです
「想像力」を失っていくことで、何が発生していくかというと
例えば今の社会では、「宗教戦争」「紛争」はまだ終わってないですよね
そんなことは何世紀も前から始まっていることなのに
あれっていうのはやっぱり、自分たちが信じていることを、他の人たちが信じないのは「許せない」とか
「想像力の欠落」からくると思う
何かがちょっと世間体とズレているのは「ダメだ」
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想像力が補ってくれると、人には豊かな暮らしが保証されるはず
斎藤:
想像力があると楽しくなることもありますよね
目の前にキツネはいない でも金色の穂を見ると
それだけで王子さまの金色の髪を思い出して幸せになる
想像力があると「一人幸せ」ができる
想像力は豊かな気持ちを提供してくれる
それによって生き方も変わってくると思う
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王子さまは、飛行士にこんなふうに言います
「砂漠が美しいのは、どこかに井戸を隠しているからだよ」
マリ:
サン・テグジュペリがこの物語を書いた時っていうのは、
非常に世界の情勢が悪い状態の時で、戦争の真っ只中
それを砂漠と置き換えていたと思うんですね
それとは別に、先ほど出てきた色々なレイヤーをまとってしまった
不思議な大人たちが作り上げた社会をもうひとつの砂漠と捉えて
でも、その大人たちの中には、実はものすごく美しい泉のようなものがある
どこかで作者の望みや希望っていうものを垣間見せるような言葉じゃないかなと
彼はどこかで地球の美しさを信じている
人間はこうじゃないっていう気持ちを持っているのかなと感じます
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そのためには重い体を捨てることが必要だった
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“王子さまは、まだ何かもじもじしていましたが、やがて立ち上がりました
王子さまの足首のそばには、黄色い光がキラッと光っただけでした
王子さまは、ちょっとの間、身動きもしないでいました
そして、一本の木が倒れでもするように静かに倒れました”
翌朝、王子さまの姿は影も形もなくなり、飛行士は故郷へ帰ったのだと納得します
福:
この後に帰って、もう1回薔薇と会話してというお話だったら、
もっとハッピーエンドでいいなって思うけど
斎藤:
サラっとしたお話なんだけど、いろんな見方もあるし
ずっとそのモヤモヤ感が余韻を残す
マリ:完全に想像力に投げてますよね
斎藤:この後は読者が想像するように
マリ:
星の王子さまの話をすると、読んだ経験者がみんな語りたがる
そして、みんなが腑に落ちない
世界中の人たちが「あれはどうなったんだ一体」って
いろんな大事な書籍があると思うけれども
私はこの「星の王子さま」が、どこに引っ越しても本棚にある
そう思うと、なにかぼんやりしたエンディングの中で
自分の探している答えっていうのは、その都度見えてくるのかなとか
本当にこれは、おばあさんになっても、死ぬまで
ふとした瞬間に、その場で見えてこなかったことが、見えてくるかもしれないと思う
***
最初に本書を読んだ時、私は王子さまが死んだと思っただろうか? 記憶がない
ファンタジーとして、浅く捉えていたかもしれない
バラの花を愛していることに気づいて、死すら選ぶってことも
改めてこうして振り返ると、その純粋さに泣きそうになる
「死んで可哀相」ではけしてなく、有機体の体を脱ぎ捨てれば、またバラに会える
飛行士にも「星を見れば、自分を思い出せる」と言う
これはとてもスピリチュアルな物語なんだ
1つだけ疑問に思うのは、ほかの星へは自由に行き来出来るのに
故郷に戻る時だけは、なぜ死ななきゃ帰れないのか、謎
今回は夏休みスペシャルとして、もっと子どもたちに本を読んで欲しいという企画だったけれども
私の大好きな『フラニーとゾーイ』なども、ぜひぜひ、手にとって世界に浸って欲しいなあ
感想文をネットから丸写しではなく
読んだ体験は、大人になっても自分を支えてくれるに違いない
都内には、駅からちょっと歩けばすぐに図書館がある
地方では考えられないほど恵まれているのに、なかなかそれに気づいていない人も多いし
最初から難しい本ではなく、児童書、「ヤングアダルト図書」
(児童書から一般書への橋渡し的意味合いで、中学・高校生世代へ提供する本)のコーナーは、
子どもだけでなく、大人のココロも癒して、貴重な学びがある
次回の予告は『ソロモンの指環』
読んだことがないけれども、なんだかいろんな動物に囲まれて、ヘヴン・・・
番組の予録はしなかったが、内容が気になる
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