■「トゥルー・ロマンス/True Romance」(1993年・アメリカ)
監督=トニー・スコット
主演=クリスチャン・スレイター パトリシア・アークエット デニス・ホッパー クリストファー・ウォーケン
クエンティン・タランティーノが脚本を手がけ、職人監督トニー・スコットがメガホンを取ったヒット作。
今改めて観るとうまい具合に微妙なバランスがとてれる映画だと思う。
メジャー作にもB級作にも向けられた映画愛とこだわりのタランティーノ色と、
一級のエンターテイメントとしての魅せ方を心得たスコット色。
その相容れないテイスト。結末がハッピーエンドに書き換えられ、
脚本に書き留められたタランティーノおすすめ挿入歌のセレクトは、
レーベル等大人の事情もあって一部を除いて実現しなかった、と聞く。
それでも台詞の随所に引用される数々の映画や役者の名前たち、
過剰なバイオレンス描写、後にタランティーノ作品に出演することになる名優たちのキャスティング、
クリストファー・ウォーケンとデニス・ホッパーの無駄に長くて偏見に満ちたお喋りは、
まさにタランティーノ映画のテイスト。
それらは僕ら映画ファンを「そうだよ!それ!」と嬉しくさせる。
車をカッコよく操れた時に
「ブリットみたいだ!」
うーん、それ言ってみたい!
ほとんどの人に理解されないかもしれないけどさww
お話自体はヲタ男子の妄想と願望の炸裂。
アラバマとの出会いも、彼女がサニー千葉の映画を気に入ってくれるのも、
ヴァル・キルマー演ずるエルビスの亡霊に人生指南されるのも
(ウディ・アレン好きの僕は「ボギー、俺も男だ!」を連想してしまう)
都合がいいと言えば都合がいい。
だけどこのお話が、最初にタランティーノが意図したニューシネマのようなバッドエンドで製作されていたら、
こんな人気作になり得ただろうか。
ともすればクドくなる暴力描写や三つ巴の銃撃戦が、
スコット監督らしいスピーディで巧みな演出によって受け入れやすくなっているのだ。
以下、思いつき。
トニー・スコット監督と実の兄リドリー・スコットは、偶然なのか同時期に犯罪逃避行映画を撮っている。
兄の「テルマ&ルイーズ」は70年代アメリカンニューシネマ的なバッドエンド。
そして弟が撮ったこの「トゥルーロマンス」。
結末が対照的なだけに、作風や好みの違いを深読みするとこともできるかも。
どちらにもブラピが出演しているというのも面白い。