名盤ドキュメント 佐野元春“ヴィジターズ”「NYからの衝撃作 30年目の告白」
その1
放送
2014,9,21 日
午後11時00分~午前0時00分
BSプレミアム NHK
出演】佐野元春,伊藤銀次,小川洋子,宇多丸,吉成伸幸,ジョン・ポトカー,【語り】久保田祐佳
小川洋子(小説家):「情けない週末」が好きでした。恋人たちが楽しそうにしている週末なのに、情けない週末なんですよ、タイトルが(笑)
吉成伸幸(評論家):何で素晴らしい素敵な時代なのに、でも一方では殺戮や人種問題も起きている。その中で自分は何もできないで、でも生き続けなきゃいけない。
小川:自分で小説を書きたいけれど、まだ書き方も解らないし、どうしたらよいか解らない状態の時に、文学の世界で突然 村上春樹が、音楽の世界で突然現れたのが佐野元春。二人の先輩が言葉と音で作ってる世界が自分も何か作りたいって気持ちを見出してくれる力があった。私小説とは全く違った場所にも小説があるってことをね、村上春樹が示したように、佐野さんも「俺を解ってくれ」という詩じゃない、聴き手、ファンを鏡に自分を映す。そういうタイプの作り方があまりそれまでいなかったということでしょうかね。
伊藤銀次:「NEW AGE」はセンチメンタルな部分とドライの何とも言えない感じ。2ndアルバムは売れなかった。彼は絶対人のせいにしようとしないんだよね最初は待遇が悪くてね、バックの俺たちはブーブー文句言うんだけれど、佐野君は言わない。それどころか、佐野君はね、皆申し訳ない、僕がブレークすれば、今よりも良い待遇がって。そういうところが、やる気をくすぐるんだよね。
1983,3 SOMEDAY LIVEでNY移住を発表した元春について
吉成:そういう風にしたいと思った人は沢山いると思うんですが、それを行動に移すだけの環境がそれぞれのアーティストにあるかっていうと、それはないんですよね。レコード会社に言われて何年に何月にアルバムを出せよとか、シングルはいつだ、みたいな。
宇多丸【ライムスター】:今でもそうだけど、ザ・芸能界。なまじヒット飛ばしちゃったから、佐野さんも「佐野ちゃんまたSOMEDAY2みたいなの頼むよ 固いこと言わないでさー」みたいな。想像してますけど(笑)
1985,5NYへ
元春:右も左もわからないままこちらで暮らし始めましたから、自分でアパートメントを探すところから始まり、ようやく街に慣れてきて、レコーディング・プロジェクトを始まったのが、その半年ぐらいだったと思います。
MSRスタジオ(旧ライト・トラックス・スタジオ)へ
1982,12 元春が自ら選んだミュージシャン、エンジニアを集めてレコーディングを始める。スタジオには当時のエンジニアだったジョン‘トークス’ポトカーが居て、30年ぶりに二人は再会。マルチトラックテープ。24トラック。バラバラに録音されたヴォーカルや楽器演奏を2chにミックスした。
≪コンプリケーション・シェーク・ダウン≫
小川:針を落とした時の最初の刺激的な心臓を鷲掴みにされるような
宇多丸:歌詞見ると「ジャジー・ジェイ」とか言っている訳ですよ。DJの名前なんですけれど、レジェンド的な存在で、本当にそういう現場にジャジー・ジェイがいるディスコなんかに佐野さんが居たんだなーって。
歌詞にちゃんと記録されていて、そこにはまだブレーク前のマドンナが居たかもしれない。バスキア(黒人画家)も居たかもしれないし、佐野さんが興奮してるんですよ。
吉成:「ギャッツビーから始まって」「去年マリンバート」何とか色々出てきますよね。
アップ・トゥ・デイトなファッション
サービスのためのフィクション
宇多丸:NY 今 物凄く面白い 今 生きている 佐野さん瑞々しい 興奮が直で伝わってくる。
銀次:聴く人の心を くすぐる よくよく聴いてみると歌詞が深いんですよ。
☆元春&ジョン‘トークス’ポトカーのスタジオのシーン
元春:一人なんだけど、グループでラップしてるかのような工夫。アンユージュアル(独特)な空気感を作りたかった。18ch ヴォーカル メイン、17ch ヴォーカル 高音、14ch ヴォーカル 低音。元春の3パート・ラップ。
トークス:バスドラムはヤマハの機械だった。
バスドラム・・2ch 機械
スネア・・・・3ch 機械
タム・・・・・6ch 機械
ハイハット・シンバル・・・ドラマーのオマーが叩く 4ch 生音
機械と生音を融合させたアルバムになった。
1984年NYの音
19chのギターの音
“Think about it”(いかがですか)=CMの常套句
友人のマーク・フリーランド(ギターリスト)が僕に言ったんだ。
「モト君は1984年のNYをドキュメンタリーしたいんだろう?だったらコレだよって、彼はコンパクトなTVを持ってきて、ここにアメリカの下らないCMをぶち込むんだ」って
トークス:NY タイムズスクウェアみたいな音だね。音楽・広告 ストリートの雑音があり街のエネルギーを感じたよ。
この音はアメリカでも発売された12インチ・シングル・レコードにも入っている。
≪TONIGHT≫
アルバムからの最初のシングル・カット
宇多丸:この曲大好きで、佐野さんがNYを満喫している。NY良い!って
銀次:初シングルだったでしょ?なるほどなって思った。センチメンタルなメロディーラインとか抑えて作ってるなって思った。僕はその時に、この氷山の下に何が隠されているのかなって思ったよ。
元春:TONIGHTはメロディーだけ聴いてもらうとメランコリックなNYC讃歌に聞こえるかもしれないですね。でも、その夜の中は深く潜入してみると、きらびやかさというのは表面的なものであって、その内実は混沌としたものがある。NYCが持っているヒューマン・クライシス(人間の危機)トラブルを抱えた街の様子を訪問者である僕がそっと眺めているという風情ですよね。
銀次: 僕が佐野元春にグッと引付けられるのは、どの音楽の中にも人間がふと一人になって何とも言えないこの生きている寂しさとかね、無常感みたいなものとかね。そういう瞬間があるんですよね。それが何か僕の心の深いところを凄く刺激するんですよ。
その1
放送
2014,9,21 日
午後11時00分~午前0時00分
BSプレミアム NHK
出演】佐野元春,伊藤銀次,小川洋子,宇多丸,吉成伸幸,ジョン・ポトカー,【語り】久保田祐佳
小川洋子(小説家):「情けない週末」が好きでした。恋人たちが楽しそうにしている週末なのに、情けない週末なんですよ、タイトルが(笑)
吉成伸幸(評論家):何で素晴らしい素敵な時代なのに、でも一方では殺戮や人種問題も起きている。その中で自分は何もできないで、でも生き続けなきゃいけない。
小川:自分で小説を書きたいけれど、まだ書き方も解らないし、どうしたらよいか解らない状態の時に、文学の世界で突然 村上春樹が、音楽の世界で突然現れたのが佐野元春。二人の先輩が言葉と音で作ってる世界が自分も何か作りたいって気持ちを見出してくれる力があった。私小説とは全く違った場所にも小説があるってことをね、村上春樹が示したように、佐野さんも「俺を解ってくれ」という詩じゃない、聴き手、ファンを鏡に自分を映す。そういうタイプの作り方があまりそれまでいなかったということでしょうかね。
伊藤銀次:「NEW AGE」はセンチメンタルな部分とドライの何とも言えない感じ。2ndアルバムは売れなかった。彼は絶対人のせいにしようとしないんだよね最初は待遇が悪くてね、バックの俺たちはブーブー文句言うんだけれど、佐野君は言わない。それどころか、佐野君はね、皆申し訳ない、僕がブレークすれば、今よりも良い待遇がって。そういうところが、やる気をくすぐるんだよね。
1983,3 SOMEDAY LIVEでNY移住を発表した元春について
吉成:そういう風にしたいと思った人は沢山いると思うんですが、それを行動に移すだけの環境がそれぞれのアーティストにあるかっていうと、それはないんですよね。レコード会社に言われて何年に何月にアルバムを出せよとか、シングルはいつだ、みたいな。
宇多丸【ライムスター】:今でもそうだけど、ザ・芸能界。なまじヒット飛ばしちゃったから、佐野さんも「佐野ちゃんまたSOMEDAY2みたいなの頼むよ 固いこと言わないでさー」みたいな。想像してますけど(笑)
1985,5NYへ
元春:右も左もわからないままこちらで暮らし始めましたから、自分でアパートメントを探すところから始まり、ようやく街に慣れてきて、レコーディング・プロジェクトを始まったのが、その半年ぐらいだったと思います。
MSRスタジオ(旧ライト・トラックス・スタジオ)へ
1982,12 元春が自ら選んだミュージシャン、エンジニアを集めてレコーディングを始める。スタジオには当時のエンジニアだったジョン‘トークス’ポトカーが居て、30年ぶりに二人は再会。マルチトラックテープ。24トラック。バラバラに録音されたヴォーカルや楽器演奏を2chにミックスした。
≪コンプリケーション・シェーク・ダウン≫
小川:針を落とした時の最初の刺激的な心臓を鷲掴みにされるような
宇多丸:歌詞見ると「ジャジー・ジェイ」とか言っている訳ですよ。DJの名前なんですけれど、レジェンド的な存在で、本当にそういう現場にジャジー・ジェイがいるディスコなんかに佐野さんが居たんだなーって。
歌詞にちゃんと記録されていて、そこにはまだブレーク前のマドンナが居たかもしれない。バスキア(黒人画家)も居たかもしれないし、佐野さんが興奮してるんですよ。
吉成:「ギャッツビーから始まって」「去年マリンバート」何とか色々出てきますよね。
アップ・トゥ・デイトなファッション
サービスのためのフィクション
宇多丸:NY 今 物凄く面白い 今 生きている 佐野さん瑞々しい 興奮が直で伝わってくる。
銀次:聴く人の心を くすぐる よくよく聴いてみると歌詞が深いんですよ。
☆元春&ジョン‘トークス’ポトカーのスタジオのシーン
元春:一人なんだけど、グループでラップしてるかのような工夫。アンユージュアル(独特)な空気感を作りたかった。18ch ヴォーカル メイン、17ch ヴォーカル 高音、14ch ヴォーカル 低音。元春の3パート・ラップ。
トークス:バスドラムはヤマハの機械だった。
バスドラム・・2ch 機械
スネア・・・・3ch 機械
タム・・・・・6ch 機械
ハイハット・シンバル・・・ドラマーのオマーが叩く 4ch 生音
機械と生音を融合させたアルバムになった。
1984年NYの音
19chのギターの音
“Think about it”(いかがですか)=CMの常套句
友人のマーク・フリーランド(ギターリスト)が僕に言ったんだ。
「モト君は1984年のNYをドキュメンタリーしたいんだろう?だったらコレだよって、彼はコンパクトなTVを持ってきて、ここにアメリカの下らないCMをぶち込むんだ」って
トークス:NY タイムズスクウェアみたいな音だね。音楽・広告 ストリートの雑音があり街のエネルギーを感じたよ。
この音はアメリカでも発売された12インチ・シングル・レコードにも入っている。
≪TONIGHT≫
アルバムからの最初のシングル・カット
宇多丸:この曲大好きで、佐野さんがNYを満喫している。NY良い!って
銀次:初シングルだったでしょ?なるほどなって思った。センチメンタルなメロディーラインとか抑えて作ってるなって思った。僕はその時に、この氷山の下に何が隠されているのかなって思ったよ。
元春:TONIGHTはメロディーだけ聴いてもらうとメランコリックなNYC讃歌に聞こえるかもしれないですね。でも、その夜の中は深く潜入してみると、きらびやかさというのは表面的なものであって、その内実は混沌としたものがある。NYCが持っているヒューマン・クライシス(人間の危機)トラブルを抱えた街の様子を訪問者である僕がそっと眺めているという風情ですよね。
銀次: 僕が佐野元春にグッと引付けられるのは、どの音楽の中にも人間がふと一人になって何とも言えないこの生きている寂しさとかね、無常感みたいなものとかね。そういう瞬間があるんですよね。それが何か僕の心の深いところを凄く刺激するんですよ。
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