Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

フラッシュダンス -80's Movie Hits ! -

2012-11-15 | 80's Movie Hits !

■「フラッシュダンス/Flashdance」(1983年・アメリカ)

監督=エイドリアン・ライン
主演=ジェニファー・ビールス マイケル・ヌーリー



 80年代は数々の映画主題歌がヒットチャートを席巻した。その中でも80年代を代表するサントラといえばやはり「フラッシュダンス」。僕が最も夢中になったのも、やはりこれかな。高校時代、映画熱も高まり、音楽に対する興味もどんどん膨らんでいた時期。そんなときにこの映画に出会えたのは本当に幸運だったと思う。新人ジェニファー・ビールスに過剰に演技をさせまいと、エイドリアン・ライン監督は短いカットをつないで画面を構成した。それは実にテンポのよいものとなり、MTVを見ているかのような気にさせる。そして、それらのシーンを飾った楽曲は実に魅力的なものだった。音楽は80年代の映画音楽を数多く手がけたジョルジオ・モロダーが担当(プロデュースにはフィル・ラモーンも参加)。

 名門バレエスクールへの入学、女性としての幸せをつかむことを成し遂げる主人公。「ロッキー」のようなアメリカンドリームをつかんだ映画、とは言えない。この映画を観ていて僕らがスカッとするのは、音楽の楽しさだけでなく主人公がささやかな成功を収めるラストにある。溶接工として健気に生きる女の子が、名門バレエ団のお堅い人々に自分の才能を認めさせる場面。”ワーキングクラスの復讐”とも言うべきこのラストの感動が、僕らに夢を与えてくれるのだ。そして、エイドリアン・ライン監督は、この映画以後も快進撃が続く。ジェニファー・ビールスはその後目立った活躍はなくなってくる。しかし、「フラッシュダンス」での彼女の輝きは、今でも僕らの胸を熱くしてくれるんだ。 

 ブームタウンラッツのボブ・ゲルドフが出演をオファーされていたり、「ザ・フライ」のデビッド・クローネンバーグ監督にオファーがいったこともあるそうな。また、主演女優の最終選考にはデミ・ムーアの名もあったらしい。またアレックス役のオーディションには、「ダーティ・ダンシング」のジェニファー・グレイも参加していた。もし実現していたらどんな映画になっていたやら。

 フォロアーにも大きな影響を与えたこの映画。「チャーリーズ・エンジェル/フルスロットル」や「シュレック2」など数々のパロディもある。これもヒット作故のこと。また、ジェニファー・ロペスがこの映画の熱烈なファンで、♪I'm GladのPVは「フラッシュダンス」の見事なパロディとなっている。映画会社はこのPVを見てリメイクを検討した?とも伝えられている。
I'm Glad
写真はジェニファー・ロペス♪I'm Gradのジャケット。そっくりでしょ?。

 また、失業した男たちが再起を賭けてストリップをやる傑作コメディ「フルモンティ」の中で、このダンスをやるゼ!と皆がビデオで観るのが、「フラッシュダンス」。金属加工で有名な都市シェフィールドが舞台だけに、「(ジェニファー・ビールスの)あの溶接のやり方おかしいゾ」なんて台詞が出てきて実に楽しかった。「フルモンティ」のサントラにもアイリーン・キャラの主題歌が収録されている。

さて、それでは「フラッシュダンス」の本編で流れた順に楽曲解説。
 ★

1. Flashdance~What A Feeling/Irene Cara

 主人公アレックスが自転車に乗って溶接工として働く工場へと向かうオープニング。夢に向かって頑張っているヒロインが、夜明けの町を走るタイトルバックに主題歌が流れる。この主題歌 ♪Flashdance ~ What A Feeling を歌うのはアイリーン・キャラ。この曲は、ビルボードで6週に渡り1位を獲得し、彼女の代表作となった。音楽を聴くこと、リズムに体をまかせることの喜びが、この曲から溢れてくる。そんな躍動感が多くの人の心をも踊らせた。作曲はもちろんモロダー、作詞はアイリーン・キャラとモロダー一家のドラマー、キース・フォーシーが手がけている。アイリーン・キャラはレコーディングに向かう車の中で、この曲の詞を書いたとか。

 この曲にあわせて主人公が臨むクライマックスのオーディションシーンは、何度みても快感だ。お堅いバレエ学校の先生方が足でリズムを刻む姿に、やったゼ!と思った人は多かったことだろう。日本では麻倉未稀がカヴァーして大映ドラマ「スチュワーデス物語」の主題歌として使われた。

 ブロンクス生まれで、映画の当時は24歳。しかし既にショウビズ界では15年のキャリアを持っていた。父も兄もミュージシャンである音楽一家に育った彼女は、5歳でピアノを弾いていた。ダンス、歌に幼い頃からレッスンを受けていた。8歳でブロードウェイの舞台を踏み、10歳でサミー・デイビス・ジュニアやルイ・アームストロング、スティービー・ワンダーらの舞台に歌手として出演もした。TV「刑事コジャック」にも出演していた。映画には15歳でデビュー。80年の「フェーム」では主演、主題歌も歌い、オスカーを獲得した。


2. He's A Dream/Shandi

 映画が始まって間もなく、舞台は主人公アレックスが踊る酒場へ。昼間は溶接工として働き、夜はダンサーとして舞台に立つ。ギターのリフにささやくような女性のヴォーカルが重なる音楽。舞台では椅子を相手にシルエットが踊る。そして水を浴びたダンサーは、それまでとは違ってダンスも歌も激しく・・・。強く印象に残るこの場面、これでヒロインにイカれてしまったのは、客席で水を浴びた人々や社長さんだけじゃなかった。

 ♪He's A Dream を歌うシャンディは、マイアミ出身の女性シンガー。CDのライナーによると、彼女はプロデューサーであるマイク・チャップマンの秘蔵っ子。80年にアルバム「Shandi」を発表している。♪He's A Dreamで聴く彼女の歌声は、パンチも効いていながら、一方で実にセクシー。他の曲を聴いたことがないのが残念だ。日本向けにCFソングを歌ったこともあるとか。マイク・チャップマンと言えば、スージー・クアトロやブロンディ、ザ・ナックのプロデューサーとして知られている。パット・ベネターのファーストアルバムもこの人のプロデュースだった。IMDbで検索したら「美少女戦士セーラームーン」TVシリーズのアメリカ版サントラに、彼女の名前を発見(ちなみにこのサントラ、ジェニファー・ラブ・ヒューイットの名前もクレジットされていた)。


3. Maniac/Michael Sembello

 アレックスが部屋でダンスの練習をする場面。カーリーヘアから汗を飛び散らせて踊る彼女のバックに流れるのが、この映画もう一つのメガヒットとなった ♪Maniac だ。この曲を聴くと、あの場面の躍動感を思い出す人も多いのでは。♪Flashdance に続き、全米No.1を獲得した。センベロ本人は、この曲がホラー映画で使われることを想定していたらしいが、プロデューサーのフィル・ラモーンに気に入られ「フラッシュダンス」サントラ収録となった。現在も新作をリリースしており、2003年のセンベロのアルバム「The Lost Years」には、♪Maniac のニュー・ヴァージョンも収められている。

 他にビッグヒットに恵まれなかったため、80年代一発屋の代名詞のように言われもするが、セッションギタリストとして数多くのアーティストの作品に参加したり、ソングライターとしても手腕を発揮する才人だ。17歳でスティービー・ワンダーのバンドにギタリストとして参加し、以後ドナ・サマーやジョージ・デューク、デビッド・サンボーンなどの作品にも参加している。特にソングライターとしてスティービー・ワンダーと共作したアルバムはグラミー賞も獲得している。ソロ作品は、AOR好きな音楽ファンに今も愛されている。再評価が望まれるミュージシャンだ。久保田利伸とは、98年のプロジェクトを通じて共演している。


4. I Love Rock N' Roll/Joan Jett & The Blackhearts

 アレックスがダンサー仲間とジムに行く場面。「彼から電話がないの!」と泣きそうな顔のシンシア・ローズ。彼女を励ましながらエクササイズに励む。そのバックに流れるハードなギターのリフ。それがジョーン・ジェット&ブラックハーツの ♪I Love Rock N' Roll。サントラには未収録だが、印象に残る使われ方だ。

 ジョーン・ジェットは元ランナウェイズ。ランナウェイズは、70年代のガールズ・ロックバンドで、ジョーン・ジェットは、そのヴォーカル兼ギターを担当していた。ランナウェイズ解散後、81年に自身のバンド、ザ・ブラックハーツを率いてソロデビュー。そして82年に、この ♪I Love Rock N' Roll が全米No.1の大ヒットとなるのだ。87年には映画「愛と栄光への日々」で、マイケル・J・フォックスの姉役で出演した。80年代は他にもヒット曲を放っている。最近はブロードウェイの舞台で、あの「ロッキー・ホラー・ショー」に出演。また、女性に対する暴力終結のための活動も行っている。


5. It's Just Begun/Jimmy Castor Bunch

 ジムの帰りにアレックスは、ストリートダンスをする人々を眺める。ブレイクダンスをする二人組ダンサー、傘を片手にムーンウォークを見せる男性、そして背中でスピンする男性。ラストのオーディション場面で背中スピンをみせるアレックスだが、この場面はその伏線とも言える。彼女はストリートダンスからもヒントを得て彼女だけのダンスを編み出すことになるのだ。

 「フラッシュダンス」はダンスの様々な分野に理解を示す映画だ。この場面はストリートダンスやヒップホップが世界で広まるきっかけになったとも言われる。ダンスを披露するのはロックスティデイクルー。わずか数分ではあるのだが、影響を受けた人は少なくない。その場面に流れているのが、70年代のファンクナンバー、ジミー・キャスター・バンチの ♪It's Just Begun。ヒップホップダンスには定番とも言える楽曲。こちらもサントラ未収録曲。


6. Manhunt/Karen Kamon

 アレックスが踊る店のコック、リッチーはコメディアン志望。久々に店のステージに上る彼はビビっている。客にののしられるが、開き直って放った言葉が大ウケとなり、彼は上機嫌でステージを後にする。彼が紹介して次にステージに現れるのが、シンシア・ローズ扮するティナ。彼女がパワフルに踊るこのナンバーが、カレン・カモンが歌う♪Manhunt だ。カレン・カモンは日系アメリカ人のシンガー。この映画の音楽プロデューサー、フィル・ラモーン夫人でもある。夫のプロデュースで2枚のアルバムを発表しているそうだ。

 ジェニファー・ビールスのダンスシーンはほとんどが吹き替え(一部男性も踊っている)なのだが、シンシア・ローズのダンスは本物の迫力。それもそのはず、シンシア・ローズはそもそもがダンサー。TOTOの名曲「ロザーナ」のPVで踊っているのは他ならぬ彼女。出演した映画には「ダーティ・ダンシング」や「ステイン・アライブ」などダンス映画が並ぶ。ダンスだけでない。彼女は、80年代に ♪Obsession などのヒットを放った男女ツインヴォーカルのバンド、アニモーションのヴォーカルでもあった。彼女は、後にリチャード・マークスの妻となる。ちなみに、リチャード・マークスのヒット曲 ♪Right Here Waiting は、シンシアへのラブレターに曲をつけたものなんだとか。


7. Love Theme From Flashdance / Helen St. John

 店を出たアレックスとリッチーは、ジョニー・Cに絡まれる。そこに若き社長ニックが現れる。会話からするとジョニー・Cとは旧知?。「送るよ」というニックに、アレックスは「自転車で帰るから大丈夫」という。ニックは黙って車で後を追い、ヘッドライトで照らす。無言のやさしさを感じる場面だ。

 そのバックに静かに流れたピアノのアルペジオが印象的なインストロメンタル。この映画の愛のテーマである。ピアノを奏でるのは、イタリア出身の女性ピアニスト、ヘレン・セント・ジョン。ジョルジオ・モロダーがこの時期プロデュースを担当していたアーティストで、ソロ・アルバムも発表している。1984年のアルバム「Take My Passion」には、♪Love Theme From Flashdance だけでなく、ジョルジオ・モロダーが音楽を手がけた「スーパーマンlll 電子の要塞」の愛のテーマも収録している。モロダー一家の、ハロルド・フォルターマイヤーやキース・フォーシーも参加したアルバムとなっている。

8. Imagination ♪Gloria/Laura Branigan

 主人公アレックスの友人ジーニーがフィギュアスケートの試合に臨む場面。彼女が選曲したのがローラ・ブラニガンの代表曲 ♪Gloria だった。79年のイタリアのヒット曲をカバーしたもので、82年の年末から翌年にかけて全米2位の大ヒットとなり、グラミー賞の候補にもなった。既成曲であり「フラッシュダンス」のサントラには未収録であるが、パンチの効いた曲調から強い印象が残る。思えばローラ・ブラニガンは選曲センスがいいアーティストだった。特にヨーロッパの作家陣による美しいメロディを持つ曲を、アメリカ人向けに(=万人向け)にアレンジすることを得意としていた。また彼女の初期のヒット曲 ♪Solitaire もフランスの作家による曲だが、英作詞は今や「アルマゲドン」のあの曲やらで有名なダイアン・ウォーレン。ウォーレンにとっては初のヒット曲となった。

 またローラ・ブラニガンの持ち歌には後に他のアーティストによってカバーされたものも多い。例えば ♪I Found Someone はシェールがカバーしているし、セリーヌ・ディオンのカバーが有名な ♪Power Of Love (オリジナルはジェニファー・ラッシュ)もいち早く歌っている。

 「フラッシュダンス」で使われたもう1曲 ♪Imagination も松田聖子がカバーしている。アレックスが白塗りの顔で踊るダンスシーン、そしてエンドクレジットで♪What A Feeling と ♪Maniac に挟まれて流れる。プロデュースはフィル・ラモーン。使われているダンスシーンがほとんどMTV状態なので余計に印象に残る。この曲の作詞は ♪Maniac のマイケル・センベロ。ローラ・ブラニガンは他にも ♪Self Control (PVが忘れられない) ♪Lucky One (東京音楽祭の勇姿を思い出す人もいるかな) などのヒットがある。90年代にはミュージカルでも活躍したそうだ。80年代初めには「白バイ野郎ジョン&パンチ」にもゲスト出演したこともあるとか。惜しくも2004年8月脳動脈瘤のため永眠。


9. Lady, Lady, Lady / Joe Esposito

 ジーニーのスケートの試合があった夜。アレックスとニックは結ばれる。アルバムジャケットにも使われた、ぶかぶかのTシャツ姿になったアレックス。ブラジャーを外す場面にはドキドキしたよねぇ!(笑)。「目を閉じると音楽が見える」って名台詞が出てくるのもこの場面。一夜明けて、ニックは職場に遅刻。二人が一緒に過ごす場面のバックに、ジョー・エスポジトが歌う ♪Lady, Lady, Lady が流れる。哀愁が漂い、心に染みるバラード。このサントラで僕が特に好きな曲でもある。アレックスはニックに心を開き、自分の不安な気持ちを打ち明ける。この場面のジェニファー・ビールス、ものすごくいい表情をしている。

 ジョー・エスポジトは、ロサンゼルスのセッション・シンガーで、70年代にはブルックリン・ドリームスという男性3人のコーラスグループに在籍し活躍した。このグループには、ドナ・サマーの夫ブルース・スダノも在籍していた。ドナ・サマーと共演した ♪Heaven Knows は全米4位のヒットを記録。他にもブレンダ・ラッセルとデュエットした ♪Piano In The Dark などデュエット曲が多い。


10. Romeo / Donna Summer

 「ロスに行ってビッグになるゼ」と言って旅立ったはずのチャーリーが、ワニの着ぐるみを着て店に帰って来る場面。店のおデブな主人がうさぎの着ぐるみを着て踊っている。どうやら店は仮装パーティのようだ。アレックスはピエロの扮装。嬉しい再会も、チャーリーは愛するジーニーがジョニー・Cと寄り添って店を出るところを目の当たりにする・・・。そのパーティ場面で流れるのが、ドナ・サマーの♪Romeo。

 ドナ・サマーは70年代ディスコミュージックの歌姫としてヒットを連発したお方。19歳でアメリカからヨーロッパへ渡り、ミュージカル出演など音楽活動を始める。衝撃のデビューとなった、ジョルジオ・モロダープロデュースによる ♪Love To Love You Baby(愛の誘惑) 。17分に及ぶロングヴァージョンも発表された。エロティックなその歌声に世界は圧倒される。78年の♪MacArthur Parkが全米No.1となる。僕がドナ・サマーの名を知ることになるのは、この頃。地方局ラジオの洋楽番組で流れた数々のヒット曲に憧れたもんです。大人はこんな音楽で踊っているんだ・・・ってね。79年の ♪Hot Stuff や ♪Bad Girl がお気に入り。バーブラ・ストライサンドとデュエットした ♪No More Tears (Enough Is Enough) は見事な構成と迫力あるヴォーカルで今でもよく聴く曲。

 80年代はクインシー・ジョーンズやハロルド・フォルターマイヤーらをプロデューサーに迎えてヒット曲を生んだ。「フラッシュダンス」で使われた ♪Romeo は、当時未発表曲ということで話題になった。シンセの軽いサウンドにサックスがフィーチャーされたダンスチューン。81年にリリースされる予定だったが、移籍によるトラブルからお蔵入りとなり、96年になってリリースされたアルバム「I'm A Rainbow」に収められている。ジョルジオ・モロダーのプロデュース作としては最後のアルバムだった。しかし97年に ♪Carry On でコンビ復活。名義もドナ・サマー&ジョルジオ・モロダーだった。


11. Seduce Me Tonight (甘い誘惑) / Cycle V

 ジーニーがジョニーCの店でストリップをやっていることを知ったアレックスは、単身店に乗り込みジーニーを連れ帰る。「何でお節介をやくの!」と叫ぶジーニーに、アレックスは「友達だから。」と答える。その場面で、店で流れていたロックナンバーが ♪Seduce Me Tonight(甘い誘惑)。これを演奏するCycle Vは、このサントラの為に企画されたプロジェクト。メンバーはリッチー・ズィトー、キース・フォーシー、シルヴェスター・レヴェイとジョルジオ・モロダーという、当時売れっ子プロデューサー/ミュージシャンに、ヴォーカルのフランク・ディミノを加えた5人組だ。作詞はキース、作曲はモロダー。エレポップばかりではなく、こんなロックンロールテイストの曲もかけるのね。「メトロポリス」のサントラにも1曲同名義の曲がみられる。


12. I'll Be Here Where The Heart Is / Kim Carnes

 オーディションの書類選考に合格したアレックスだが、ニックが知人に手をまわしていたことを知り投げやりになってしまう。彼女の唯一の理解者だったハンナの死を知り、古びたバレエシューズを手に決意を固めるのだ。その重要な場面に流れるのが、キム・カーンズの未発表曲だった♪I'll Be Here Where The Heart Is。ハスキーな歌声は、物思いにふける主人公の切ない気持ちを表現しているかのようだ。

 キム・カーンズはそもそもフォークやカントリーで歌ってきたシンガーであった。60年代後半から、 ♪Green, Green などで知られるニュー・クリスティ・ミンストレルズに参加。このグループには、ケニー・ロジャースやバーズのジーン・クラークも在籍していた。映画「バニシング・ポイント」の主題歌で注目され、1972年にソロ・デビューを果たす。以後フォーク系の自作曲を地道に歌い続けていた。81年にジャッキー・デシャンンのカヴァーである、言わずと知れた ♪Bette Davis Eyes(ベティ・デイビスの瞳) が空前の大ヒット。全米9週No.1を記録し、その年のグラミー賞ではレコード・オブ・ザ・イヤー、ソング・オズ・ザ・イヤーを獲得した。80年代のヒット曲としては。ケニー・ロジャース、ジェームズ・イングラムと共演した ♪What About Me (リチャード・マークスの曲だったりする)が僕は一番好きだったなぁ。


Flashdance - Official® Trailer [HD]




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恋戦。OKINAWA Rendez-vous

2012-11-13 | 映画(ら行)

■「恋戦。OKINAWA Rendez-vous/恋戦沖縄」(2000年・香港)

監督=ゴードン・チャン
主演=レスリー・チャン フェイ・ウォン レオン・カーフェイ ジジ・ライ

 沖縄万座ビーチホテルも出てきてリゾート気分いっぱいのおしゃれな恋愛映画。うわーっ、また沖縄に行きたくなった。女に弱い大泥棒とその相棒、日本人ヤクザとその中国人情婦、バカンス中の香港の警察官とその恋人。個性豊かなキャラクターたちが恋と金をめぐって入り乱れる様子が実に面白い。男女の感情だけでなく素性を隠したやりとりが観る側を少しハラハラさせ、日常を忘れさせてくれるデートで観るには最高の映画だろうな。ハチャメチャやってた登場人物たちが物語の終わりには、すっかりあちこちでカップルとなり普通の人になっていくのは、まぁ予定調和なんだけど見事にまとめているから観ていて爽快だ。

 プラターズの♪The Great Pretenderが上手に使われているのも嬉しい。恋の痛手を人に見せまいとする男の歌だけど、ここではレスリー・チャンが気持ちを隠していることをうまーく表現しているかのようだ。ただ恋愛映画としてはレスリー・チャンとフェイ・ウォンがあまりにも感情を抑え込んでいるのでちょっとじれったくもある。だいたいフェイ・ウォンは表情に変化がない人だからね(故に「2046」のアンドロイド役は巧かった)。その分この映画で頑張っているのはレオン・カーフェイ。「南京の基督」や「愛人/ラ・マン」とは違ったコミカルな役柄で見事に好演。それに友情出演の加藤昌也もよかった。レスリー・チャンの相棒役ヴィンセント・コクは、「少林サッカー」のチャウ・シンチーとも仲良しの映画人。ジャッキー・チェンの「ゴージャス」の監督・脚本を手がけた人物でもある(劇中フェイ・ウォンが泊まっている部屋に「ゴージャス」のポスター貼ってあったよね)。

 ★

この文章を書いたのは2004年。外国映画で日本がロケにになるとなかなか嬉しいものだが、沖縄がおっしゃれなリゾートとして登場し、恋のバトルの舞台になるなんてわくわくするね。プラターズが流れる映画って素敵なのが多い。



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2046

2012-11-09 | 映画(な行)

■「2046/2046」(2003年・香港=中国=フランス=ドイツ)

●2005年毎日映画コンクール 外国映画ファン賞
●2005年LA批評家協会賞 美術賞
●2005年NY批評家協会賞 外国映画賞・撮影賞

監督=ウォン・カーウェイ(王家衛)
主演=トニー・レオン コン・リー チャン・ツィイー フェイ・ウォン

※ネタバレあり?かも。ご注意を。

 近未来SFだのなんだと宣伝されたりしているけれど、これは「花様年華」の立派な続編。あれを観ていないとこの映画はちょっと辛い。だからウォン・カーウェイ映画を今まで未体験で、しかも木村拓哉見たさで劇場に訪れた女子諸君は、さぞかしがっかりしたことだろう。僕が行った映画館でも、話半ばで携帯画面があちこちでチラチラし始めた。てめえらまずは最後まできちんと観ろぉ!久しぶりに映画館でむかついた!。

 ウォン・カーウェイの世界を好む者にとって、「2046」はなかなかグッとくる映画だ。「花様年華」を観ていない人には、トニー・レオン扮する主人公は、あれこれ女性に手を出しているただの遊び人のように見えることだろう。実は彼は寂しい男なのだ。かつて愛した人妻の面影を引きずっているが為に、誰か他の女性を深く愛することができない。だからチャン・ツィイーに惚れられても無神経な言動しかとれない。手広くやって楽しんではいるけれど毎年クリスマスイヴは相手を探している始末なのだ。過去にしばられてしまった悲しい男なのだ。そんな彼の心をほんの少し溶かしたのが、家主の娘フェイ・ウォンだった。小説の執筆を手伝う彼女とのやりとりは、前作「花様年華」でマギー・チャンと離婚の切り出し方を練習したあたりを思わせる。いつしか彼女に思いを抱くようになるのだが、彼女はあの日本人を愛している・・・。この場面のトニー・レオンのやさしくも悲しいガラス越しの笑顔が印象的だ。でもそれ以上に映画の中で存在感を見せるのがコン・リー扮する女性ギャンブラー。彼女との恋を通じて、主人公は自分が過去にしばられているのを思い知らされることになる。それにしても女優あっての映画だね。誰もが素晴らしい演技を見せてくれる。話題の近未来の場面はなかなかいい雰囲気を出しているけど、僕は現実社会の人間関係に惹かれた。

 「2046」は主人公が書く小説のタイトルにして、かつて新聞小説を書くために借り、愛した女性との思い出が詰まった部屋のルームナンバー。2046へ行けば何も変わらないから人々はそこをめざそうとする・・・と小説に書いたけれど、トニー・レオン扮する主人公こそが再びそこへ戻りたいのだ。そこは彼の記憶の中の世界。あの穴の中に封じ込めた思い出の世界。それは永遠に知られることはない。故に彼を苦しめるのだ。

 ★

この文章を書いたのは2004年。ウォン・カーウェイ監督作は「恋する惑星」も「マイ・ブルーベリー・ナイト」も大好き。ちょっとおセンチでちょっとお洒落なこういう映画にどっぷり浸るのって素敵な時間。



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花様年華

2012-11-09 | 映画(か行)

■「花様年華/In The Mood For Love」(2000年・香港)

●2000年カンヌ映画祭 男優賞・高等技術院賞
●2000年モントリオール映画祭 作品賞
●2001年セザール賞 外国語映画賞
●2001年香港電影金像奨 主演男優賞・主演女優賞・美術賞・編集賞・衣装デザイン賞

監督=ウォン・カーウェイ(王家衛)
主演=トニー・レオン マギー・チャン レベッカ・パン

 大人の恋は実に切ない。近づきたくても近づけない。一線は守りたいものの、あふれ出る感情を抑えきれるものではない。越えたくても越えられない。近頃読んでいる蓮見重彦総長の著書には「うまいメロドラマは距離感を目に見える形で描くのがうまい」とあった。オーソドックスなれど、本作はその部類に属するのだろうな。隣人という近さと越えがたい一線という遠さ。

 いろんな恋愛映画(特に不倫もの)はあるものの、その恋愛模様に”そんなにうまくいくもんか!”と思う向きもあるだろう。一線を越えることに臆病な一般ピープル(おそらくその立場になれば僕も・・・)には「花様年華」の展開、これが現実かもしれない。僕がこの映画で好きなのはレストランで食事する場面だ。カメラは二人の皿の間を行ったり来たり。「ご主人の好物は?。」「からしは奥さんの好みなのね。」との会話を挟みながら二人の心は高まっていく。「トム・ジョーンズの~」でも食欲が性欲に高まる食事シーンがあった。もちろん「花様年華」ではそんなとこまで行かないが実に印象に残る場面だ。

 難を言えば、シンガポールの場面は判断を観客に委ねたものだろうが、どうも煮え切らない印象が残る。賛否の多いラストのカンボジアの寺院のシーン。何故カンボジアなの?とは思えるけれど、壁の穴にすべての思いを封じ込めるトニー・レオンの姿に、僕は妙に感情移入したんだけど・・・。

 ★

この文章を書いたのは2001年。映画館で観て、この映画の切ない雰囲気に惚れ込んだ。上にも書いたけど、当時読んだ蓮見センセイの評論にあった”恋愛映画と距離感”を初めてきちんと感じられた映画だった。マギー・チャンのチャイナドレスと、トニー・レオンのスーツ姿。ムードに酔える恋愛映画。



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誰にでも秘密がある

2012-11-06 | 映画(た行)

■「誰にでも秘密がある/Everybody Has Secrets」(2004年・韓国)

監督=チャン・ヒョンス
主演=イ・ビョンホン チェ・ジウ チュ・サンミ キム・ヒジョン

世間の流れに逆らえず・・・結局観てしまった。ドラマ「美しき日々」でも共演のイ・ビョンホンとチェ・ジウ主演作。北朝鮮では、映画やドラマで三角関係を描くことは倫理に反するので御法度だそうだ。だが南の韓国では四角関係を描くこともオッケー!?なのか。お気軽に観られるセックス・コメディに仕上がっている。でもこのセックス・コメディは、ウディ・アレン映画のようにお上品ではない。かなり下品な方だ。

三姉妹が一人の男性に夢中になるお話だが、この場面の裏で実はこんなことが・・・と凝った作り。でも観ているうちにどっか興ざめしている自分がいる。多分みんながオーバーアクトなものだから観ていて「ようやるわ」と感じずにいられないからだ。泣かせたら天下一品のチェ・ジウ姫が子供みたいにわんわん泣く姿にしても、長女がセックスに喜びを見いだす場面にしても、もっとうまくみせる演出はないもんか。

この映画はケイト・ハドソン主演の日本未公開作「About Adam」の翻案作品。これは是非オリジナルを観たい。それにしても、この映画はイ・ビョンホンファンの為のもの。うちの嫁サンが一生懸命に見ていた「美しき日々」ではニコリともしない役だったが、ここでは終始ニコニコ。そりゃぁ、三人もの美女に囲まれる役なんだもの。我らがチェ・ジウ姫は冴えない次女の役だけど、コメディエンヌとして今までにない面をみせてくれた。「僕の彼女を紹介します」で自殺しようとするチョン・ジヒョンを止めるガキが三姉妹の弟役で出演。彼までもがビョンホンの魅力に負けそうになる場面が面白かった。



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博多っ子純情

2012-11-05 | 映画(は行)

■「博多っ子純情」(1978年・日本)

監督=曾根中生
主演=光石研 松本ちえこ 小池朝雄 春川ますみ 

北九州市黒崎出身の俳優、光石研は数多くの映画やドラマで活躍している。先日、黒崎でデビュー作にして主演作の「博多っ子純情」上映会とトークイベントが開催されたので行ってきた。主演作の映画「あぜ道のダンディ」上映で昨年黒崎を訪れたときも舞台挨拶を見た。様々な経験から語られる撮影の裏側のお話、地元北九州への思いなど興味深く聴かせていただいた。地元だから起こりうる嬉し恥ずかしい声や観客の反応に、照れくさそうにしているのが印象的だった。

さて「博多っ子純情」は長谷川法世のコミックが原作。世代的に僕は読んだことがないのだが、福岡(九州)に住んでいるとローカルCMで目にすることも多い。それだけ地元で愛されてきた作品なんですね。

博多通りもん
うまかっちゃん

光石研扮する六平は中学生。友達との会話はもっぱら性に関することばかり。観ているこっちまでニタニタしてしまいそうな微笑ましさ。ポルノ映画観ようと映画館で追い払われたり、銭湯の湯船の中で暴発したり、観ているこっちまで気恥ずかしくなるような失態の数々。心のどこかで懐かしの性春映画「グローイングアップ」やら「プライベート・レッスン」やら思い出す・・・いや、そういう映画を観ていた頃の自分を思い出す、と言った方が正しいのかも(笑)。そんなバカやってる一方で男気のある六平。お祭りの日に同級生の女の子を不良高校生から守ろうと、すいかを振り回して奮戦する。それがきっかけなのか、その娘にコクられた六平。頬にキスして、とねだられる微笑ましい場面。

曾根中生監督はロマンポルノで活躍していた監督でもある。70年代のことはよくは知らないが(ほんとです)、脇役にも色っぽい映画ゆかりの女優さんたちもちらほら。散髪屋のお姉さんに迫られる場面や、駆け落ちした隣のお姉さんに憧れて妄想する印象的な場面はまさに本領といったところか。父親役の小池朝雄、お母ちゃんの春川ますみなど主人公を見守る大人たちがなんとも温かい。子供の色恋沙汰から始まったトラブルの解決策をみんなで話し合ったり、子供に酒を飲ませてみたり(今の映画じゃ観られない場面かも)。こんなふうに大人に支えられながらみんな大きくなった。

六平の無鉄砲さと正義感。そんな六平をみまもる松本ちえこの存在が心に残る。こんな経験ないけど、この年頃でしか経験できない甘酸っぱさ。クライマックスの福岡城跡の決闘場面。小便ちびりながら歌う祝いめでたに、なーんとも言えぬ不思議な感動を味わった。70年代の邦画、知らないものがいっぱいある。もっと観てみたいな。




コメント (2)
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ディズニー製作の「スターウォーズ」かぁ・・

2012-11-03 | Weblog
ディズニーが製作する「スターウォーズ」の続編・・・。


暗黒卿は女性で、鏡に向かって「世界でいちばん美しいのは・・・」と言っている。

暗黒卿に幽閉されたお姫様が髪の毛を伝って脱出する。

ヒーローの靴の裏側にANDYと書いてある。

通訳ドロイドはティモン型、万能ドロイドはプンパ型。

フォースの力で空飛ぶ絨毯を使った空中戦。

宇宙船がワープする前に「無限の彼方に・・」と言いたがる。

クライマックスの戦闘は黒いイバラの森の中で、火を噴く竜がうようよしてる。

イォークじゃなくて、やたら動物たちと仲良くなって「いつか王子様が・・」とか歌い出す。

惑星タトウィーンの群衆の中に、「モンスターズ・インク」のメンバーがいる。

反乱軍のパイロットはミスター・インクレディブル。

R2-D2の後継機はWALL-Eになっている。

ジャワ族が七人のこびとになっている。

様々な種族がいることを認める世界観なのにイスラムぽいキャラが出てこない。



ダメ!ダメ!こんな「スターウォーズ」にはならないで!

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テルミン

2012-11-02 | 映画(た行)

■「テルミン/Theremin : An Electronic Odyssey」(1993年・アメリカ)

監督=スティーブ・M・マーチン
出演=レオン・テルミン クララ・ロックモア ロバート・ムーグ

東西冷戦という時代に翻弄されたテルミン博士の生涯、そして楽器テルミンのその後を、90分弱の時間で描く話題のドキュメンタリー。この映画全編を通じて僕の心に浮かんだ言葉は、”ギャップ”だ。

優れた彼の研究が西側に恩恵をもたらすことをソビエトは嫌ったのだろう。しかし、彼が実際に生み出したのはあくまでも楽器だ。音を通じて人の心に平和をもたらす単なる道具に他ならない。これにどんな国家的危機があったというのだろう。創世記の電子工学を用いてそんな夢のある道具を作り出した彼の才能を、KGBは盗聴テープをクリアに聞くことにしか利用できなかった。国家と個人の考え方のギャップ、西側と東側のギャップが感じられて、観ていて悲しくなるところだ。

さらに、楽器テルミンをプレイする人々の思いと世間の受け取り方とのギャップ。クララ・ロックモアはバッハをプレイしたかった、と他の楽器と同列に考えていたのに対し、実際に用いられるのは恐怖映画の音響効果。ヒッチコックやバーナード・ハーマンに用いられたことは、それはそれで意義あることなのだけど、ソロを弾く楽器として用いられるのとは程遠い、”変わったもの”として認知させることにもなったのだろう。その両者の間に存在するのはやはり深いギャップ。おそらく大衆には、手品を見るのと何ら変わりはなかったということなんだろう。

ロック台頭とともにテルミンは様々な用いられ方をされ始める。クララたちテルミンプレイヤーたちが ♪Good Vibration をどう思ったか、ということは映画も触れていない。だが楽器としての一般性は他と比べると乏しいにせよ、こうした”よきモノ”を使い続けていくことは大事なことだと思うのだ。もしかしたらこの映画に真の愛情を感じた人は、往年のライカを使い続けたり、アナログシンセの音や真空管アンプの音を好んだり、ベータマックスの映像を好んだりする”こだわり”を理解できる人なのではないだろうか。

ラストシーンの博士とクララ。音楽を通じて得られた人の絆というものは強い。僕はそう信じているし、このラストシーンでそれを実感したのだった。

 ★

テルミンという楽器をよく知らないという方は下の動画をご覧あれ。
竹内正実 (テルミン奏者)


クララ・ロックモアの名演も見よ。
Theremin - Clara Rockmore play "The Swan" (Saint-Sa�・ns)


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