先日夜、BSで放映された映画「そうかもしれない」を観た方がいるだろうか。
子どもの居ない高齢者夫婦の老いをテーマにした映画だった。
専業主婦の妻が次第に認知症を深めて行き、買い物ができなくなる。料理中に火を出す。風呂に入りたがらなくなる。徘徊する。
そしてある時、失禁してしまう。その時、後始末をしてくれている夫に向かって、「どんなご縁で世話になっているのか?」と聞くのだ。
私小説を書く夫は、そんな妻との日常を書いて出版する。
妻の症状を医者に相談すると、アルツハイマー病と診断され、やむなく特別養護老人ホームへ妻を入所させるのだ。
やっと自分の事を考えられるようになった夫は、それまで我慢していた口の中の痛みを医者に見て貰う。即刻入院を指示され、放射線治療が始まる。がんだったのだ。
ある日、妻が施設の職員に付き添われて病院へ見舞いに来る。夫は無表情の妻の手を取り、優しくさする。看護婦や職員から「旦那さんですよ。旦那さんに会えて良かったね。」と何度も言われた妻は、「そうかも知れない」とつぶやくのだ。
それからしばらくして夫の死亡が妻の施設に伝えられる。
こんなストーリーだった。
私はこの映画で、夫婦の別れは片方が死ぬ時だけではなく、施設に入る時、退院が無理な状態の入院も別れなのだとしみじみ思った。そうであれば二人が元気でいられる時間こそ、もっと大切にするべきなのだろうと思ったのだ。
暗くなりがちなテーマだが、心に残る良い映画だった。