■「ファントム・スレッド/Phantom Thread」(2017年・アメリカ)
●2017年アカデミー賞 衣装デザイン賞
●2017年NY批評家協会賞 脚本賞
●2017年LA批評家協会賞 音楽賞
監督=ポール・トーマス・アンダーソン
主演=ダニエル・ディ・ルイス ヴィッキー・クリープス レスリー・マンヴィル
オートクチュールのドレスを作らせたら並ぶ者はない、と社交界で評価される仕立て屋レイノルズ。
姉と暮らし、常に仕事に没頭して気難しい彼が、ある日レストランでウェイトレスのアルマと出会う。
レイノルズがアルマに惹かれた理由は、素敵な笑顔ではない。
彼女の体型が自分が作りたいドレスに理想的だったからだ。
上流階級の女性たち誰もが彼のドレスに憧れる中で、庶民階級のアルマはレイノルズのミューズとして、
次々に新作を身につけて世間から羨望の眼差しを受けることになる。
しかし、自分のルールと流儀を曲げないレイノルズの生活スタイルと、
二人の時間を楽しみたいと普通に願うアルマの気持ちは常に食い違う。
レイノルズは彼女を本当に必要としているのか、愛しているのか。
思いつめたアルマはある行動に出る。
いやもう、息詰まる愛のドラマ。
レイノルズは好きな仕事がしたいだけの、大きくなったワガママな子供。
物語前半はひたすら彼の激しい言動に耐えるヒロインの姿が描かれる。
しかし、後半彼に必要とされる唯一の存在になりたいアルマの策略で立場が逆転する。
ヒロインの表情が同じ笑顔でも前半後半で全く印象が違う。
マザコン男が悪いだの、女は怖いだのいろんな感想はあるだろうけど、
お互いの偏った愛情こそが悲しきすれ違いの元凶。
人がまばらなパーティ会場で踊る二人のイメージショットが切ない。
アカデミー賞を受賞した衣装の素晴らしさはもちろんこの映画の魅力なのだが、
エンドロールを迎えて一番心に残るのは二人の歪んだ愛のかたち。
まさにラブサスペンスの秀作。
予備知識入れずに観た方がグッとくるだろう。
この映画は例えて言うなら、「レベッカ」のローレンス・オリビエのところに、
「アデルの恋の物語」のイザベル・アジャーニが嫁に来たようなものか。
ヒッチコックとアルマ夫妻を念頭に脚本が書かれたという話もあるとか。
音楽がまた素晴らしく、往年の格調高いクラシック映画を観てるかのような感覚にしてくれる。
ヒッチコックみたいな日常に潜んだサスペンス映画が好きなら、敬遠しないで観ておくべきかと。
うむ。
ポール・トーマス・アンダーソン監督×ダニエル・デイ=ルイス!映画『ファントム・スレッド』予告編(90秒)
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