スガシカオ 二回目
「詩」の創作ワークショップ
東京渋谷のスクランブル交差点の写真を全員に配り
この写真からインスパイやされた詩を書く
スガシカオも参加して、120作品を佐野さんとスガシカオが全てに目を通して気になるものを選択
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「風」
巨大な壁に圧倒されて肩身の狭い線がたたずむ
36度の波にもまれる クラゲはどこに行くのだろう
シマウマのようなラインは
誰かが 走り出すのを拒んでいるというのに
かたい地面の上で 風はそれでも 自由に吹きぬけてゆく
この詩で表現したかったことは何ですか?という質問を作った学生達にしていく。
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「町」
皆忘れている 昔そこで人が亡くなったことを
その地面の下には長い地下鉄があることを
かつて、そこは緑で覆われていたことを
僕も忘れている 多くの人が作ってきた今を
いつも利用している町だけど、この写真からは地下鉄は見えていない
僕たちが見ているのは一部のことなんだな
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「スクランブル」
すれちがう
すれちがう
本当はちがう
つながりたい
いつもここを歩いている時に、沢山の人が歩いている、他人なのは当たり前だけど、もう少し繋がりたい、さみしい気持ち 本当はちがう の ちがう のところに力を入れてみました。
詩、言葉は自由であって良いと思います。必ずしも詩の体裁をなしてなくてもポエトリーがあれば良い。
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「ハゲ メタボ オヤジ
日傘 ばばあ
ケータイ 中毒者
邪魔なんだよ ボケェ!!」
佐野:これはかなり嘆いてますね
というのを選んだスガシカオ
畏まって詞を書いてくれといわれて、ここまで悪態をついてモチベーションが必要で、
こうしたものが書けるというのがあって選びました。
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「ぐにゃぐにゃ」
外に放り出された僕らはぐにゃぐにゃ
嬉しくて、ぐにゃぐにゃ 悲しくてぐにゃぐにゃ
時々やってくる不安におびえながらぐにゃぐにゃ
同じぐにゃぐにゃが無いように、同じ生き方もないのさ
佐野:ぐにゃぐにゃという言葉が連続することでリズムが出てきて
スガ:擬音語が強いと感じた。沢山あるなかで、バーンとくるのは擬音語だなって感じました。
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この写真の中にスガさんがいるのかな?
なんて探してみるけれど
そういう企画ではないらしい
じゃあ友だちはいないか、って
もう一度渋谷を見下ろした
作者:あまり思いつかなかったので、思いついたままのことを書きました。
佐野:ポエトリーというのに必要なユーモアのセンスを感じて選んだ
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「水晶の舟」
彼とJIM MORRISONに通じる言葉さえない午後
水晶の舟は
割れてウイスキーに沈んだ
佐野:実在の人物の具体的な固有名詞を出すのは勇気のいることだと思うけれど
作者:ドアーズのこの「水晶の舟」
意識と無意識の歌詞があるんですが、この写真は綺麗で全体的にピントが合っている。それは意識していないで全体を見たことに意識と無意識を考えた。
佐野:割れて…の部分は?
作者:意識しているかしていないかの酩酊した状態で見ているっていう感じで
佐野:感想はどうですか、みなさんが書いた詩は?
スガシカオ:オリジナリティーに溢れる詩が多くて、でも
残念なのは、この絵を見て、都会での閉塞感とか圧迫感とかを書くとこの絵には勝てないかなと思って、
僕はその裏側からあるもの違う角度から見たもので書いてあるものを選んだ
「ウソツキ」 スガシカオ作
この写真の中に ぼくがいます
そう言ったら、君は探してくれるでしょうか?
もう、探したよ。ってウソをついてもいいよ
ぼくも同じくらい ウソツキだから
スガ:似ている人がいましたよね
学生:スガさんが好きなので、とても光栄に思っています。
スガ:自分が許されるか許されないかというポイントで、相手に対する嘘。
写真の中の人ごみとかは一つのモチーフでしかない
そこを通して自分の寛容にテーマをあてた。
◎学生からの質問
○「19才」 という曲が大好きなのですが、スガさん自身はどんな19歳だったんですか?
浪人してました。女の子に夢中になり、夏休みを過ぎたあたりから偏差値が20ぐらい下がり、どうにも人間としては一番最低な頃で、
二度と戻りたくないと思っている頃で
その時の気持ちにパッと戻れるじゃないですか、それでその時の気持ちのまま書きなぐった感じで作った曲
。メロディーにどうしても じゅうきゅうさい が乗らなかったので、じゅうきゅさい にしました。
○スガさんは一度就職してからミュージシャンになった転機は何だったんですか?
スガ:佐野さんもですよね?佐野さんの転機は
佐野:僕の場合は
米国の黒人のDJに出会った。
今書いたこの曲は今
スガ 僕は実は転機とかないんですよ。このまま終わって良いのか。才能がなければ酷い目にあうじゃないですが、そういう葛藤の中で四年間くらい仕事をしていたんですが、あるとき突然、
俺って天才じゃないか?デビューも決まってない、何も決まってないのに、まだ4曲くらいしか作ってないのに
世界は俺をほっておかないんじゃないかって思って
嘘をついて会社を辞めちゃうんですよね。
○最大のラブソングは何だと思いますか?
スガ:それは難しいなあ。こんなラブソングだったら書きたいなと思っているのは佐野さんの「情けない週末」
実はあんまり大したことは歌ってないんですよね、単にひとめぼれのことを歌にしただけの歌なんだけど
とても胸に刺さってね
デビューしてから暫くラブソングは書けなかった。最近は書けますけど。
○スガさんのタイトルはとても面白いと思っている
THANK YOU
という曲の歌詞を読んだら、何だこれは?タイトルと中味がギャップが凄いなと思って、
タイトルは何時の段階で決まるんですか?
スガ:タイトルをつけるのが一番苦手でね、曲が全部できているのにタイトルだけ決まらないのが年がら年中あって、連呼する言葉があれば、それをつけたりしますけど、なかなか決まらなくて、アルバムのタイトルとかも。
タイトルが一つで決められるんだったら、詩なんて書く必要がないんじゃないかって自分で勝手に考えちゃったり
一番苦労したのは「八月のセレナーデ」で
リリースはいつだっけ?て聞いて、八月だよって言われ、じゃあ八月のセレナーデでって
本当にそれくらい辛かったですね。
「THANK YOU」は大自信作ですから、あれは先に歌詞がなんかできちゃった。
○スガさんの詩の中で カタカナが重要だなって思っていて
キイロイ クーポン
言葉に対する文字に対する思いことを聞きたい。
カタカナは匂いケシです。漢字は象形文字なので、僕らの生活の中でついている臭いがついているので、そういうものから逃れたい時に使うんですね。古来からの慣習
カタカナになっているのはそれを消すためです。
○時々出てくる歌詞の中の神は漢字で書いてあって、少し怖いイメージで歌詞に出てくるんですが、
特定の宗教は信仰していないので、得体の知れない自分の中にある良心みたいなもので
嘘をつけないし、本当の気持ちにたどり着くのかもしれないけど、後ろめたい気持ちになっていきている僕にはそれが神的なものになるっていう
○聞く人に与える影響について どのように思っているのか
キャリアの半分くらいのときは
誰かに聞かせるために作ってるんじゃないって言ってたんですよね、それは商業主義に対する反発があって、自分のためにすることと、人に聴いてもらうってこととは全然違うことって思っていたんだけど、2000年くらいから変わってきて、凄く聴いて欲しいと思うようになりましたね。
ソングライター論をフランクにスガさんの話を聴いて学習する部分がありました。どうも有難う。