◼️「笑う蛙」(2002年・日本)
監督=平山秀幸
主演=長塚京三 大塚寧々 國村隼 南果歩
会社の金を横領して逃亡中の主人公は、身を隠そうと妻の実家が所有する別荘に行くが、そこで妻とバッタリ。自首を勧められるが、離婚届にサインすることを条件に1週間だけ納戸に匿ってもらうことになる。次々に訪れる人々と妻との会話。親族だけでなく、夫の浮気相手や、夫の行方を追う警察もやって来る。そして妻の恋人も現れる。主人公は二人の情事を壁一枚を隔てて聞くことになり、再び妻への思いが高まっていく。
狭い舞台で静かに進む物語。そこで描かれるのはちょっとおかしな人間模様と人生の悲喜劇。年齢を重ねてからの方が、身に染みて楽しめる映画かもしれない。
主人公を演ずる長塚京三は、昔からテンパってドギマギする表情が上手い人。会社の飲み会後に、部下の女性にドキッとすること言われるサントリーのCM好きだったな(古い…年齢バレそう💧)。ここでも男の単純さ、意思の弱さが見事。大塚寧々の演技は淡々としているけれど、むしろ彼女のキャラクターあってのこの妻役かと思う。脇役には雪村いづみ、ミッキー・カーティス、國村隼、南果歩、きたろうと芸達者を揃えているのが飽きさせないうまさ。シリアスな話なのかと思いきや、映画の後半はジワジワと可笑しさが増していく。
雨が降ってきたので洗濯物を取り込もうと納戸から出てきた夫の目の前に、妻の恋人が現れる場面は、サスペンスとコメディが融和したような名場面。恋人との情事を夫が覗き見している場面では、妻が夫に聞かせる為にベッドでわざと大きな声をあげる。緊張感とニヤリとする可笑しさが同居する場面が随所にあって好感。
ラストの大塚寧々が見せるしたたかさ。ネタバレ防止のために詳しくは書かないが、実は夫を思っての言動ともとれるだけに、その微妙な感じが、不思議な余韻を残す。そして最後にナレーションで語られるその後の出来事。映画館ではあちこちから笑い声が聞こえていた。