◼️「海がきこえる」(1993年・日本)
監督=望月智充
声の出演=飛田展男 坂本洋子 関俊彦 荒木香恵
もともとはテレビ特番のために製作されたスタジオジブリ作品。ファンタジーも冒険もなく、尺も短く、しかも未成年の飲酒喫煙シーンを含むので地上波放送には不向きなのだろう。1993年の初放送以来なかなかテレビで観る機会がなかったが、2011年に金曜ロードショーが「ゲド戦記」と抱き合わせ4時間枠で放送。地上波での放送はそれっきりである。その録画を今回改めて鑑賞。
宮崎駿も高畑勲も関係していない、当時のジブリ若手だけで製作された本作。初めて観た時は他のジブリ作品とのギャップを感じて、どうもピンとこなかった。今改めて観ると、社会や親世代に対する苛立ち、行き場のないモヤモヤした気持ちや、高校生から大学生になって広がる視野といった、青春映画らしい感情の動きがジブリアニメらしい繊細な仕事で描かれていることに気付かされる。
東京から時期外れに編入してきた里伽子。主人公杜崎拓は親友の松野豊が彼女に好意を抱いていることに気づいていた。周囲とうまく馴染めない彼女の行動に巻き込まれる拓。彼のまっすぐな性格と里伽子は衝突を繰り返す。大学生になって最初の地元での同窓会。拓は東京から帰省して参加したが、里伽子の姿はなかった。彼女は「会いたい人がいるから」と東京にいると知らされる。
拓と松野が仲良くなるきっかけとなる、修学旅行中止をめぐるエピソードが好き。冷静に先まで見てる松野と、感情が先でうまく言葉で表現できない拓。性格の違いもここでうまく示されてる。ガンダム で言うと「そんな大人修正してやる!」みたいな勢い。あ、声優同じ人やったw。
同窓会での会話に、その年頃の生々しい気持ちの動きが感じられてキュンとくる。
「世界が狭かったのよ」
「自分のことがいちばんわかってなかった」
そんな周囲の言葉で自分の気持ちに気付かされる、いや自分の気持ちを確信する主人公。爽やかな無言のラストシーン。二人はこれからどんな風景を一緒に見ることになるのだろう。
中坊が求婚してやったぁーとか言ってる「耳をすませば」よりも好き。こんな話に胸がキュンとくる自分はまだイケてるのだ、と勝手に思うおっさんである。そんな僕に友人は「高校時代に何か心残りな忘れものがあんじゃないの?」と言う。そうかもしれないな🤔