穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

書評家の上前をはねる(3)

2022-01-02 21:35:12 | 書評

 さて、村田紗耶香のコンビニ人間です。2016年上期の芥川賞受賞作です。その時珍しく選者のほぼ満場一致で選出されました。芥川賞の選者の意見に大抵は危惧を抱くわたくしも賛成でした。ところが小川栄太郎先生は49点しかあげないのですね。批評もメタメタです。支離滅裂というか幼稚ですね。「これは嘘っぱちだ、」というのですね。小説と言うのはそういうものでしょう。今更自然主義文学でもないし、「小説神髄」でもありますまい。
小川先生のいう「嘘っぱちで作り物」だったかな、そこがいいんですよ。嘘っぱちの出来栄えを見なくちゃいけません。
ところで最近彼女の作品を二、三読んでいました。どこかで彼女はSFを書いているというのを読んだ記憶があり、最近SFの作法とはなんじゃらほい、と小当たりに当たっていたものですから、彼女のほかの作品を探したのです。小川氏の本では彼女のほかの作品の批評もあり、これもあまり高くありません。そして、ご安心ください。この点に関してはわたくしも同じ意見でございます。もっともSfっぽいのは「地球星人」だけでした。小川氏の27点と言うのは首を傾げますが、あまりいい点は上げられません。ほかの作品「授乳」とか「殺人出産」はSFではなくて、わたくしに言わせれば少女ものですね。彼女にはこういう少女期の体験と言うかトラウマと言うか、をしつこく追及する作品が多いようです。好きな人はいるのでしょう、とくに女性には。

 


書評家の上前をはねる(2)

2022-01-02 08:17:22 | 書評

 今から十年ぐらい前に何年か芥川賞受賞者の書評を試みたことがある。芥川賞と言う評判に乗っかればこのブログのアクセス数も上がるカモというスケベ根性からである。しかし何年かやってみて、あまりにつまらない作品が多くてやめてしまった。その時には作品の批評よりも、選考者がどのような理屈をつけているかが、実は興味があった。つまり選評の選評である。今回の「書評家の上前をはねる」のと同じ趣向であった。
 そのときに、ちょっといいな、と思った作品が二つあった。今度の小川氏榮太郎の批評と比べてみた。一人は私小説が売りの西村賢太である(2010年下期受賞)。この時の選考委員のコメントを見ると、◎が石原慎太郎一人である。〇が三人。石原一人が奮闘している。この時はダブル受賞でトップは朝吹さんのきとこわだったかな。西村氏は二番目だ。石原氏は前回も西村の作品、たしか「無銭飲食なんとか」という作品を一人押したらしい。
 この時は当ブログで石原氏の慧眼に触れた。前回の作品は受賞作に比べるとやや落ちるが、しかし評価すべき痕跡がある。そこに早くから目を付けた石原氏の評価は確かなものだと思ったのである。
 さて小川氏の採点であるが、73点、まずまずのところだろう。ほかの作品はその後読んでいないが、あのスタイルだと大幅な変身は無理だと思っていたが、小川氏は他の作品に、並みからやや良し、の評点をつけている。読んでいないが、妥当かもしれない。
 もう一つ、感心したのは村田沙耶香の「コンビニ人間」であるが、長くなったので切れのいいところで今回はここまでとして次回触れたい。

 


書評家の上前をはねる(1)

2022-01-01 08:20:24 | 書評

 最近「作家の値打ち」という奇書が出版された。夕刊フジに掲載されている花田氏の記事で読んで買ってみた。著者は小川榮太郎と言う人。未読、未聞の人である、私にとっては。花田氏が馬鹿にほめているので、、もっとも花田氏の関係している出版社から出ているからかも知れない。
 どういう基準で批評する小説を選んでいるかはっきりしない。一応生存している日本人の作家の物と言うことらしい。それでは彼らの作品からどれを選ぶかと言う基準ははっきりしないが。
 書評家の上前をはねるといっても、自分が読んでいない作品ではどうしようもないが、自分が昔読んだ作品との比較をしてみた。
 ノーベル賞作家のカズオ・イシグロ氏の作品を絶賛している。彼は日本人ではない。英国人であるが、日系ということで入れたと作者は断っている。五作品が取り上げられているが、いずれも世界文学の水準に達している作品、ないし、近代文学に銘記されるべき作品にランクされている。中でも「忘れられた巨人」はほぼ満点、掲載作品中最高点の99点、「私を離さないで」が97点だ。「忘れられて巨人」は読んでいないので何とも言えないが、「私を離さないで」は読んだ。私はそれほどの感銘を受けなかったが、まあ、ノーベル賞受賞者なのだから文句も出まい。
 この本にはノーベル賞作家といえば大江健三郎も取り上げられているが、ほぼ、メタメタの評価である。十作品が取り上げられているが、70点 ,90,0,49,85,62,17,マイナス90!!,43、47である。80点以上が二作品あるが0とか17というのがある。またマイナス90点と言うのがある?!

あとは並みと言う評価だ。小川氏の評点では29点以下は出版すべきではない作品と言うことらしい。
私は大江の小説は一つも読んでいないので書評の批評は出来ない。