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キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

宇宙大怪獣ドゴラ

2011-01-08 | 映画(あ行)

■「宇宙大怪獣ドゴラ/Dogora The Space Monster」(1964年・日本)

監督=本多猪四郎
主演=夏木陽介 ダン・ユマ 中村伸郎 藤山陽子 若林映子 藤田進

 東宝怪獣映画は幼い頃から(大きくなっても)いろいろ観てきたが、その中でもドゴラはたいへん地味な存在。空飛ぶでっかいイカのようなその風貌。少年誌のイラストで知られる小松崎茂が原案を「海底軍艦」同様描いている。他の東宝怪獣映画に登場することもなかったから、地味な存在でいるのは仕方ないのだろうけど。

 この宇宙生物ドゴラは炭素を食べる生き物という設定。日本や世界各地で次々に起こるダイヤモンド盗難事件が起こり、ダイヤモンド強盗団、人造ダイヤの研究をする科学者、事件を追う警察、それに謎の外国人がこの事件に関係することになる。そしてドゴラはダイヤだけでなく石炭を求めて北九州にやって来る。

 映画が製作されたのは1964年。若戸大橋完成が1962年9月、翌年が5市対等合併で北九州市が発足するので、まさに北九州がホットな話題であった頃だと思われる。石炭の積出港として代表的存在だった若松がロケ地として選ばれており、若戸大橋と洞海湾の風景はこれでもかっ!というくらいに登場する。怪獣映画のお約束として、当時のランドマークともいえる建物が壊される場面はつきもの。福岡タワーはゴジラに登場するし、現ヤフードームはガメラに破壊された。炭素を食べる以外に暴れることをしないはずのドゴラだが、若戸大橋だけは手(?)を出さずにいられなかったようで、無惨に破壊されて洞海湾に沈むことに。当時、東洋一の吊り橋だった若戸大橋は、今でも北九州を代表するランドマーク。洞海湾上空で怪現象が起こる場面では、画面の左端に上野海運ビル古河鉱業ビルがチラッと映るし、通りにかけられた「花の露」の看板、人々が逃げまどう場面でもいろんな看板がちらほら見えるので、当時を知る人にはどこか特定できるかも。湾内の船で働く人々も観ることができ、当時の様子がわかることだろう。若松出身の天本英世(「仮面ライダー」の死神博士という方がわかる?)もギャング団の一員として出演。白いスーツで変なしゃべり方、無国籍な雰囲気で実に怪しい・・・。

 それにしてもダイヤモンド強盗団の一員若林映子さんがかっこよすぎ!。クールでしたたか、銃弾に倒れる最期の横顔まで実に美しい。この後、「007は二度死ぬ」に出演することになるのだが、ボンド映画に抜擢されるのもこれを観たら納得できるはず。若林映子さんが出てくる場面では怪獣映画を観ていることを忘れてしまう。彼女は強盗団を裏切ってダイヤを独り占めしようとするのだが、思えばダイヤも石炭も同じ炭素であることに変わりはない。それをめぐってだましあったり殺し合ったりする人間たち。この映画は実はそこを皮肉に描きたかったのではなかろうか。





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