■「ロジャー&ミー/Roger & Me」(1989年・アメリカ)
●1989年全米批評家協会賞 ドキュメンタリー映画賞
●1989年NY批評家協会賞 ドキュメンタリー映画賞
●1989年LA批評家協会賞 ドキュメンタリー映画賞
監督=マイケル・ムーア
主演=マイケル・ムーア ロジャー・スミス
2004年話題の人の一人、マイケル・ムーア。アポなし突撃取材がモットーのこの方。礼儀知らずという声もあるけれど。そうでもしないと取材できない、そんな正攻法じゃ敵わない相手に挑んでいる人だから支持があるのも事実。そて、その原点である「ロジャー&ミー」が廉価版DVDでリリースされたので観てみました。故郷であるミシガン州フリントは、GM(ゼネラルモータース)の工場で栄えた町。ところが工場の閉鎖に伴い15万人の人口のうち3万人が失業するということに。監督は憤りと疑問を胸に、巨大企業に戦いを挑む!・・・というドキュメンタリー。
企業城下町が崩壊していく様は考えていた以上だった。犯罪が増加して刑務所を新築し、失業した工員を雇って犯罪を犯した元工員を見張る・・・笑うに笑えない現実、GM会長ロジャー・スミス氏のクリスマススピーチにイヴに家を追い出される人々を重ねる場面、ビーチボーイズの ♪Wouldn't It Be Nice(素敵じゃないか) の使い方・・・監督の題材の選び方と使い方は見慣れたTVのドキュメンタリー番組とは全く違うものだ。利益を追求する企業の行動を”悪”だとは言えない。しかし解雇した工員たちへのケアとして、GMや市がやってきたことは一体なんだ。ブロードウェイ級のショウをみせる劇場を建てて半額で入れます!?そんなことで人々に感謝されるとでも思ったのだろうか?単に憤りだけで撮った映画ではなく、工場閉鎖で揺れる町の人々を追うムーア監督の視線には愛がある。しかし、それ故にオレの町をこんなにしやがって!という監督の気持ちは私的な怨念となって、この映画から第三者的な見方を失わせている原因ともなっているようにも思う。憤りと疑問、それに地方都市で暮らす人々への愛がバランスよく描かれたのが「ボウリング・フォー・コロンバイン」だったのだなぁと改めて思った。
(2004年筆)
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