
■「私の中のあなた/My Sister's Keeper」(2009年・アメリカ)
監督=ニック・カサヴェテス
主演=キャメロン・ディアス アビゲイル・ブレスリン アレック・ボールドウィン
癌に犯されている姉の為にドナーとして生まれた妹。生まれてすぐの臍帯血から始まる度重なる移植を強いられたとして、妹は両親を訴える為に凄腕の弁護士を依頼する。家族の絆、個人の尊厳、生き方の選択…ヘヴィなテーマ。移植をする上でマッチしやすいから、とドナーとして子供をつくることを勧める医者もいかがなものかと思ったが、親の身としてはその選択をする気持ちもよくわかる。可能性があるなら何にでもすがりたいのが当然だろう。しかし、映画冒頭で語られる子供の心情や幼い妹が手術台に押さえつけられる場面は見ていてじつに痛い。
臓器提供を受ける姉もその効果や妹への複雑な思いで揺れていた。物語は前半妹を中心に描いているが、後半は姉の自分が生きること(生きてきたこと)への思いが切実に描かれていて涙を誘う。この部分はハリウッド映画らしく実にストレートに描かれている。彼女が家族への思いを綴ったノートをじっくり時間をかけて示していく演出は、やや過剰?とも感じられたが、それが彼女の家族への感謝だと思うとやはりジーンときますわな。映画では家族と彼女との関わりを正面から描いている。キャメロン・ディアスが自分の髪を剃り落として娘に合わせようとする姿や、姉を介護する懸命な妹が印象に残る。いつもとは違って、ノーメイクでキツい表情すらみせるキャメロン・ディアス。ニック・カサヴェテス監督は、キャメロン・ディアスに自分の母親である名優ジーナ・ローランス(名作「グロリア」の勇姿は忘れられない)のイメージを重ねていたと聞く。そこにはロマコメで笑顔するお気楽なキャメロンの姿はない。この主演女優の頑張りは映画を見終わって心に残る。
いわゆる”難病もの”を美しく描いてしまう映画は多い。しかし、この「私の中のあなた」は違う。病気と闘う人々の実像に迫ろうとする姿勢は実に潔いし、好感がもてる。嘔吐や鼻血、体の痛みなど病気と闘う姿を描写する。妹を助ける弁護士も難病と闘っている。綺麗な夢ばかりを描くハリウッド映画ではなく、現実から逃げていない映画だ。同じ病気と戦っている男の子との恋。胸にチューブがつながれている二人のラブシーンは悲しくも美しい。生きることと家族の絆について考えさせられる力作だ。「スピード2」のジェイソン・パトリック、「しあわせのレシピ」のアビゲイル・ブレスリンも好演。アレック・ボールドウィン太っちゃったなぁ・・・。