最後の世界遺産は、5日目の夕方、ソウル市内観光で行った「宗廟(チョンミョ)」だ。
ここは朝鮮国初代王の李成桂(イ・ソンケ)が今のソウルに都を置いた1395年に建てられ、李氏朝鮮の1~27代までの歴代国王とその妃の位牌49位が祭られていて、1995年に世界遺産に指定された。
かっての建物は文禄の役(壬辰倭乱)時侵攻した日本軍によって1592年に消失させられ、今の宗廟は1608年に再建されたものだという。
私は今まで3回、李氏朝鮮王朝の正殿だった「景福宮(キョンボックン)」(これも文禄の役で消失されたものを再建したものだ)を訪れていたが、「宗廟」に行くのは今回初めてだった。
お墓と言っても良いこの場所は、緑に囲まれた静かな場所にあり、正殿前の少し高く作られた広い前庭には石が敷き詰められていた。①
毎年5月の第1日曜には、王族の子孫達が全土から集まって、雅楽の演奏とおごそかな儀式を行なっているという。この祭礼楽も2001年にユネスコの無形遺産に登録された。
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ツアーの中の1人が、「今、王様の宮殿はどこにありますか。」とガイドに聞いていた。
「チャングムの誓い」「宮」など、王宮を舞台にした韓国ドラマの時代劇が色々作られて日本でも放映されているので、勘違いする人がいても不思議ではないと思った。
また、ガイドがそこで説明した中で、王妃「閔妃(ミンピ)」が殺害された事件には触れたが、日本が1910年に韓国を併合してから、1945年に日本が敗戦して、南北に分割占領されるようになるまでの35年間について、ほとんど具体的に話さなかった。
それは、私達日本人の感情に配慮しているのだろうが、私には少し遠慮し過ぎだと思うし、物足りなかった。
やはり、今の私達にも歴史的な事実を知る勇気が必要だし、隣国の人達が今どう思っているのかを知りたかった。
近代史を知らないまま韓国を訪れる日本人が多いとすれば、これからも思わぬトラブルを起こしかねないし、その時、「知らなかった」では済まされないと思ったのである。