■「ココ・シャネル/Coco Chanel」(2008年・イタリア=アメリカ=フランス)
監督=クリスチャン・デュゲイ
主演=シャーリー・マクレーン バルボラ・ボブローヴァ マルコム・マクダウェル
シャネル関連の映画が次々と公開されている。オドレイ・トトゥ主演の「ココ・アヴァン・シャネル」が恋愛を基礎に描いているのに対して、このシャーリー・マクレーン主演作は丁寧に伝記映画としてシャネルを描いている。「ココ・アヴァン・シャネル」で不完全燃焼だった人々には、こちらの方が向いているに違いない。シャネルの身に起こった出来事が語られ、シャネルのファッションに対するスピリットがよく理解できる内容になっている。つまり、予備知識抜きに人間ドラマとして楽しめるのは「ココ・シャネル」ってことになるか。もし観る順番が逆だったら「ココ・アヴァン・シャネル」も楽しめたのでは・・・と思った。特にシャネルのファッションに対するポリシーがよく理解できた。
どうしても比較してしまうが、「ココ・アヴァン・シャネル」はエチエンヌの屋敷での生活が退屈で苦痛なものと描かれていたのに対して、「ココ・シャネル」では不満はないがやりたいことをやりたい前向きな面が強く描かれていたように思う。かといって「ココ・シャネル」が恋愛面での描写が不足かというと、さにあらず。シャネルとエチエンヌそしてボーイの三角関係を象徴するような、タンゴのメロディーをバックにした場面は実に秀逸。タンゴは情熱のダンスとよく言われるが、三人が踊りながら目を合わせる緊張感はたまらない。また、恋愛映画的な見方をすると、「ココ・シャネル」の方が女性がデンと構えているように思える。そのせいか男二人がシャネルに告げる愛の表現は、実に懸命。「あいつといると君を失いそうで・・・」「毎日君のことばかり考えていた・・・」ありふれているけれどそのストレートな表現が、僕ら男性の観客には身につまされる。
若き日のシャネルを演じたバルボラ・ボブローヴァは、型にはまらないシャネルという人間像をうまく演じている。どことなくオドレイ・トトゥに近い顔立ちにも感じられるから、シャネル自身に似ているということなのかもなぁ。そして晩年を演じたシャーリー・マクレーンは貫禄の演技。80年代に5度目のノミネートでオスカーを受賞したシャーリー・マクレーンは「もらって当然と思うわ」とコメントした。シャネルのやや高飛車な態度はファッションを創り出す自信の表れ。マクレーンのイメージに重なるように思えた。脚本はエンリコ・メディオーリ。「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」や「ルードウィヒ/神々の黄昏」「家族の肖像」を手がけた人だとか。人物の描写が巧みなのは納得です。
ところで、タイトルバックで脚本は「teleplay」とクレジットされているけど、テレビ映画として製作された映画なんでしょうか。
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