Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

007 スカイフォール

2013-01-20 | 映画(た行)

■「007 スカイフォール/Skyfall」(2012年・イギリス=アメリカ)

●2012年ゴールデングローブ賞 主題歌賞
●2012年LA批評家協会賞 撮影賞
●2012年英国アカデミー賞 英国作品賞・音楽賞

監督=サム・メンデス
主演=ダニエル・クレイグ ハビエル・バルデム ジュディ・デンチ レイフ・ファインズ

「007」シリーズ50周年となる第23作「スカイフォール」は、シリーズ最大のヒット作となった。ボンド役に起用されたときは、賛否両論だったダニエル・クレイグも3作目。今でも一部の人々からは"悪役みたい"と言われがち(「ロシアより愛を込めて」のロバート・ショウのイメージが重なるのだろう)。しかしそういう人々って意外と「カジノ・ロワイヤル」以降のボンド映画を観ていない方々がかなりいるものと思われる。食わず嫌いしているのだ。いかにしてジェームズ・ボンドが一人前のダブルオー要員となったかに迫るのが「カジノ・ロワイヤル」と前作「慰めの報酬」だった。愛する女性を失って未練と復讐が心から離れない若きボンド。荒々しさとユーモアを排した作風、そして復讐という私心を超えて任務を全うできるスパイに成長したところまでが前作。2作品をかけた人間ドラマ路線で、ジェームズ・ボンドと名乗るにふさわしい男だと世間に認められたと言っていいだろう。そしてダニエル・クレイグ3作目「スカイフォール」。そろそろ従来の娯楽路線?と思いきや、50周年記念作品が追い求めたのは「ルーツ」だった。

M(ジュディ・デンチ)が関係する過去の事件にまつわる謎をめぐって、MI6が危機に陥る物語。息詰まるノンストップアクションのプレタイトル。観客は一気に引きずり込まれる。ところがMの指示で放たれた弾丸は不幸にもボンドに命中し、彼は水中に落下。アデルが歌う主題歌、水中に広がる血をモチーフにしたタイトルバックは、女性の曲線美と拳銃のデザインで往年のファンを唸らせてくれる。今回の悪役はスペインの名優ハビエル・バルデム。彼の素性を明かすとネタバレになるので控えるが、彼はMI6そしてMへの復讐を企んでいるのだった。職務に復帰したボンドは世界とMを守り抜くことができるのか?ってお話。

イスタンブール、上海、マカオも登場するが主たる舞台はイギリス。ロンドン五輪の年だし、ボンド映画50周年だしイギリスをフィーチャーするのは、「ルーツ」を追う故なのか。「カジノ・ロワイヤル」「慰めの報酬」の内容そのものがダブルオー要員としてのジェームズ・ボンドのルーツではあった。それはボンド映画には本来似つかわしくない成長物語だった。「スカイフォール」はさらに、個人としてのボンドのルーツに迫る。これはイアン・フレミングの原作でもあまり触れられたことのないテーマだと思われる。スコットランドの荒野に建つ古びた建物が故郷として登場し、両親の墓標まで映し出される。ボンドのプライベートは初期に少しだけ描かれたエピソードがあるが、生い立ちにまで迫るのは驚きだ。身寄りのない男性だからスパイとして抜擢したということまで明かされる。僕はスコットランドの荒れ野の風景に立つボンドの姿を見てエミリー・ブロンテの「嵐が丘」が頭をよぎった。愛する人を失って孤独に苦しんでいた少年時代、前作までで若きスパイとしての荒々しい活躍。僕はボンドのルーツは「嵐が丘」のヒースクリフなのではないかと思えた。そんなボンドにとってのMの存在は・・・。人間ドラマ系ボンド映画としては完成度の高い秀作である。

Mが審問会でMI6の存在意義を説く場面も印象的。国と国が対立する冷戦時代にスパイ組織が果たしてきた役割とは確かに違ってきた。今だからこそ未知の敵と対峙しなければならないのはMI6だと訴えるジュディ・デンチは迫力があった。映画のクライマックスのボンドとの信頼関係を伺わせる台詞も泣かせる。往年のファンにとっては、ボンドカーの代表たるアストンマーチン再登場には大感激。毎回新装備をボンドに提供するQが復活したのも嬉しい。ただこれまでのQは発明家のイメージだったが、今回はパソコンヲタク。レイフ・ファインズがレギュラーとして登場することになるのも嬉しいね。ハビエル・バルデムの悪役と言えば「カントリー」だけど僕は未見なので比べられないが、冷酷さといい気味悪さといいシリーズ屈指の存在かも。次作がどうなるのか楽しみ。ダニエル・クレイグになってからの人間ドラマ路線が続くのか、それともM、Q、マネーペニーと役者がそろったところで伝統の娯楽路線に戻るのか?。

スカイフォール Skyfall Best of James Bond 50th Anniversary
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座頭市

2013-01-20 | 映画(さ行)

■「座頭市」(2003年・日本)

●2003年ベネチア映画祭 銀獅子賞(監督賞)
●2003年ブルーリボン賞 助演女優賞

監督=北野武
主演=ビートたけし 浅野忠信 大楠道代

 勝新「座頭市」のイメージをぬぐい去るためにたけしは数々の楽しい仕掛けを用意した。金髪、ミュージカル、コント・・・これを楽しまない手はないぜ。前作「Dolls」が僕には今イチだったからなぁ。僕は冒頭の場面にたけしの”開き直り”を感じた。僕らニッポン人が日々テレビで見慣れている金髪のたけちゃんが座っている。そこにタイトル ☆バーンッ!「座頭市」。今銀幕に映っているこいつが市だ、たけちゃんじゃないぜ。問答無用に観客にそれを押しつける。それでも”たけしじゃん”と思っている観客には、絡んできたヤクザを瞬時に切り捨てて見せる。勝新の市はあんまやってる日常だの、ばくちも女も好きというキャラについての詳細な描写が付き物(というイメージあるなぁ・・・)だけに、僕はこの冒頭にまず惚れた。

 開き直りはまだ続く。ガダルカナル・タカにコントやらせたり、「ひょうきん族」のアダモちゃんを思わせるイカれた若者も出てくるし、小ネタのギャグも挟みながら物語は進んでいく。夏川結衣と浅野忠信のエピソードが薄味なのが残念だけど、インパクトのある脇役が多いだけに仕方ないのかな。たけし映画の音楽といえば久石譲なのだが、今回は鈴木慶一を起用。日常音をパーカッシブに用いるお遊びが印象的。そして圧巻はラストのタップダンス盆踊り。本編観る前はやりすぎだろうと思っていたが、これが実に見事で、観ていてこっちまで興奮させられる。ベネチアでエンドクレジットが始まってから拍手が止まらなかった・・・なんて報道もされていたけど、この場面をみせられたらねぇ、わかります。実は北野監督、ミュージカルやってみたかったのではなかろうか?。「ひょうきん族」のドラマで落ち目の映画監督役やったときに、”ボブ星”(もちろん「オール・ザット・ジャズ」のボブ・フォッシーからきている)と名乗っていたくらいだから。実は「座頭市」も深夜番組でコントにしていたそうだ。

 それにしても黒澤明監督の命日に銀獅子賞をもらうなんて、映画ファンには感慨深いものがある。実際は「娯楽作をきちんと評価したい」という意向を示していた映画祭側に、チャンバラ映画が強烈にアピールしたことは間違いないだろうけどね。
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