Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

2046

2012-11-09 | 映画(な行)

■「2046/2046」(2003年・香港=中国=フランス=ドイツ)

●2005年毎日映画コンクール 外国映画ファン賞
●2005年LA批評家協会賞 美術賞
●2005年NY批評家協会賞 外国映画賞・撮影賞

監督=ウォン・カーウェイ(王家衛)
主演=トニー・レオン コン・リー チャン・ツィイー フェイ・ウォン

※ネタバレあり?かも。ご注意を。

 近未来SFだのなんだと宣伝されたりしているけれど、これは「花様年華」の立派な続編。あれを観ていないとこの映画はちょっと辛い。だからウォン・カーウェイ映画を今まで未体験で、しかも木村拓哉見たさで劇場に訪れた女子諸君は、さぞかしがっかりしたことだろう。僕が行った映画館でも、話半ばで携帯画面があちこちでチラチラし始めた。てめえらまずは最後まできちんと観ろぉ!久しぶりに映画館でむかついた!。

 ウォン・カーウェイの世界を好む者にとって、「2046」はなかなかグッとくる映画だ。「花様年華」を観ていない人には、トニー・レオン扮する主人公は、あれこれ女性に手を出しているただの遊び人のように見えることだろう。実は彼は寂しい男なのだ。かつて愛した人妻の面影を引きずっているが為に、誰か他の女性を深く愛することができない。だからチャン・ツィイーに惚れられても無神経な言動しかとれない。手広くやって楽しんではいるけれど毎年クリスマスイヴは相手を探している始末なのだ。過去にしばられてしまった悲しい男なのだ。そんな彼の心をほんの少し溶かしたのが、家主の娘フェイ・ウォンだった。小説の執筆を手伝う彼女とのやりとりは、前作「花様年華」でマギー・チャンと離婚の切り出し方を練習したあたりを思わせる。いつしか彼女に思いを抱くようになるのだが、彼女はあの日本人を愛している・・・。この場面のトニー・レオンのやさしくも悲しいガラス越しの笑顔が印象的だ。でもそれ以上に映画の中で存在感を見せるのがコン・リー扮する女性ギャンブラー。彼女との恋を通じて、主人公は自分が過去にしばられているのを思い知らされることになる。それにしても女優あっての映画だね。誰もが素晴らしい演技を見せてくれる。話題の近未来の場面はなかなかいい雰囲気を出しているけど、僕は現実社会の人間関係に惹かれた。

 「2046」は主人公が書く小説のタイトルにして、かつて新聞小説を書くために借り、愛した女性との思い出が詰まった部屋のルームナンバー。2046へ行けば何も変わらないから人々はそこをめざそうとする・・・と小説に書いたけれど、トニー・レオン扮する主人公こそが再びそこへ戻りたいのだ。そこは彼の記憶の中の世界。あの穴の中に封じ込めた思い出の世界。それは永遠に知られることはない。故に彼を苦しめるのだ。

 ★

この文章を書いたのは2004年。ウォン・カーウェイ監督作は「恋する惑星」も「マイ・ブルーベリー・ナイト」も大好き。ちょっとおセンチでちょっとお洒落なこういう映画にどっぷり浸るのって素敵な時間。



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花様年華

2012-11-09 | 映画(か行)

■「花様年華/In The Mood For Love」(2000年・香港)

●2000年カンヌ映画祭 男優賞・高等技術院賞
●2000年モントリオール映画祭 作品賞
●2001年セザール賞 外国語映画賞
●2001年香港電影金像奨 主演男優賞・主演女優賞・美術賞・編集賞・衣装デザイン賞

監督=ウォン・カーウェイ(王家衛)
主演=トニー・レオン マギー・チャン レベッカ・パン

 大人の恋は実に切ない。近づきたくても近づけない。一線は守りたいものの、あふれ出る感情を抑えきれるものではない。越えたくても越えられない。近頃読んでいる蓮見重彦総長の著書には「うまいメロドラマは距離感を目に見える形で描くのがうまい」とあった。オーソドックスなれど、本作はその部類に属するのだろうな。隣人という近さと越えがたい一線という遠さ。

 いろんな恋愛映画(特に不倫もの)はあるものの、その恋愛模様に”そんなにうまくいくもんか!”と思う向きもあるだろう。一線を越えることに臆病な一般ピープル(おそらくその立場になれば僕も・・・)には「花様年華」の展開、これが現実かもしれない。僕がこの映画で好きなのはレストランで食事する場面だ。カメラは二人の皿の間を行ったり来たり。「ご主人の好物は?。」「からしは奥さんの好みなのね。」との会話を挟みながら二人の心は高まっていく。「トム・ジョーンズの~」でも食欲が性欲に高まる食事シーンがあった。もちろん「花様年華」ではそんなとこまで行かないが実に印象に残る場面だ。

 難を言えば、シンガポールの場面は判断を観客に委ねたものだろうが、どうも煮え切らない印象が残る。賛否の多いラストのカンボジアの寺院のシーン。何故カンボジアなの?とは思えるけれど、壁の穴にすべての思いを封じ込めるトニー・レオンの姿に、僕は妙に感情移入したんだけど・・・。

 ★

この文章を書いたのは2001年。映画館で観て、この映画の切ない雰囲気に惚れ込んだ。上にも書いたけど、当時読んだ蓮見センセイの評論にあった”恋愛映画と距離感”を初めてきちんと感じられた映画だった。マギー・チャンのチャイナドレスと、トニー・レオンのスーツ姿。ムードに酔える恋愛映画。



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