前号で紹介したマクシェイン著「チャンドラーの生涯」、ようやく「長いお別れ」について書いてあるところに来た。その批評には、というのはこの部分は著者の書評的な記述がおおいのが、そこまでのダラダラした記述と違う。しかし首肯しかねるところも多い。執筆経過、つまり出版社、エイジェントなどとの手紙のやり取りなどの紹介は事実(だろう)として読むわけだが、作品の解釈部分の講釈が「かわいい女」までの記述と違って著者の個人的な書評の色彩が強い。
思うに、この著書は最初に「長いお別れ」の書評として、あるいは作品の分析としてこの部分が独立して書かれたのではないか。それを全体の構成をあらためて出生からはじめて、ブラック・マスクへの寄稿から彼の全作品の記述を付け加えたのだろう。そう考えないと、「長いお別れ」のセンチメンタルで浮き上がった記述を理解できない。
首肯できかねる点が多いし、センチメンタルな記述が鼻につくが、そのかわりコツゴツした感じはなくなり、スラスラと読める。まだこの部分読み残しがあるが、日記的書評であるのでご海容を請う。ひょっとすると、翻訳の影響もあるのかもしれない。