Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

サマーウォーズ

2009-10-25 | 映画(さ行)

■「サマーウォーズ」(2009年・日本)

監督=細田守
声の出演=神木隆之介 桜庭ななみ 谷村美月 斎藤歩 富司純子

 憧れの夏希先輩から夏休みに一緒に長野の実家に行ってと頼まれた健二。夏希の家は武田家家臣の家柄でその伝統とスピリットを受け継いでいる一族。彼らはサイバースペースで起こった事件をきっかけに世界の危機というとんでもない事態に立ち向かうことになる。

 「パプリカ」「電脳コイル」とこのところマッドハウス制作のアニメが面白い。PC用語満載のアニメを真剣に観ている僕を配偶者はアニヲタ呼ばわりする。確かにサイバースペースを舞台にしているだけにとっつきにくいテーマだろう。だが映画はまず仮想都市OZ、そこで活動する人物たち(アバター)の説明から始まる。PC用語に詳しくなくってもとりあえず映画にはついていけるから大丈夫。

 そんなことよりもこの映画で大切なのは”人と人のつながり”を描くこと。主眼はサイバーゾーンでの戦いではない。”人と人のつながり”こそが世界を救うということ。その普遍的なテーマが僕らをして、手に汗を握らせ、涙させる。突然の危機に曾祖母栄が人脈を駆使して立ち向かおうとする。「あんたならできるよ。」その一言がみんなを奮い立たせる。それはまさに現実世界の”ネットワーク”。だが、その栄もOZの混乱から体調の異変に気づくのが遅れた為に亡くなってしまう。そこから一族+健二が危機に立ち向かう決意をするあたりから物語は俄然熱を帯び始める。そして物語の後半、健二と夏希らが一族のみんなと協力して、強大な敵に立ち向かうクライマックス。カズマを始め、みんながそれぞれの得意分野で協力する姿は、とかく人間関係が疎遠になりがちな今の社会で忘れられかかっているものを思い起こさせる。しかもこの映画がうまいのは、現実世界とは異なるサイバースペースを舞台にして”人のつながり”を感じさせるところだ。日本的情緒とサイバーSFが同居するのは見事。花札決戦と人工衛星落下に立ち向かうクライマックスには涙出そうになっちまった。

 思えば僕も、祖父母が健在だった頃は実家に一族が何かと集まって顔を合わせることが多かった。あの頃は叔父叔母や従兄弟ともみんな仲良くしていたっけ・・・。祖父母が亡くなり、様々な事情から今は集まることもなくなってしまった。この映画のような結束力があるわけではないにせよ、少なくともそこには父母以外の身近な人のつながりがあった。みんなでご飯食べる、それだけでいい。いちばんいけないのはお腹がすいていることと、ひとりぼっちでいること。あの食事シーンを見ながらふと自分のことを顧みる。

 話は違うが、アニメーションで現実世界のロケの重要さを思い知ることが最近多い。「崖の上のポニョ」の跳ね橋や「けいおん!」の京都市内の風景。「サマーウォーズ」は長野県上田市を舞台にしているが、監督がここを選んだのは奥様の実家があるから。実家に挨拶に行ったときに見た青い空と風景と上田市の歴史がアニメの背景になっているそうだ。アニメは単なる空想世界の産物ではなくて、ここでもきちんと現実世界とつながっている。山下達郎の主題歌も心に残りますね。




コメント (2)
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