神尾真由子
2007年チャイコフスキー国際コンクールで日本人バイオリニストとして2人目の優勝者となった。
大阪府豊中市出身の21歳。チューリヒに留学中。
(バイオリン部門で日本人が優勝したのは、1990年の諏訪内 晶子以来)
(1998年に声楽部門で佐藤 美枝子が優勝、2002年にもピアノ部門で上原 彩子が優勝)
彼女に対する評価は
「強靭な音色」
「この才能は、ただただ神から授けられたとしか言いようのないヴァイオリン奏者」
「歌心に満ちた音楽が体の中からあふれ出てくる」
というような表現
ザハール・ブロン 神童を一流に育て上げる指導者で演奏者
彼が才能溢れる神尾にのめりこむように日本語を交えながら指導する。
神尾はブロン氏の言うとおりにせず、自分で考えて演奏してしまう。
ブロン氏は「レッスン中に指導したことをコンサートでそのまま演奏せずに、自分なりに工夫して演奏していた。
真の才能の持ち主であると核心を持ちました。」
レッスンが終わって「また明日、有難う」というブロン氏に うんと頷く神尾さん。ブロン氏はリンゴを渡すと、「これ痛んでいます」と神尾さん。
各社がしのぎを削り神尾のCD発売権を争奪して、SONY BMG マスターワークス(RCA RED SEAL)よりデビューアルバムが世界各国で発売されることが決定
こちら
レコーディングで「ありのままの綺麗な音は嫌」
プロデューサーは楽譜を見ながら音が外れた箇所をチェック、指摘して録り直す。
「特に高音が素晴らしい」というプロデューサー
何度も完璧に録音するために録り直しを指示する。
神尾は「まだ やるの?指が疲れすぎて完璧には無理」
右人差し指にタコができている。
「チャイコフスキー:ワルツ・スケルツォ op.34」
録音された音への違和感を訴える神尾「綺麗すぎない?クリーンすぎる。低音がきこえない」
「もうギブアップ、もういいや。うまくまとめてくれるでしょう。音だけ聴くとイマイチ、なんか綺麗にまとまっている感、勢いがあらわれない。」
3日目
「マイクの設定で 音が割れようが潰れようが敢えて出してみる」
ヴァディム・グラドゥコフ(ピアノ)
録音:2008年3月16-19日、チューリヒ、ZKO-ハウス
様々な国籍の大学の友人に囲まれて、敬語を使わずに済む英語を使って話すのが心地良い。
友人は「面白くて可愛らしい」「面白くてオープン」「弱点は見せない、数年間に弱音を吐いたのを知らない」
「恋はしてますか?」というインタビューに「してるんじゃないですか?」
「演奏に必要ですか?」という問いに「恋多き女ですか、ということにしておいて下さい」
「チャイコフスキーの優勝は嬉しかったですよ。先があるのが嬉しいですし、楽器じゃなくて引く人の問題だということが証明されて良かったです。」
フランク「バイオリンソナタ」(第一楽章)をヴァディム・グラドゥコフ(ピアノ)とコンサートで演奏。
生で聴いたら凄いんだろうな♪
「楽しかった」とコンサート直後に感想を述べる神尾。「フランス語はあんまり枠にはまらない感じが好き」
五嶋みどりに憧れていた神尾。
ヴェルビエで神尾が演奏。ムターの演奏や五嶋の演奏も流している番組で面白い。
目標は「特に目標というバイオリニストは居ないですね。好きな人はいますけど。」
バイオリニストとして目標はありますか?「個性あるバイオリニストになりたい。良いか悪いかはどちらでもよいですけど、ナンですかね、その質問パスで、わかんないです」
2008年4月23日 リヒャルト・ストラウス(シュトラウス)「バイオリンソナタ」(第1楽章)をブロン氏の前で初めて演奏。いつもプログラムの中でやろうとして、ちゃんと出来なかった曲をちゃんとしようかなと・・・
ブロン氏「この曲は様々な場面がある。例えて言うなら常に試行錯誤を繰り返し、自分の理想を追い続けるような主人公の物語」
ブロン氏はビブラートに拘って神尾を指導した。若い演奏家はビブラートを心を現すものそのものと勘違いして音楽をダメにすることがある。魅力的なテクニックですが、障害にもなる。速さ・揺れの幅・音の大きさなど様々な表現ができるビブラートで最適なビブラートは何かを探る。
初めてのレッスン後、「予想通りの指示でした。カリキュラム通りであるから、広げられるから大先生なんですけど、やっぱり こうきたか という内容でした」
カメラは一人暮らしの部屋へ。900フラン(約9万円)の家賃。半地下で練習が気にせずに出来るので良い。スイス人は音に神経質です。
最近読んだ気に入った本「ペスト」/カミュ →文体が清潔 清涼だったので、その中にほろっと人間らしいものが出てくる。
お気に入りのCDは 「Grace kelly /Mika」 高音部が良い
日本から送られてきたもの ピンクの鼻紙、犬のぬいぐるみミラノちゃん(背中にお金を入れていた)
ブロン氏はリンゴの柄のネクタイにカメラ目線の写真。
リヒャルト・ストラウスのレッスン二日目は第二楽章。
この日もビブラートの掛け方にチェックが入る。表情豊に(エスプレッシーヴォ)が楽譜にいっぱい入る。
ブロン氏は「心を込めて 胸が締め付けられるように」と日本語で説明する。
神尾の演奏は普通の音でもエスプレッシーヴォに聴こえるので、注意して演奏しないといけない。
ブロン氏のお手本演奏に楽譜付き。次は神尾の演奏に楽譜が 何と素敵な映像だろう。面白い。
三日目
人生は薄く細やかなニュアンスが豊かさを表現してくれる。真由子はそれを見事に表現してくれる。とブロン氏。
神尾は練習不足だけれど、方向性は間違っていなかった。先生のおかげでそれが確認できた。これからは研鑽を積む。
ブロン氏の息子と大学仲間で、彼の家にみんなで集まってパーティ 神尾が料理担当。タイ風チキンカレーが得意らしい。物価が高いので、みんなで燃料費や材料費を割り勘で作って食べることもあるようだ。
フランク「バイオリン・ソナタ」をブロン氏は課題曲とした。神尾はレッスン前に練習していた。神尾には既に馴染んでいる曲。窓の下でブロン氏が聴いていたらしい。
流れるようなメロディーで書かれているのに時折命令口調になっているのを過去の映像を見て発見したためにブロン氏が課題を示すことにしたらしい。
ブロン氏は「真にバイオリンを弾きこなせるようなると、声で話しているのと何ら変わらなくなる。魂で語りかけることが出来るようになる。私が伝えたかった核にあるものは正にそれなんです。」
神尾「バイオリンというものの力 ロシアやアメリカは余所余所しいんですよ。なのに、コンサートでは親しい人のように、涙を浮かべる人もいるほどのもの」
番組の最後に フランク「バイオリン ソナタ」(第3章)を演奏
演奏するヴァイオリンは、アントニオ・ストラディヴァリ(1727年製作)らしい。この楽器が一番良い時期が今なのかもしれない。サントリーが提供しているらしい。