太宰治の作品でむかし読んだのは斜陽と人間資格だと書いたが、どうも斜陽だけらしい。斜陽もあるいは読んでいないかもしれぬ。斜陽が記憶に残っているのは、モデルになった元華族の持っていた借家にじいさんが住んでいたという話を聞いていた(読んでいた?)からで、多分読んだと思うがはっきりしない。
斜陽には伊豆のことが出てこなかったかな、もしそうなら一応読んだことになるだろうが。
毎日日課にしている立ち読みで、確認のつもりで人間失格を手に取ったが、パラパラやってどうも読んでないらしい気がしてきた。。それでは訂正をしなくてはと、律儀なオイラは筆をとった次第。
新潮文庫なんだが、この解説がすごい。圧倒される。奥野健男氏なんだが、例によって最上級の絶賛。どうしてこうも皆入れ込むのか。漱石や鴎外の解説ではこんな現象は無いが、女性ファンは熱狂的なのが太宰には多いと聞いたが、評論家がこう入れ込んじゃ評論、解説どころではなかろうが。
自伝的、遺書的小説らしい。小説的な昇華というかアレンジはしているのだろうが。人生の最後になってもおどけて(お道化て)いるようだ、というのが印象。
27歳の時に薬物中毒(小説ではモルヒネ、実際は睡眠薬らしい)で友人、知人にだますようにして精神病院に放り込まれて、退院した後も廃人のようになったというところで終わっている。
自伝と言うよりかは半生記だね。その後戦時下の旺盛な、時勢におもねるような多作、戦後の再びタガの外れたような人気作家人生にはノータッチである。
最後まで『おどけて、ごまかして、世間のご機嫌をとって』バイバイしたような演技人生のように感じた。
こりゃ、或る意味で三島由紀夫の『仮面の告白』先行版だな。
まてよ、仮面の告白もその頃の作品だったか ??
それにしても、彼の経歴を見ると連続殺人鬼ではないが、連続心中魔だね。感心する。その辺の自己解釈も作中に披露している。