ボルツァーノの市内見学後、バスで東方のドロミテ渓谷に向かった。
バスで45分程行った所に、針葉樹(樅ノ木)に囲まれた透明な湖「カレッツァ湖」(水面標高1530m)があった。
湖の岸に近い湖面は凍り付いていたが、背後に切り立ったラテマール山(標高2648~2846m)が聳え立ち、石灰岩質が溶けた水は神秘的なエメラルドグリーンに染まっていた。
湖畔を一周できる遊歩道は、雪のため途中で閉ざされていた。展望台があったが、余りに近過ぎて写真撮影をしても全景は撮れなかった。
3℃の冷たい空気の中でまるで絵のような光景は静まり返っていて、私はしばし時間を忘れて見とれていた。
ガイド氏の説明では、この地方の針葉樹は樅ノ木で、気温が低い高地でゆっくりと成長するために木質が固く、古くより造船、楽器製造に重宝されて来たのだという。バイオリンの名器・ストラディバリウスなどが作られて来たそうだ。
ところで過日、NHKTVで、2009年に世界自然遺産に指定されたこのドロミテ山塊の成り立ちを報じたBBCTVが制作した番組を見た。
ドロミテ山塊は6000万年前にアフリカ大陸とヨーロッパが衝突した時に隆起してできた地形だそうだ。
ここには3000m級の岩山が18あり、どれも主成分はドロマイト(石灰岩にマグネシウムが結合してできた苦灰石)である。石灰岩は浅い海の海底にあったサンゴ礁なのである。
その証拠に岩を割るとハート形の化石が沢山出てくるが、それは大昔海底に生息していた二枚貝・メガロドンの置き土産だと言っていた。アンモナイトも沢山出てくるらしかった。
この地域には、地球の悠久の歴史が刻まれているのだ。
その後、バスで数日前に降った雪が残る景色を見ながら、さらにドロミテ渓谷を奥へ進んでいった。
標高1750mのカレッツア峠に着いた。
スキー場があり、眼前に標高2500m前後の山が聳えていた。僅かな時間だったが、その雄々しい光景に見とれた。
いよいよドロミテ渓谷で標高が2239mと1番高いボルドイ峠に着いた。
そこには数件のレストランと土産物店があり、サス・ボルドイ(標高2950m)に登るロープウエイが掛かっていた。
レストランで昼食を摂ってから、希望者はロープウエイに乗った。(20名以上の団体は、確か1人1.8ユーロだった)
上って行ったロープウエイは、最後に切り立った急峻な崖をほとんど垂直に近い状態で上った。(写真は私が乗っているロープウエイ内から、降りて来たのを撮った)
サス・ボルドイの山頂につくと、そこには360度のパノラマが広がっていて、アルプス山脈の広大さに感動した。
この山の向こうはスイスやオーストリアだと思うと、そのうち機会があればそちら側からもこの光景を見てみたいと思った。
山を下りてバスに乗り、標高2150mのファルツァレゴ峠を越え、46km離れたコルティナ・ダンベッツォに向かった。
4つ星ホテルの「ホテル・ヨーロッパ」に着いた。
山小屋風のホテルで、2階の部屋のベランダに出て見ると、大きな山塊が眼前に聳えていた。トファナ山(3244m)だった。
夕飯までの間、町を散策した。
ここで冬季オリンピックが開催されたこともある町は、小さいながら山岳リゾート客向けのホテルが多く綺麗だった。
スーパーを見つけたので、ヨーグルト、イタリア独特のレッドオレンジジュース、菓子、チョコレートを買って戻った。