■「アデルの恋の物語/L'Histoire D'Adele H.」(1975年・フランス)
●1975年全米批評家協会賞 主演女優賞
●1975年NY批評家協会賞 主演女優賞・脚本賞
監督=フランソワ・トリュフォー
主演=イザベル・アジャーニ ブルース・ロビンソン シルビア・マリオ
この映画の宣伝コピーは「こんなにも愛ひとすじに生きられるものなのか・・・」。宣伝文句というよりも素直な感想という気がする。ピノン中尉側から冷めた見方をすれば、アデルは”ストーカー”なんだろう。中尉の軍服に手紙を忍ばせ、他の女性との逢い引きを執拗に追い回す。向かいの建物から階段を登る二人を見つめる場面は実に印象的だ。怖ささえ感じる。
アデルは確かに激しすぎるし、最後は狂気に陥る。でもこの恋は純粋なる”究極の片想い”なのだ。それ故に美しいし、その一途さに僕らは感動させられるのだ。恋をすると誰しもが経験することだけど、”相手を思っている間の幸福感”ってありますよね。時にはそれ故に苦しむこともあるけれど。アデルは中尉を想い続けることだけに一途になれただけ、幸福だったのではないかな、と僕は思った。アデルは劇中「私を愛することができないなら、私に愛させて。」と迫る。これこそまさに究極の片想い。
イザベル・アジャーニはこの演技で国際的にも認められる。声に出して手紙を書いていながら、次第に感情が高ぶる場面。死んだ姉の夢を見てうなされる場面。身も心もボロボロになりながら街をさまよう場面。恥ずかしながら「アデルの恋の物語」は初めて観た。狂気を演ずるアジャーニというと「ポゼッション」しか知らなかった僕は、この映画で改めてアジャーニの美しさとすごさを感じた。男装してパーティに忍び込む場面は、すっごくかわいい。