イスラム国の主張の一つが欧米が決めた植民地支配の国境線の否定である。
これについて、きのう1月27日夜のテレ朝「報道ステーション」が、俺たちはいまこそサイクス・ピコを破棄するのだ、というイスラム国の主張を報じていた。
これは実は物凄い主張なのだ。
サイクス・ピコこそ、パレスチナ問題を筆頭とした中東の混乱のすべての根源である。
サイクス・ピコとは、厳密にいえば英・仏間の間で中東の分割を極秘裏に決めたサイクス・ピコ協定をさすが、もっとひろくとらえれば、今では中東の支配者である米国に象徴される、欧米による中東植民地支配体制を意味する。
この植民地主義を否定することから中東、イスラムの解放が始まる、とするのがイスラム国の主張なのである。
そしてそれは一理ある。
世界中の抑圧国の共感を呼ぶ。
欧米がイスラム国を脅威ととらえるのは、もちろんその残虐性や無差別テロにあるが、もう一つの脅威が、この植民地主義への挑戦に違いない。
そして欧米のおそれは理解できる。
なぜならば、欧米の植民地主義は、いまでも厳然と存在し、そこから欧米は中東への優位性を保ち、多大の権益を受け続けているからだ。それを手放したくないのだ。
しかし、そんな植民地主義こそ戦後70年たった今、否定されなければいけない旧弊なのだ。
それを強く居続けている者がこの日本にもいる。
それが東京裁判を否定し、戦後レジームからの脱却を叫ぶ安倍首相だ。
イスラム国と安倍首相は、歴史修正主義という一点で奇しくも一致する。
歴史の否定を一番恐れるのは米国だ。
だから米国は安倍首相に対する警戒心、猜疑心を解かない。
イスラム国との宣戦布告を行った安倍首相を評価しながら、それでも安倍首相を真の味方とはみなさない。
その事を見事に言い当てた識者を見つけた。
発売中のアサヒ芸能で、佐藤優が自らの連載コラムで書いている。
今度の中東外遊で訪れたイスラエルでの安倍演説を絶賛する一方で、それでも安倍首相の歴史認識は認められないと書いている。
佐藤優の後ろにいる一大勢力からの安倍首相に対する警告である。
安倍首相とイスラム国は彼らにとってともに危険な存在なのだ。
これ以上の皮肉はない(了)