いよいよ僕が憧れる不良老人の登場。今回はセルジュ・ゲンスブールです。僕がゲンスブールを初めて聴いたのはいつだろう?想像もつかない。あの問題作 ♪ジュテーム・モア・ノン・プリュ のメロディーは幼い頃、どこかで聴いたことがあったようである。僕が真剣にゲンスブールを聴き始めて、その魅力にハマったのはアルバム「ラブ・オン・ザ・ビート」から。デビッド・ボウイの ♪レッツ・ダンス を気に入ったゲンスブールが同じミュージシャンを使って制作したこの上なく猥褻でこの上なくダンサブルな怪作。8分に及ぶダンスビートに、エクスタシー瞬間の女性の声がからむタイトル・チューン。娘シャルロットと近親相姦をテーマとしたデュエット曲(これがショパンの♪別れの曲のカヴァー!)。忘れもしないけど、初めて買ったFM誌の表紙はこれだった。女装したゲンスブールが煙草くゆらせて正面を向いている異様なジャケット。音もビジュアルも衝撃だった。 |
フレンチ(シャンソン)自体に初めて魅力を感じたのは、中学生の頃かな。NHKのTV番組でジルベール・ベコーのライブを観たことがきっかけ(ジルベール・ベコーは近い内にこのシリーズに登場します)。その頃僕は”映画音楽”というくくりで音楽を聴いていた。映画で使用されていれば何でも聴いた。だからピエール・バルーも、レイ・チャールズも、ブルース・ブラザースも、ジョン・ウィリアムスも、ジェリー・ゴールドスミスも、フランシス・レイも何でも聴いている。これが僕を雑食性音楽ファンにした最大の要素。
僕はゲンスブールの音楽や後の世代への影響だけに夢中になったのではない。彼がプロデュースした女性達への関わり方にも強く惹かれるのだ。”惚れた女を自分の理想像に近づけたい”という男心は誰にでもあるものだと思う。ジェーン・バーキンやカトリーヌ・ドヌーヴのように、ゲンスブールと出会ったことから歌に目覚めた者。ブリジット・バルドーやヴァネッサ・パラディのように彼の作品を歌うことでその魅力を増していった者。そして娘シャルロットなど、ゲンスブールの私生活にも深く関わってくる彼女たちのアルバムを聴く度に、そんな男心を美しい形で世に示したゲンスブールの”仕事”に感動させられたり、嫉妬させられたり。ギリシア神話に出てくるピグマリオン家は、自分が作った女性像に恋をして、アフロディーテに命を吹き込んでもらう。この話は「マイ・フェア・レディ」や「プリティ・ウーマン」に形を変えて現在にも生きているのだが、この”ピグマリオン願望”を見事に現実のものにしたゲンスブールに魅力を感じずにはいられない。要は女の子が好き!ってことなのかもしれないけどね(恥)。