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キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

モーガン夫人の秘密

2020-01-19 | 映画(ま行)

◾️「モーガン夫人の秘密/The Aftermath」(2019年・アメリカ=イギリス)

監督=ジェームズ・ケント
主演=キーラ・ナイトレイ ジェイソン・クラーク アレクサンダー・スカルスガルト

第二次大戦後のドイツ。ハンブルグに赴任するイギリス軍モーガン大佐のために、建築家ルバートの屋敷が接収され、大佐の妻レイチェルがイギリスからやってくる。戦後処理の仕事をする大佐は、破壊された街に暮らす人々の現実を日々見ており、屋敷の持ち主である建築家父娘にこのまま一緒に暮らさないかと持ちかける。人間関係をうまく築けないレイチェル。彼女はロンドン空襲で亡くした息子への悲しみから立ち直れずにおり、忙しい夫はその気持ちに寄り添ってくれなかったのだ。そしてルバートも空襲で妻を亡くしていた。次第に心を通わす二人。一方、街には腕に「88」の文字が刻まれたドイツ人の若者による事件が相次いでいた。

戦争さえなければ起こらなかった出来事。戦争さえなければ出会うこともなかった男と女。不倫もの、いやこの言葉は嫌い。「既婚男女の恋」がテーマで世間で評価されない映画は、その多くが燃え上がるまでは丁寧なのに、映画後半グダグダになっている。残念ながらこの「モーガン夫人の秘密」もその例のひとつになっちゃうのかな。

分割統治された敗戦国の現実や、ナチスによって殺人の道具にされる少年たちなど、戦争がもたらす悲劇が描かれているのは、とても意義あることだと思う。だけどこの映画、男と女の話と戦争の悲劇の、どちらにも中途半端な印象。レイチェルとルバートが抱き合う場面にしても裸のカットは無駄と思えたし(ヌードはボディダブルじゃない?)、戦争の悲劇をうんぬん訴えたいなら建築家の娘フリーダと「88」少年の関係がもっと出てきてもいい。頑張ってるけど、あと一歩響かない。

しかしながら素敵な見どころもある。レイチェルとフリーダがピアノの連弾で「月の光」を弾く場面の美しさ、キーラ・ナイトレイは出てくるたびに衣装が違って実に魅力的。キーラ・ナイトレイ目当てで観るならオススメ。ラストは納得いかないが、その前に夫モーガン大佐が言う「お前はオレほ宝物だ」ってひと言はグッとくる。ともかく、何よりの罪はこの映画が、レンタル店で「エロティック」の棚に並んでることと、原題「余波」を無視した邦題があまりにもひどいこと。

(2020年1月)

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