■「花と竜」(1962年・日本)
監督=舛田利雄
主演=石原裕次郎 浅丘ルリ子 岩崎加根子 葉山良二
若松出身の作家火野葦平は昨年が没後50年。様々な催しが続いていたが今回はその最後、代表作「花と竜」の映画上映会である。会場となった若松市民会館がほぼいっぱいになるお客さん。僕は午後の回に行ったのだが、最後列には折りたたみ椅子が並べられていた。午前中はもっと多かったとのこと。火野葦平が、また「花と竜」という作品が、若松の人々にいかに愛されているのかを気づかされた。
石炭積出港として栄えた頃、仕事を求めて人々が集まっていた若松を舞台にした原作は、葦平の父金五郎と母マンの生き様を綴ったもの。石炭という新エネルギーが国を支えている時代。石炭に仕事を求めて人々がギラギラしていた時代。何度も映画化されているものだが、僕は今回初めて観た。任侠映画というと、仁義きってひたすら斬る斬る・・・そんな活劇のイメージが強かった。
ところが意外と人間ドラマ重視なのに驚いた。日活が撮った本作は石原裕次郎がとても男気ある金五郎像を演じており、実に魅力的だ。それに基本的に喧嘩は嫌いで、ラストゑびす神社の決闘シーンも重傷を負って終わるくらいだから、基本的にアクションを楽しむ活劇ではない。
それよりも男の生き方、男としての筋の通し方、そこをかっこいい!と楽しむのが吉だろう。その一方で男の馬鹿なところもきちんと描かれている。女性に冷たくできない優しさ、「彫り物は男の紋章」と言われてその気になってしまったり、周囲に認められてちょっと有頂天になってしまったり。この辺りは裕次郎の明るいキャラクターだから描ける部分かもしれない。殴り込みに来ると聞いた金五郎が、ラムネを飲みながら長ドスをたらいでチャプチャプしながら、たった一人で迎え撃とうとする場面が好き。仲間を守ろうとし、自分を貫く姿はかっこいい。
北九州の歴史として、また石炭産業がいかに重要なものだったのか。ロケ地は注意して観たけれど、門司港駅かなー・・・若松南海岸だろうなぁ・・・というのはわかったけど、昔の風景は僕にはちょっと特定しずらかった。あとは北九州にみたてて撮っているように感じられたが。