■「運命の女/Unfaithful」(2002年・アメリカ)
監督=エイドリアン・ライン
出演=リチャード・ギア ダイアン・レイン オリビエ・マルティネス
(注・ネタバレあります)
エイドリアン・ラインが監督、リチャード・ギア、ダイアン・レイン共演と聞いて、80年代組としては黙っていられないでしょう。エイドリアン・ライン監督作といえば、スキャンダラスなイメージがつきまとう。例えば「危険な情事」や「幸福の条件」。しかもそれが”ウリ”でもあった。また「フラッシュダンス」や「ナインハーフ」のように、数々のポップミュージックに支えられた映画でもあった。
今回の「運命の女」は違う。スキャンダラスな物語ではあるけれど、その後の”家族の再生”がきっちり描かれている。いや、むしろ僕には映画後半の二人の葛藤の方がスリリングだった。夫に衝動的な行動を起こすきっかけとなった小道具のスノーボールが、一転して絆を確かめ合うものに変わる・・・その対比。脚本の良さももちろんあるのだけれど、「危険な情事」の頃とは違う人間ドラマがそこにはあった。監督も年とったのだなぁ。でもそういう部分に感慨を抱いてしまう自分もやはり、「危険な情事」の頃とは違う・・・年齢ってヤツですか。そして映画は派手な音楽に頼ることもない。それは少しさみしくはあるけれど。
エイドリアン・ライン映画らしい外観なれど、観客の期待を適度に裏切っている映画。それは俳優にしても然り。リチャード・ギアが”普通の男”を演じているのが上手だ。僕らが知っているリチャード・ギアは、アルマーニ着こなすジゴロだったり、おてんば娘をレディに変える富豪だったり、とにかく”自信に満ちた男”だった。それが家庭人を演じている。顔を真っ赤にくしゃくしゃにして、自分の思いをぶちまける。妻から服を選んでもらって「似合う?」。かっこいい役とは言い難い。でもそれがまた魅力的なんだ。ダイアン・レインの演技もまた素晴らしい。昔からのファンとしてはヌードが見られる嬉しさはあるけれど、それ以上に演技に迫力がある。衝動的にニューヨークに車を走らせるところ、オリビエ・マルティネスとの初めてのセックスでみせるためらいと官能が入り乱れる表情・・・。
僕はライン映画の徹底してフェチなカメラワークが好きだ。今回もオリビエ・マルティネスがアパートでコーヒーをいれる場面、無用?とも思えるやかんのクローズアップ、注ぎ口どアップ。それから印象に残ったのは子役。妙にマセた子供が近頃の映画はよく出てくるのに、すごく子供らしい子供。はしゃぎかたとか、9才だというのに「ママ漏らしちゃった・・・」とか。その後で母ダイアンが「何があってもあなたを愛しているわ!」とか言って抱きしめたりする。物語上での気持ちは十分わかるのだけど、当の子供にとっては「早く着替えさせてくれよ!」ってとこだろうになぁ。うちの子なら怒ってるな(笑)。