「コンサルタントと言うのは黴菌みたいなものね、もっとも近年ではウィールスと言ったほうがいいのかな」
「言いえて妙、いやいやそんなことはありません」と彼は慌てて否定した。
「だけど、大抵コンサルタントが入ると会社っていうのは潰れるみたいね」
たしかに、と彼は自戒した。彼のアメリカ人の同僚も言っていたが、コンサルタントと言うにはウィールスのように相手の会社に広がっていくね、と彼に話したことがあった。
「ところで何で電話してきたの。なんか魂胆がなければ電話なんかしてこないだろうし」
「貴方のほうからそう切り出してくれると話しやすいな。実は前から不思議に思っていたのだが、星だこがしきりに家族制度の廃止を勧告しているでしょう。だから、なんていうかその理由と言うか、内容も打診していると思うのだが、報道が全くないんだな。不思議じゃないですか」
「それで相手の具体的な提案内容が知りたいわけ?」
「まあね」
「どうしてそんなことを急に思いついたの」と彼女は探りを入れてきた。
「なんでって。最近仕事の端境期で暇なんですよ。それでふとそんなことを考えたわけです」
「ふーん、それで何で私に連絡したの」と畳みかけてきた。
「いや、別に特別な理由はないんですよ。貴方は事情通だし、政府関係にも情報網があるようだし、特別に機密情報でなければなにかご存じかとね」
「なるほど、わかった。なんとなく釈然としないけどね。だけど申し訳ないけど、わたしもその種の情報は持っていないな」
「そうですか。それじゃ」
「待ってよ、いくら暇だと言って、どうして貴方のような大物ビジネスマンの頭にそんな疑問がヒョイと湧いたのかピンと来ないわね」と彼女が考え込んでいた。
まさか彼女に最近のタイムトラベルの話など出来ない。彼女との電話を切ると、別に当座の仕事に関係することもないとそれきり忘れていたが、数日後彼女から電話がかかってきた。
「あなたの質問はまったくタイミングがよかったわね。この間内閣府の人間と会ったのよ。貴方の話とは全く関係の無い件だけどね。そこでふとあなたの疑問を思い出して聞いてみたのよ。そうしたらベラベラしゃべりだしてさ。あなたの求めているような満足のいく内容かどうかは分からないけどさ」
「ずいぶん口の軽い役人だな。飲ましたんですか」
「まさか、この頃はそういうことはうるさいからね」
「あなたの色気で口が軽くなったのかな」
「冗談言わないでよ。話を聞きたくないの」
「ぜひ教えてください」