■「博多っ子純情」(1978年・日本)
監督=曾根中生
主演=光石研 松本ちえこ 小池朝雄 春川ますみ
北九州市黒崎出身の俳優、光石研は数多くの映画やドラマで活躍している。先日、黒崎でデビュー作にして主演作の「博多っ子純情」上映会とトークイベントが開催されたので行ってきた。主演作の映画「あぜ道のダンディ」上映で昨年黒崎を訪れたときも舞台挨拶を見た。様々な経験から語られる撮影の裏側のお話、地元北九州への思いなど興味深く聴かせていただいた。地元だから起こりうる嬉し恥ずかしい声や観客の反応に、照れくさそうにしているのが印象的だった。
さて「博多っ子純情」は長谷川法世のコミックが原作。世代的に僕は読んだことがないのだが、福岡(九州)に住んでいるとローカルCMで目にすることも多い。それだけ地元で愛されてきた作品なんですね。
博多通りもん
うまかっちゃん
光石研扮する六平は中学生。友達との会話はもっぱら性に関することばかり。観ているこっちまでニタニタしてしまいそうな微笑ましさ。ポルノ映画観ようと映画館で追い払われたり、銭湯の湯船の中で暴発したり、観ているこっちまで気恥ずかしくなるような失態の数々。心のどこかで懐かしの性春映画「グローイングアップ」やら「プライベート・レッスン」やら思い出す・・・いや、そういう映画を観ていた頃の自分を思い出す、と言った方が正しいのかも(笑)。そんなバカやってる一方で男気のある六平。お祭りの日に同級生の女の子を不良高校生から守ろうと、すいかを振り回して奮戦する。それがきっかけなのか、その娘にコクられた六平。頬にキスして、とねだられる微笑ましい場面。
曾根中生監督はロマンポルノで活躍していた監督でもある。70年代のことはよくは知らないが(ほんとです)、脇役にも色っぽい映画ゆかりの女優さんたちもちらほら。散髪屋のお姉さんに迫られる場面や、駆け落ちした隣のお姉さんに憧れて妄想する印象的な場面はまさに本領といったところか。父親役の小池朝雄、お母ちゃんの春川ますみなど主人公を見守る大人たちがなんとも温かい。子供の色恋沙汰から始まったトラブルの解決策をみんなで話し合ったり、子供に酒を飲ませてみたり(今の映画じゃ観られない場面かも)。こんなふうに大人に支えられながらみんな大きくなった。
六平の無鉄砲さと正義感。そんな六平をみまもる松本ちえこの存在が心に残る。こんな経験ないけど、この年頃でしか経験できない甘酸っぱさ。クライマックスの福岡城跡の決闘場面。小便ちびりながら歌う祝いめでたに、なーんとも言えぬ不思議な感動を味わった。70年代の邦画、知らないものがいっぱいある。もっと観てみたいな。