◼️「狂った果実」(1956年・日本)
監督=中平康
主演=石原裕次郎 北原三枝 津川雅彦 岡田真澄
裕次郎の主演映画なんて親世代が観るもんさー、とこれまで見向きもしなかったのだが、日本映画クラシックの知識が弱いことを近頃感じたので、あれこれ観ようという気になった。フランソワ・トリュフォーがこの映画を絶賛したという話を聞き、「なんぼのもんじゃい」(「極妻」の世良公則風に読んでね)と思いつつ挑んでみたのだ。…反省 <(_ _)>。わたくし、甘く見ておりました。
富裕層の坊っちゃまたちのチャラチャラした様子がまずはしばらく続く。兄夏久(石原裕次郎)とその友人たちに時々付き合いながらも、弟春次(津川雅彦)は馴染めずにいた。「兄貴たちみたいなのを太陽族って言うんだ」と言って距離を置こうとする。兄弟はある日美しい女性恵梨(北原三枝)と出会う。女性に積極的でなかった春次が恵梨をパーティに誘ったことで、夏久と友人たちは驚きを隠せなかった。ある晩、夏久はナイトクラブで中年男性と踊る恵梨の姿を見かけて、声をかける。そこから兄弟と恵梨の三角関係が始まり、いつしか夏久は恵梨に強い思いを抱くようになっていく…。
古い日本映画は台詞が聞き取りにくいことがあるから集中力が必要になる。映画が始まってしばらくは夏久と友人たちの早口なやりとりにやっとついていく感じだったのが、物語が進むにつれて目が離せない緊張感に支配されていく。恵梨との関係を明かさない夏久、春次に素性を明かさない恵梨、二人の間で何も知らない春次。その緊張感を高めるのが編集だ。二人が会話するシーンは話す人物だけで画面が構成されて、常にカットが変わる。カメラ据えっぱなしで全体を捉えるのは3人以上の場面だけで、二人が向き合って喋る場面を舞台劇のようには決して写さない。このテンポに観ている側は乗せられていく。そしてカメラは彼らの表情を追い続けるから黙っている場面からも、感情がジワジワとにじみ出てくる。確かにヌーヴェルヴァーグ時代のフランス映画みたいだ。親世代が観ていたチャラい青春歌謡映画だと誤解していた自分を恥じる。そして衝撃のラスト。
「新しい髪型いいだろ?凄みがあるだろ?」
と言っても「お前に凄みなんてねえよ。」と兄にあしらわれていた春次がみせる、クライマックスの凄みある形相。「10代でしたかった恋愛を春次さんとやってるだけ」と言う恵梨も罪作りなファム・ファタールだが、若くして外国人に嫁がされた彼女なりの事情があるのだろうな。そして常にギラギラした夏久の視線や言葉。兄が女性を巡って弟に嫉妬する。脚本の石原慎太郎も、弟石原裕次郎のカッコよさに嫉妬したからこそ、こんな結末にしたのかもしれない。岡田真澄の異様なカッコよさ、鎌倉や逗子の風景と見どころはたくさん。わたくし、甘くみておりました。
富裕層の坊っちゃまたちのチャラチャラした様子がまずはしばらく続く。兄夏久(石原裕次郎)とその友人たちに時々付き合いながらも、弟春次(津川雅彦)は馴染めずにいた。「兄貴たちみたいなのを太陽族って言うんだ」と言って距離を置こうとする。兄弟はある日美しい女性恵梨(北原三枝)と出会う。女性に積極的でなかった春次が恵梨をパーティに誘ったことで、夏久と友人たちは驚きを隠せなかった。ある晩、夏久はナイトクラブで中年男性と踊る恵梨の姿を見かけて、声をかける。そこから兄弟と恵梨の三角関係が始まり、いつしか夏久は恵梨に強い思いを抱くようになっていく…。
古い日本映画は台詞が聞き取りにくいことがあるから集中力が必要になる。映画が始まってしばらくは夏久と友人たちの早口なやりとりにやっとついていく感じだったのが、物語が進むにつれて目が離せない緊張感に支配されていく。恵梨との関係を明かさない夏久、春次に素性を明かさない恵梨、二人の間で何も知らない春次。その緊張感を高めるのが編集だ。二人が会話するシーンは話す人物だけで画面が構成されて、常にカットが変わる。カメラ据えっぱなしで全体を捉えるのは3人以上の場面だけで、二人が向き合って喋る場面を舞台劇のようには決して写さない。このテンポに観ている側は乗せられていく。そしてカメラは彼らの表情を追い続けるから黙っている場面からも、感情がジワジワとにじみ出てくる。確かにヌーヴェルヴァーグ時代のフランス映画みたいだ。親世代が観ていたチャラい青春歌謡映画だと誤解していた自分を恥じる。そして衝撃のラスト。
「新しい髪型いいだろ?凄みがあるだろ?」
と言っても「お前に凄みなんてねえよ。」と兄にあしらわれていた春次がみせる、クライマックスの凄みある形相。「10代でしたかった恋愛を春次さんとやってるだけ」と言う恵梨も罪作りなファム・ファタールだが、若くして外国人に嫁がされた彼女なりの事情があるのだろうな。そして常にギラギラした夏久の視線や言葉。兄が女性を巡って弟に嫉妬する。脚本の石原慎太郎も、弟石原裕次郎のカッコよさに嫉妬したからこそ、こんな結末にしたのかもしれない。岡田真澄の異様なカッコよさ、鎌倉や逗子の風景と見どころはたくさん。わたくし、甘くみておりました。
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