毎年恒例(?)の今年読んだ本のベスト10です。
今年は、震災関連の本をまとめ読みしたのですが、
その手の本は技術的過ぎてベスト10には入らず。
気になる本がありましたら、ぜひご一読ください。
1「町奉行日記」、山本周五郎、新潮文庫、1979年
たまたまブックオフで手に取って買った短編集です。泣けます。
江戸時代の武士は、いまで言えば官僚です。藩政改革のために、
汚れ役を買って出て命も名誉も捨てた武士を描く短編「晩秋」は、
いわば「官僚道」の鏡です。潔さに感動します。
2「Beフラット」、中村安希、亜紀書房、2011年
私自身も、登場人物のひとりのノンフィクションです。
与野党の18名の若手国会議員にインタビューしたものの、
実名で登場するのはわずか5~6名です。
民主党の小川淳也議員と私の二人を扱ったページ数が多く、
二人が主役級です(?)好意的に取り上げてもらいました。
3「文化と外交:パブリック・ディプロマシーの時代」、渡辺靖、中公新書、2011年
ソフトパワー外交の基本的な考え方、実例を学ぶによい本です。
自国の良いところだけを派手に自己ピーアールするだけではダメで、
自国の悪いところさえ正直にさらすことが、自由と民主主義の懐の深さを示し、
ソフトパワーの源泉になるという指摘は重要だと思います。
アニメとコスプレがソフトパワーだと勘違いしている人に読んでほしい本です。
4「朽ちるインフラ」、根本祐二、日本経済新聞社、2011年
人口減少社会のインフラ整備のあり方を考えるための良書です。
高度成長期につくったインフラの更新や補強こそ最優先課題です。
民主党政権で整備新幹線を推進している人たちに読ませたい本です。
5「『経済人』の終わり」、P・F・ドラッカー、ダイヤモンド社、1997年
ドラッカーが第二次大戦前に書いた本です。マネジメント本ではありません。
全体主義の起源について論じた本で、未来を正確に予想していました。
ワイマール憲法という当時もっとも民主的な政治体制の下でナチスが生まれ、
第二次大戦という悲劇を生みました。チャーチルも絶賛した本です。
6「ブレア回顧録(上・下)」、トニー・ブレア、日本経済新聞社、2011年
ブレア首相を偉人というより、同業者だと感じさせてくれる本です。
率直な表現ぶりに驚きます。議会対策、メディア対策など参考になります。
日本の政治が特別悪いわけでも、米国の政治が特別悪いわけでも、
英国の政治が特別優れているわけでもないことを実感しました。
長期政権のブレア首相でも、悩んだり、苦しんだり、迷ったりしてます。
7「楠田實日記:佐藤栄作総理首席秘書官の二千日」、楠田實、中央公論新社、2001年
新聞記者出身の総理秘書官が、スピーチライターから、党内根回し、官邸外交、
政策立案まで、総理の様々な意思決定に関わる様子がわかります。
無味乾燥な日記なので、予備知識(政治、外交、行政、歴史)が相当必要です。
ただ、永田町や霞が関の業界人にとっては、非常に勉強になる本です。
将来、官房副長官や総理補佐官、総理秘書官を目指す人には必読です(?)
それから佐藤首相が、しばしばひとりで写経をされているのが印象的です。
総理大臣という仕事は、おそろしく孤独なのでしょう。
なお、この本は、おそろしく分厚くて、重くて持ち運び不可です。
8「他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス」、若泉敬、文芸春秋、2009年
上述の「楠田實日記」とセットで読むとわかりやすい本です。
佐藤首相の沖縄返還交渉、日米密約等の交渉過程がよくわかります。
タイトルが心に響きます。「他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス」という思いは、
不確実性の霧の中で重大な決断を迫られる者には、ジーンとくる言葉です。
最後に自殺した著者は、いまの普天間問題をどう見ているのやら・・・
9「リー・クアンユー回顧録(上・下)」、リー・クアンユー、日本経済新聞社、2000年
シンガポールの建国者、経済発展の立役者、リー・クアンユー氏の回顧録。
「世界は神がつくったが、オランダはオランダ人がつくった」という諺があります。
オランダの土地は干拓で人工的につくられたことを意味していますが、
「シンガポールはリー・クアンユーがつくった」といって過言ではありません。
国の成り立ち(マレーシア連邦からの独立)から、細かな経済規制まで、
リー・クアンユーがひとりで作り上げたようなものです。
政策立案に携わるものとして、参考になる本でした。
10「アラブ革命はなぜ起きたか」、エマニュエル・トッド、藤原書店、2011年
「アラブ革命はSNSが起こした」と信じている人に読ませたい本です。
人口動態や識字率という観点から民主化の必然性を説明しており、
興味深い分析です。イスラム教という要素も軽視しています。
分析の枠組みとしておもしろいです。