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お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

サイド・エフェクト

2014-06-22 | 映画(さ行)

■「サイド・エフェクト/The Side Effects」(2013年・アメリカ)

監督=スティーブン・ソダーバーグ
主演=ジュード・ロウ ルーニー・マーラ キャサリン・ゼダ・ジョーンズ チャニング・テイタム

 精神科医バンクスは、夫がインサイダー取引逮捕された後でうつ病を再発した患者エミリーを担当することになった。エミリーは交通事故や自殺未遂を起こし、状況は次第に悪化していく。以前に彼女を診ていた女性精神科医シーバート博士と相談した彼は、エミリーに新薬を処方することを決めた。一見症状は好転したかにみえたが、ある日エミリーは副作用(サイド・エフェクト)と思われる夢遊病になり、夫を刺し殺してしまった。殺人の責任は彼女にあるのか、処方した医師にあるのか。バンクスは事件の真実を探ろうとする・・・。

 スティーブン・ソダーバーグ監督はキャラクターの人物像をしっかり映像の中で語り尽くす人。「オーシャンズ11」みたいな娯楽作品も手掛けるけれど、そもそも「セックスと嘘とビデオテープ」(大傑作)や「トラフィック」に代表されるように、登場人物や真実に観客と共に迫っていく映画を得意とする人だ、と僕は思っている。「サイド・エフェクト」は医療ミスを疑われて窮地に立たされた主人公が、周囲に見放されながらも真実に迫る巻き込まれ型サスペンス。"ヒッチコックぽい"と世間では評されている。ヒッチ先生が得意とした巻き込まれサスペンスに分類はされるだろうけれど、映像や語り口からは、ヒッチコック的なテイストを狙ったとは僕には思えなかった。ヒッチコックの"巻き込まれ"は、"間違えられた男"だったりなりゆきで事件に関係する男が多い。この映画のジュード・ロウみたいに巧妙に"ハメられる"のは「めまい」のジェームズ・スチュワートくらいではなかろうか。敢えて言うなら、病棟の窓にカメラが近づくオープニング、病室の窓からカメラが引いていくエンディングが「サイコ」のオープニングぽい?うーむ。

 その評は抜きにして、医療業界の裏側的な部分はリアルに作り込んである映画のようだ。テクニカルアドバイザーもしっかりした方を据えて、刑務所やMR(医療情報担当者)さんとの会話などに生々しさを追求。主人公が、患者の思いこみで性的関係を疑われる場面にしても、主人公がどんどん窮地に追い込まれていく様子がじわじわと緊張感を高めてくれる。また、劇伴が目立つような音の効果は控えめで全体が淡々としている。ソダーバーグは観客をストーリーに集中させることを狙っているのだろう。

 この映画で何よりも特筆すべきは、患者エミリーを演じたルーニー・マーラだろう。これまでの出演作とは違って、長い髪の暗い印象の役柄。とにかく得体の知れない不気味さを漂わせながら、映画が進むにつれて印象が変わっていく様子は言葉で語るよりも観ていただくのがいちばん。途中で疑いはもてるかもしれないけれど、結末は驚きを与えてくれる。ただ、ソダーバーグは観客を「おおっ」と言わせたいサスペンスを撮りたいんじゃないと思うのね。人を見つめることが彼の持ち味。執念や、人間のがもつ欲望の怖さ、抱えてしまったどうしようもない気持は、時に人生を狂わせる。それは僕らが生きていく日々を狂わせていく副作用のようなものなのだろう。




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