◾️「イエスタデイ/Yesterday」(2019年・イギリス)
監督=ダニー・ボイル
主演=ヒメーシュ・バテル リリー・ジェームズ ケイト・マッキノン アナ・デ・アルマス エド・シーラン
監督=ダニー・ボイル
主演=ヒメーシュ・バテル リリー・ジェームズ ケイト・マッキノン アナ・デ・アルマス エド・シーラン
主人公ジャックは自作の曲を書いては細々とライブ活動を続けていた。幼なじみのエリーがマネージャーとして支えてくれるが、彼は半ば夢を諦めかけていた。ある日、全世界で12秒間電力が失われるブラックアウトが起きた。その間に交通事故に遭ったジャック。昏睡から目覚めた彼は、次第に世界の異変に気付く。彼以外の誰もビートルズを知らないのだ。やがて彼はビートルズの楽曲を自作として演奏することを思いつく…。
ビートルズに思い入れが強い人はたくさんいる。僕もその一人。幼稚園の頃、訳もわからず家にあった日本盤Meet The Beatlesをひたすら聴き続けたのがそもそもの始まり。中学時代に友人からポール・マッカートニー&ウイングスのLPを譲り受け、Let It Beが弾きたくてピアノを自己流で始めた。高校時代には、ポールのバイオリンベースをわざと左手で弾く強者ベーシストや「ビートルズを聴かないヤツは非国民」と豪語するクラスメートの影響で、さらにディープに聴くことになる。大学時代はCome Togetherを演奏すると言い出した後輩バンドに、「ビリー・プレストンを弾ける鍵盤弾きはこのサークルじゃ俺しかいねえぜ」と言って強引に参加した(笑)。あ、自分の話はこれくらいに。
今回この映画について聞いた時、コミック「僕はビートルズ」を思い浮かべた方も多かろう。ビートルズ誕生前の世界に行って彼らの曲を演奏するなんて許せん!「戦国自衛隊」みたいに皆殺しになればいい、とおっしゃった著名人もいる。映画「イエスタデイ」の話を聞いて、僕もほぼ同じことを思った。観る前はね。
映画が始まって、次々に流れるビートルズナンバーは確かに楽しい。脚本書きながら次に何を流そう?とリチャード・カーティス先生が考えている様子を思うだけで楽しい。When I'm 64の話題が通じない場面、Back In The U.S.S.R.を歌うライブ、じつは盗作という罪の意識と重圧が迫り始める場面のCarry That Weight、レコーディング場面のI Saw Her Standing There、成功と葛藤と恋心が狂おしいまでにも高まって絶叫するHelp!。楽しさとは裏腹にだんだんと切なさが見ている僕らにも募っていく。あー、このままだとジャックはマジで「戦国自衛隊」だよ。
ところが、ここからがリチャード・カーティス先生のうまさ。二段構えの感涙ポイントを経て、「大事なのは嘘をつかないことと、愛してるって伝えることだ」のひと言を聞いたジャックは決心する。この展開ズルい!でも何かが失われたパラレルワールドの話なんだもの、逆にこれはアリでしょ。いやアリです。そして怒涛のクライマックスへ。ビートルズの偉大さを、こんなにストレートに表現されたら僕らは黙ってうなづくしかない。
リリー・ジェームズの好助演。アーティストの意向を無視する音楽ビジネスの可笑しさ。でも今この時代にビートルズがいたら、こんな売られ方してたのかも…と思うとゾッとする。こういう映画が製作されることが、若い世代がビートルズに触れる機会になってくれたら嬉しい。黙っていたら音楽は忘れられていく。既にロックってジャンルは過去のものになりかけている。誰かのカバーでもタイアップでもいい。語り継ぐことの大切さを改めて思う。話題になったハートのStairway To HeavenでZepを、桑田佳祐のカバーでDeep PurpleやCCRを聴くようになった人もいるだろう。ビートルズも「なんでも鑑定団」でHelp!を毎週聴くだけじゃ足りないよ。
リチャード・カーティスが監督した「パレイーツロック」を愛する僕としては、大満足でございました。「ジョーカー」でどんよりしていた気分に、最高の口直しでございました。
ビートルズに思い入れが強い人はたくさんいる。僕もその一人。幼稚園の頃、訳もわからず家にあった日本盤Meet The Beatlesをひたすら聴き続けたのがそもそもの始まり。中学時代に友人からポール・マッカートニー&ウイングスのLPを譲り受け、Let It Beが弾きたくてピアノを自己流で始めた。高校時代には、ポールのバイオリンベースをわざと左手で弾く強者ベーシストや「ビートルズを聴かないヤツは非国民」と豪語するクラスメートの影響で、さらにディープに聴くことになる。大学時代はCome Togetherを演奏すると言い出した後輩バンドに、「ビリー・プレストンを弾ける鍵盤弾きはこのサークルじゃ俺しかいねえぜ」と言って強引に参加した(笑)。あ、自分の話はこれくらいに。
今回この映画について聞いた時、コミック「僕はビートルズ」を思い浮かべた方も多かろう。ビートルズ誕生前の世界に行って彼らの曲を演奏するなんて許せん!「戦国自衛隊」みたいに皆殺しになればいい、とおっしゃった著名人もいる。映画「イエスタデイ」の話を聞いて、僕もほぼ同じことを思った。観る前はね。
映画が始まって、次々に流れるビートルズナンバーは確かに楽しい。脚本書きながら次に何を流そう?とリチャード・カーティス先生が考えている様子を思うだけで楽しい。When I'm 64の話題が通じない場面、Back In The U.S.S.R.を歌うライブ、じつは盗作という罪の意識と重圧が迫り始める場面のCarry That Weight、レコーディング場面のI Saw Her Standing There、成功と葛藤と恋心が狂おしいまでにも高まって絶叫するHelp!。楽しさとは裏腹にだんだんと切なさが見ている僕らにも募っていく。あー、このままだとジャックはマジで「戦国自衛隊」だよ。
ところが、ここからがリチャード・カーティス先生のうまさ。二段構えの感涙ポイントを経て、「大事なのは嘘をつかないことと、愛してるって伝えることだ」のひと言を聞いたジャックは決心する。この展開ズルい!でも何かが失われたパラレルワールドの話なんだもの、逆にこれはアリでしょ。いやアリです。そして怒涛のクライマックスへ。ビートルズの偉大さを、こんなにストレートに表現されたら僕らは黙ってうなづくしかない。
リリー・ジェームズの好助演。アーティストの意向を無視する音楽ビジネスの可笑しさ。でも今この時代にビートルズがいたら、こんな売られ方してたのかも…と思うとゾッとする。こういう映画が製作されることが、若い世代がビートルズに触れる機会になってくれたら嬉しい。黙っていたら音楽は忘れられていく。既にロックってジャンルは過去のものになりかけている。誰かのカバーでもタイアップでもいい。語り継ぐことの大切さを改めて思う。話題になったハートのStairway To HeavenでZepを、桑田佳祐のカバーでDeep PurpleやCCRを聴くようになった人もいるだろう。ビートルズも「なんでも鑑定団」でHelp!を毎週聴くだけじゃ足りないよ。
リチャード・カーティスが監督した「パレイーツロック」を愛する僕としては、大満足でございました。「ジョーカー」でどんよりしていた気分に、最高の口直しでございました。
イエスタデイ(オリジナル・サウンドトラック) | |
ダニエル・ペンバートン,ジョン・レノン,ポール・マッカートニー,アーデム・イルハン | |
ユニバーサル ミュージック |