1967年初版 1983年 第14刷 高橋健二/訳
※「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
ヘッセは『車輪の下』が好きで、それ以上追わなかった
長生きした人なんだな
自然描写が細かくて、本題の恋愛話に届くまで長い気がした
虫の鳴く声を聞き分ける耳は日本人特有って聞くけれども
セミ、秋の虫、蚊の鳴く声などの描写も多かった
「大理石材工場」
この時代の恋愛もので、女性があっけなく死んじゃうのがフシギ
絶望して自死したり、病気やお産で亡くなったり
「秋の徒歩旅行」
10年も経った初恋の人を訪ねて、歩いて帰郷するって、女性はしないよな
結婚して子どももいるのに、一体何を期待していたのか
あの頃の美しさがもうないって批判されるのもツライ/汗
『車輪の下』もそうだけど、とても勉強した少年が
社会に出る前に消耗して燃え尽きてしまう感じが今作にも表れている
【内容抜粋メモ】
■青春は美し
両親が心配するほど内気だった主人公が、紳士となって帰郷
家もペットのオウム“ポリー”もほぼ昔のまま
昔、恋をした妹ロッテの友だちヘレーネも美しいまま
再会しても、上品でよそよそしい態度は変わらない
マテーウス叔父夫婦を訪ねると、正賓として迎えられ
前途有望だと認められる
両親のもとでの家庭生活を一時、奴隷暮らしのように感じて
夜、家を忍び出て、居酒屋に飲みに行ったことを思い出す
弟フリッツは火薬で花火をつくって爆発させる遊びに夢中
ロッテの2つ上の友だちで、女教師アンナは特別美しくはないが
異性でざっくばらんに話せる相手となる
ヘレーネが婚約するという噂を聞きショックを受ける
母は信仰を忘れないようにと注意する
旅立つ日、アンナに想いを打ち明ける
アンナ:
私もある人を愛しているが、自分のものにすることができずにいる
ですから、私たちはよいお友だちでいましょうね
■ラテン語学校生
16歳のカールは下宿先の賄いが十分でなく、いつもお腹を空かしているため
台所から食べ物を失敬しているところを女中バベットに見られる
バベットはカールに同情し、♪こがねの夕日 の口笛を吹いたら
なにかしら食べるものを持っていくと約束する
夕方、女中たちが集まって喋るグループに交わるカール
そこには学生の身分では知り得ない様々な人間模様がある
カールが将来ドクトルになると言うと尊敬を集める
悪い友だちとイタズラを繰り返し、金髪の美しい女中に恋する
食欲が落ちたカールを心配して、女中リースの結婚パーティーに誘うバベット
そこに恋する女中がいた
カールはバイオリンを弾いて、和やかな夕べを過ごす
彼女もグループに加わり、名前をティーネと知る
カールの真剣な恋を知り、傷つけずに、身分違いの想いを消す方法はないかと迷うティーネ
ティーネ:
私の恋人になるなら、まず一本立ちしなきゃダメよ
よいお友だちになって、時を待ちましょう
ティーネは大工職人に出会って婚約する
カールについてバベットに相談すると激怒される
バベットは2人を中庭で会わせ、バベットは説得する
カール:死んだほうがマシだ!
ティーネが町を出て、しばらくすると、カールは立ち直る
その後、ティーネと再会した時、夫が建物から落ちて重体だと打ち明けられる
それでも看病して、夫は回復する
カールは見舞いに来て、ティーネに別れを告げる
■旋風
町の工場で見習い奉公をして、のみで手に穴を開ける事故に遭う
かつてない蒸し暑さで、雷雨が次々起こった(最近の天気とかぶるな
友人から紡績工場のベルタが自分を好きだと聞くが
苦労せず、女性から好意を寄せられるのは本意でなく無視する
釣りをしていると、悪魔のような嵐が襲い、雹が降る
ベルタは走ってきて、いきなりキスする
ベルタ:
私、世界が滅ぶかと思ったの
あなたは私を愛してくれないの?
畑で雹に打たれて死人も出て、工場もガラスが割れて被害が出る
私は幼年時代との間に裂け目ができたことを感じる
■大理石材工場
私は24歳で、試験に合格し、2か月の休暇に入る
近所の大理石材工場に通い、ランパルト氏の娘ヘレーネに恋する
彼女の性質は父の圧力で抑えられている
リッパハ屋敷の支配人グスタフ・ベッカーと親しくなり
ランパルト氏について聞くと
ベッカー:
見かけによらずズルイ奴さ
君はランパルトの娘に惚れ込んでいるな
ランパルト親子はまったく君には向かない
何度も会ううち、ヘレーネは自分を愛していると確信するも
次に会うとまったく他人行儀に戻っている繰り返し
ヘレーネ:私たち(女性)はそんなに自由じゃありませんの
とうとう休暇はあと1週間になり、ベッカーに別れの挨拶に行く
もう会うまいと思いつつ、足が向き、ヘレーネに会ってキスをする
ヘレーネ:さようなら もう二度と来ないで!
将来、結婚するつもりで手紙を出すが
ヘレーネには父が決めた婚約者がいて、父を裏切ることはできないと言う
ヘレーネ:
私は父の手で売られたの
父も私同様、かたく縛りつけられている
旅立つ前にヘレーネの父を説得しようと家に行くと
人々が集まり、ヘレーネは自死した後だった
ベッカー:ボクはヘレーネと婚約していたんだ
私はベッカーにヘレーネを愛していたか問いたかったが声にならない
■少年時代から
夜、両親の寝室から声が聞こえる
ブロージーは春までもたないから、見舞いに行かせたほうがいいかどうかという話
私より1つ上のキレイな少年と一時期遊んでいたのに
彼が病気になって会わなくなり、すっかり忘れていたことに気づく
母に言われて見舞いに行くと、ブロージーはベッドに寝ている
肩に大きな傷あとがあるのを見つけて、なぜか泣いてしまう
母は息子にヒヤシンスを与え、毎日忘れずに水をやり
花が咲いたら、ブロージーにあげたらいいとすすめる
私は花をブロージーだと思い、花を咲かせてブロージーに渡す
ブロージーは亡くなり、彼がいつか言ってたみたいに天使になったのだと考えた
■秋の徒歩旅行
恋人を塔から救う妄想をしながら、初恋の相手ユーリエが住む町イルゲンベルクを目指して歩く
ユーリエはヘルシェルという裕福な商人と結婚し、3人の子どもを産んだ
宿屋を見つけるが、1部屋しかなく、もう客がいたため
暖炉で寝かせてもらう
“自分は結局、自分の道をこのように孤独にしてしまったのだ
友人、親類、知人、愛人らは私を満たしてくれなかった
おそらく、人間は投げられた球のように転がって行く軌道が決まっているのだ
運命を強制しているつもりでも、とっくに定められた線に従っているのだ
運命は私たちの内にあり、外ではない
したがって、人生の目に見える出来事は重要でなくなってくる
普通重大で、悲劇的と呼ばれることも、くだらなくなる”
私は商人の馬車に乗せてもらって、イルゲンベルクに着く
彼はヘルシェルでユーリエの夫だった
家を訪ねると、夕食をすすめられる
私:
あれは私たちの青春時代だった
私はそれをもう一度たずねて、まともに見たいと思ったのです
ユーリエを見つめると、あの頃の美しさはなくなり、いち夫人になっていた
明日、お茶に呼ばれると約束して、古いレンガが頭に落ちて殺してくれたらと思う
“このばかものめ!”
私は朝早く目が覚めて、旅を続けることにする
濃い霧が視界をさえぎっている
“物と物、人と人が、根本においてあくまで無縁であり
常に瞬間の間だけ交わるにすぎないと感じる”
ある詩が浮かび、口ずさむ
“不思議だ 霧の中を歩くというのは!
人生とは孤独であることだ
だれも他の人を知らない
みんなひとりぼっちだ”
■解説
本書は1916年版と1930年版とでずいぶん違う
「ラテン語学校生」
ヘッセが神学校に入る準備でラテン語学校で勉強したことにちなむ
ヘッセは神学校を逃げだし、16歳でタバコを吸い、夜遊びして退学
町工場で職工となったのは『車輪の下』に描かれている
年譜
1877年 ドイツ生まれ 父は牧師
15歳 神学校を逃げだす 精神療法をする牧師に預けられ、神経衰弱で自死をはかる
16歳 高等学校に入り、1年で退学
25歳 母が死去
46歳 マリア夫人の憂鬱性的精神障害が悪化し離婚
47歳 ルート・ヴェンガーと結婚
54歳 ニノン女史と結婚
59歳 弟ハンスが自死
85歳 死去
※「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
ヘッセは『車輪の下』が好きで、それ以上追わなかった
長生きした人なんだな
自然描写が細かくて、本題の恋愛話に届くまで長い気がした
虫の鳴く声を聞き分ける耳は日本人特有って聞くけれども
セミ、秋の虫、蚊の鳴く声などの描写も多かった
「大理石材工場」
この時代の恋愛もので、女性があっけなく死んじゃうのがフシギ
絶望して自死したり、病気やお産で亡くなったり
「秋の徒歩旅行」
10年も経った初恋の人を訪ねて、歩いて帰郷するって、女性はしないよな
結婚して子どももいるのに、一体何を期待していたのか
あの頃の美しさがもうないって批判されるのもツライ/汗
『車輪の下』もそうだけど、とても勉強した少年が
社会に出る前に消耗して燃え尽きてしまう感じが今作にも表れている
【内容抜粋メモ】
■青春は美し
両親が心配するほど内気だった主人公が、紳士となって帰郷
家もペットのオウム“ポリー”もほぼ昔のまま
昔、恋をした妹ロッテの友だちヘレーネも美しいまま
再会しても、上品でよそよそしい態度は変わらない
マテーウス叔父夫婦を訪ねると、正賓として迎えられ
前途有望だと認められる
両親のもとでの家庭生活を一時、奴隷暮らしのように感じて
夜、家を忍び出て、居酒屋に飲みに行ったことを思い出す
弟フリッツは火薬で花火をつくって爆発させる遊びに夢中
ロッテの2つ上の友だちで、女教師アンナは特別美しくはないが
異性でざっくばらんに話せる相手となる
ヘレーネが婚約するという噂を聞きショックを受ける
母は信仰を忘れないようにと注意する
旅立つ日、アンナに想いを打ち明ける
アンナ:
私もある人を愛しているが、自分のものにすることができずにいる
ですから、私たちはよいお友だちでいましょうね
■ラテン語学校生
16歳のカールは下宿先の賄いが十分でなく、いつもお腹を空かしているため
台所から食べ物を失敬しているところを女中バベットに見られる
バベットはカールに同情し、♪こがねの夕日 の口笛を吹いたら
なにかしら食べるものを持っていくと約束する
夕方、女中たちが集まって喋るグループに交わるカール
そこには学生の身分では知り得ない様々な人間模様がある
カールが将来ドクトルになると言うと尊敬を集める
悪い友だちとイタズラを繰り返し、金髪の美しい女中に恋する
食欲が落ちたカールを心配して、女中リースの結婚パーティーに誘うバベット
そこに恋する女中がいた
カールはバイオリンを弾いて、和やかな夕べを過ごす
彼女もグループに加わり、名前をティーネと知る
カールの真剣な恋を知り、傷つけずに、身分違いの想いを消す方法はないかと迷うティーネ
ティーネ:
私の恋人になるなら、まず一本立ちしなきゃダメよ
よいお友だちになって、時を待ちましょう
ティーネは大工職人に出会って婚約する
カールについてバベットに相談すると激怒される
バベットは2人を中庭で会わせ、バベットは説得する
カール:死んだほうがマシだ!
ティーネが町を出て、しばらくすると、カールは立ち直る
その後、ティーネと再会した時、夫が建物から落ちて重体だと打ち明けられる
それでも看病して、夫は回復する
カールは見舞いに来て、ティーネに別れを告げる
■旋風
町の工場で見習い奉公をして、のみで手に穴を開ける事故に遭う
かつてない蒸し暑さで、雷雨が次々起こった(最近の天気とかぶるな
友人から紡績工場のベルタが自分を好きだと聞くが
苦労せず、女性から好意を寄せられるのは本意でなく無視する
釣りをしていると、悪魔のような嵐が襲い、雹が降る
ベルタは走ってきて、いきなりキスする
ベルタ:
私、世界が滅ぶかと思ったの
あなたは私を愛してくれないの?
畑で雹に打たれて死人も出て、工場もガラスが割れて被害が出る
私は幼年時代との間に裂け目ができたことを感じる
■大理石材工場
私は24歳で、試験に合格し、2か月の休暇に入る
近所の大理石材工場に通い、ランパルト氏の娘ヘレーネに恋する
彼女の性質は父の圧力で抑えられている
リッパハ屋敷の支配人グスタフ・ベッカーと親しくなり
ランパルト氏について聞くと
ベッカー:
見かけによらずズルイ奴さ
君はランパルトの娘に惚れ込んでいるな
ランパルト親子はまったく君には向かない
何度も会ううち、ヘレーネは自分を愛していると確信するも
次に会うとまったく他人行儀に戻っている繰り返し
ヘレーネ:私たち(女性)はそんなに自由じゃありませんの
とうとう休暇はあと1週間になり、ベッカーに別れの挨拶に行く
もう会うまいと思いつつ、足が向き、ヘレーネに会ってキスをする
ヘレーネ:さようなら もう二度と来ないで!
将来、結婚するつもりで手紙を出すが
ヘレーネには父が決めた婚約者がいて、父を裏切ることはできないと言う
ヘレーネ:
私は父の手で売られたの
父も私同様、かたく縛りつけられている
旅立つ前にヘレーネの父を説得しようと家に行くと
人々が集まり、ヘレーネは自死した後だった
ベッカー:ボクはヘレーネと婚約していたんだ
私はベッカーにヘレーネを愛していたか問いたかったが声にならない
■少年時代から
夜、両親の寝室から声が聞こえる
ブロージーは春までもたないから、見舞いに行かせたほうがいいかどうかという話
私より1つ上のキレイな少年と一時期遊んでいたのに
彼が病気になって会わなくなり、すっかり忘れていたことに気づく
母に言われて見舞いに行くと、ブロージーはベッドに寝ている
肩に大きな傷あとがあるのを見つけて、なぜか泣いてしまう
母は息子にヒヤシンスを与え、毎日忘れずに水をやり
花が咲いたら、ブロージーにあげたらいいとすすめる
私は花をブロージーだと思い、花を咲かせてブロージーに渡す
ブロージーは亡くなり、彼がいつか言ってたみたいに天使になったのだと考えた
■秋の徒歩旅行
恋人を塔から救う妄想をしながら、初恋の相手ユーリエが住む町イルゲンベルクを目指して歩く
ユーリエはヘルシェルという裕福な商人と結婚し、3人の子どもを産んだ
宿屋を見つけるが、1部屋しかなく、もう客がいたため
暖炉で寝かせてもらう
“自分は結局、自分の道をこのように孤独にしてしまったのだ
友人、親類、知人、愛人らは私を満たしてくれなかった
おそらく、人間は投げられた球のように転がって行く軌道が決まっているのだ
運命を強制しているつもりでも、とっくに定められた線に従っているのだ
運命は私たちの内にあり、外ではない
したがって、人生の目に見える出来事は重要でなくなってくる
普通重大で、悲劇的と呼ばれることも、くだらなくなる”
私は商人の馬車に乗せてもらって、イルゲンベルクに着く
彼はヘルシェルでユーリエの夫だった
家を訪ねると、夕食をすすめられる
私:
あれは私たちの青春時代だった
私はそれをもう一度たずねて、まともに見たいと思ったのです
ユーリエを見つめると、あの頃の美しさはなくなり、いち夫人になっていた
明日、お茶に呼ばれると約束して、古いレンガが頭に落ちて殺してくれたらと思う
“このばかものめ!”
私は朝早く目が覚めて、旅を続けることにする
濃い霧が視界をさえぎっている
“物と物、人と人が、根本においてあくまで無縁であり
常に瞬間の間だけ交わるにすぎないと感じる”
ある詩が浮かび、口ずさむ
“不思議だ 霧の中を歩くというのは!
人生とは孤独であることだ
だれも他の人を知らない
みんなひとりぼっちだ”
■解説
本書は1916年版と1930年版とでずいぶん違う
「ラテン語学校生」
ヘッセが神学校に入る準備でラテン語学校で勉強したことにちなむ
ヘッセは神学校を逃げだし、16歳でタバコを吸い、夜遊びして退学
町工場で職工となったのは『車輪の下』に描かれている
年譜
1877年 ドイツ生まれ 父は牧師
15歳 神学校を逃げだす 精神療法をする牧師に預けられ、神経衰弱で自死をはかる
16歳 高等学校に入り、1年で退学
25歳 母が死去
46歳 マリア夫人の憂鬱性的精神障害が悪化し離婚
47歳 ルート・ヴェンガーと結婚
54歳 ニノン女史と結婚
59歳 弟ハンスが自死
85歳 死去