◼️「キングコング/King Kong」(2005年・アメリカ)
監督=ピーター・ジャクソン
主演=ナオミ・ワッツ ジャック・ブラック エイドリアン・ブロディ
公開された頃から方々でいい評判を聞いていた。このHPにリンクしてくれている映画ファンサイト仲間でも好評だったし、アメリカの有名な映画評論家センセイもベストテンに選出していた。だけど一方で興行収入は今イチとも伝えられる「キング・コング」。上映時間が長いこと、それに「キング・コング」という題材に魅力を感じる層はどうしても年齢が高めであること。そこがネックなのかな。オリジナルの1933年版は知らずとも、せめてディーノ・デ・ラウレンティス製作の1976年版を観ている世代。若いコたちは大猿見るより、イケメン俳優見る方がいいんだろう。残念なことだ。とてもいい映画なのに。
特撮技術や暴れる大猿や恐竜のスペクタクルは確かにすごいし、それを観るだけでも映画館に金を払う価値はあるだろう。だけど、この映画は観る者が映画好きであればあるほど心に染みる映画だ。”映画好きが惚れる映画”だと思うのだ。久しぶりに「淀川長治センセイにみせたい!」と思った。それはこの映画に注ぎこまれた映画愛の深さ故だ。33年版へのオマージュが捧げられていることは、ピーター・ジャクソン監督の思い入れ。明らかにオーソン・ウェルズを意識しているジャック・ブラック。ヒッチコック映画のヒロインのようなナオミ・ワッツの美しさ。サイレント時代からある南海冒険もの(観たこたぁないが)の香り。
そして何よりも僕がすごい!と感じたのがラスト30分、台詞らしい台詞や説明臭いカットもなく、ほとんどなく映像だけでグイグイ押している演出の巧さ。3匹の恐竜との死闘の場面にしても、大道芸でコングを笑わす場面にしても、言葉を発しないコングの気持ちがひしひしと伝わってくるのだ。エンパイアステートビルの上で飛行機に襲われる場面の「そっちにいってな」と言っているかのような気持ちにさせる。そして夕陽を見つめる感動的な場面(ラストの朝日との対比が見事!)物言わぬコングはどうだ。背中と横顔が雄弁に愛を表現している。ニューヨークで暴れるコングの元へナオミ・ワッツが霧の中から登場する場面や、30年代の不況の様子を一気に映像で見せてしまう冒頭も巧いなぁ。それにしても虫嫌いで高所恐怖症の僕は、手に汗握りっぱなし。いや、こういうのを娯楽映画と言うのです。途中からあれほどいた原住民が姿を消すとか、ジェイミー・ベルにあの役は物足りないとか、いろいろあるけどそれはこの際どうでもいい。コングの勇姿に拍手を贈ろう。