穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

ポール・リクールの若書き

2016-07-17 10:55:31 | 哲学書評

 ジャン・グロンダンの「ポール・リクール」によるとリクールの活動はフランス本国の他アメリカでの研究、教授生活が長い。また英訳、英文の著書も多いようだ。彼自身の興味の範囲も英米哲学、分析哲学に及んでいる。該書によると、彼は一種の折衷主義者であり、現象学的解釈学者である。

ということで英米哲学は多少かじった下拙がフランスの現代哲学の簡単な眺めを得るにはリクールの著書がいいかな、と考えた。彼の処女大作は1950年に出版された「意志的なものと非意志的なもの」である。グロンダンが解説の相当部分をこの処女作にさいている。内容的にも興味があったので該書の翻訳を探した。

紀伊国屋書店から1993年に翻訳が出ているが、書店店頭では見当たらない。第二刷は出ていないようだ。それで今度は英訳を探したがこれもない。リクールの英訳はかなりあるが、この処女大作の訳本はないようだ。アマゾン等でべらぼうな値段のついた古本はあるようだが、私はセコハンを買わない。日本や英米でこの著書に対する関心や需要は無いに等しいようなのである。処女作でいろいろと未熟なところもあるのかも知れない。しかし前述のグロンタン氏によると彼の長い著作活動はこの処女作の延長線上にあるという。 

私は市中徘徊の途中で大型書店によることが多い。あまり売れない、人の読まない本を見かけることがあるためである。それで思い出した時には人文棚で該書を探すのだがないね。

ところがある日ある書店で該書訳書(3巻本である)の2を見かけて購った。不思議な物でそれから間もなく別の書店で該書の1と3を見た。勿論買った。