オースターの「インヴィンシブル」を読み終わった。オースターの作品の半分くらいは読んだであろうか。この作品はチャイニーズ・ボックス的な入れ子細工としてはこれまで私が読んだ作品の中で一番よい出来である。
作家ギルトにとっかかりをつかむと作家は延命策として通俗小説に向かうのは日米で同じだろう。これは通俗小説なのだが、複雑なつくり(invinsible)なわりには、文章の滑らかさ、構成の一体感、分かりやすさでいわゆる「円熟」の境地に達している。日本だとこうなると「文豪」という呼称をたてまつるのだろうか。
後書きで訳者はこの作品が初期の「ムーンパレス」と世間で比較されるというが、訳者も指摘しているように全然違うようだ。