Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

三丁目が戦争です

2013-07-13 | 読書
実は筒井康隆を初めて読んだのは小学校三年生。
SFジュブナイルの「三丁目が戦争です」がそれだ。
永井豪が挿絵を担当したハードカバーだった(これにだまされた・笑)。

子供の喧嘩に親が介入して、町と町が真剣に憎み合い、戦争を始める。
物語の最後に刻まれるのは、あまりにもブラックな結末。
グロテスクな描写は、想像力たくましかった僕のトラウマになった。


中学時代、筒井康隆のSF作品を読みあさってる中で、それが筒井作品だと知った。
衝撃再び。

今は講談社「青い鳥文庫」でも読めるようだ。
大きくなっても心に引っかかるようなハードな読書体験、今ドキの子供にもっともっとやって欲しい。
この作品に描かれているのは、いかに戦争がつまらないことなのか。
「青い鳥文庫」がこの作品を取りあげてくれたことに、静かだけど確固たる意志を感じます。


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ロジャー&ミー

2013-07-12 | 映画(ら行)

■「ロジャー&ミー/Roger & Me」(1989年・アメリカ)

●1989年全米批評家協会賞 ドキュメンタリー映画賞
●1989年NY批評家協会賞 ドキュメンタリー映画賞
●1989年LA批評家協会賞 ドキュメンタリー映画賞

監督=マイケル・ムーア
主演=マイケル・ムーア ロジャー・スミス

 2004年話題の人の一人、マイケル・ムーア。アポなし突撃取材がモットーのこの方。礼儀知らずという声もあるけれど。そうでもしないと取材できない、そんな正攻法じゃ敵わない相手に挑んでいる人だから支持があるのも事実。そて、その原点である「ロジャー&ミー」が廉価版DVDでリリースされたので観てみました。故郷であるミシガン州フリントは、GM(ゼネラルモータース)の工場で栄えた町。ところが工場の閉鎖に伴い15万人の人口のうち3万人が失業するということに。監督は憤りと疑問を胸に、巨大企業に戦いを挑む!・・・というドキュメンタリー。

 企業城下町が崩壊していく様は考えていた以上だった。犯罪が増加して刑務所を新築し、失業した工員を雇って犯罪を犯した元工員を見張る・・・笑うに笑えない現実、GM会長ロジャー・スミス氏のクリスマススピーチにイヴに家を追い出される人々を重ねる場面、ビーチボーイズの ♪Wouldn't It Be Nice(素敵じゃないか) の使い方・・・監督の題材の選び方と使い方は見慣れたTVのドキュメンタリー番組とは全く違うものだ。利益を追求する企業の行動を”悪”だとは言えない。しかし解雇した工員たちへのケアとして、GMや市がやってきたことは一体なんだ。ブロードウェイ級のショウをみせる劇場を建てて半額で入れます!?そんなことで人々に感謝されるとでも思ったのだろうか?単に憤りだけで撮った映画ではなく、工場閉鎖で揺れる町の人々を追うムーア監督の視線には愛がある。しかし、それ故にオレの町をこんなにしやがって!という監督の気持ちは私的な怨念となって、この映画から第三者的な見方を失わせている原因ともなっているようにも思う。憤りと疑問、それに地方都市で暮らす人々への愛がバランスよく描かれたのが「ボウリング・フォー・コロンバイン」だったのだなぁと改めて思った。

(2004年筆)

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ラマになった王様

2013-07-11 | 映画(ら行)

■「ラマになった王様/The Emperor's New Groove」(2000年・アメリカ)


監督=マーク・ディンダル
声の出演=デヴィッド・スペイド ジョン・グッドマン トム・ジョーンズ

 最近のディズニー映画にはなかったラフな楽しさに満ちた映画。昔の「ドナルドダック」や「ミッキーマウス」のTVシリーズ等いわゆる”トゥーン”に通ずるくだけた楽しさだ。お話自体は”わがままばかりしているといけないよ”という寓話であるが、危機また危機のドタバタがやはり一番印象に残る。確かに楽しい。

 今回は南米が舞台。映画全体としては確かに楽しいんだけれど、僕にはどうも心にひっかかるところが・・・。それは随所に散りばめられた見せ場の数々が、あまりにも米国文化的だということ。例えばミュージカルシーンやタイトルでも使われる"groove"という言葉の現代的な響き、秘密の研究所に降りていくときのウォータースライダー等々。そんな現代的な楽しさばかりが残って、南米の情緒とか風物といったものが、なーんか否定されているようにさえ思えた。

 これまでのディズニー作品には文明化されていない地域やアメリカとは異なる文化圏を題材にしたお話でも、そこには徹底した描かれ方があった。「ジャングル・ブック」では音楽にジャズを使った以外は現代的味付けはないし、最近の「ムーラン」にしたって古き東アジアの考え方を尊重している作風に思われた。だが「ラマになった王様」にはそれはない。スタッフはマチュピチュを訪れて遺跡や風景を背景画の参考にしたらしいけど、お話自体は”ご当地ネタではウケない”とでも言いたげで、そこが残念だ。確かにアドベンチャーや成長物語として観れば楽しい。でも昔の南米の人はみんな巨大ダンゴムシを食っているっていうの?。ギャグなんだろうけど、パチャが平然と食べ方を教えるところがあるだけに、もしそういう風俗がないのならば”偏見”につながる恐れもあると思うのね。ともかく楽しめる映画ではあったのだけど、ちょっと気にしてしまいました。

(2003年筆)


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LOVERS

2013-07-10 | 映画(ら行)

■「LOVERS/十面埋伏」(2004年・中国)

●2005年全米批評家協会賞 監督賞

監督=チャン・イーモウ
主演=金城武 チャン・ツィイー アンディ・ラウ

 イーモウ監督の前作「HERO」でも美しい映像美に酔ったが、今回も然り。冒頭のチャン・ツィイーの華麗な舞、緑の竹林、白い雪原、スローモーションの鮮血・・・凝りに凝った色づかいは強い印象を残す。遊郭での舞を観るだけでもう大満足。金城、歌ってんじゃねぇよ、真面目に見ろよ!と怒りたくなるくらい見とれてしまった(笑)。イーモウ監督は北京オリンピック開会式の演出を手がけるそうだけど、この華麗な映像絵巻を生で見せて欲しいなぁ。「HERO」は文字通りのヒロイズムというテーマが貫かれた映画だった。書をめぐる精神論なんて欧米人にわかるのか?と思えるくらいに徹底した描かれ方をしていた。歴史の陰にこんな男たち女たちがいた。だけど歴史は誰もそれを語らない・・・そんな無常観がたまらなかった。だが「LOVERS」は、男女の三角関係を軸にしたラブロマンスと伝統的な武侠映画の融合。それはそれで立派な試みだ。しかし、どうもどっちつかずの印象を受けてしまう。

 前半のアクション場面は見せ場だらけだ。特に竹林での戦いの場面は素晴らしい。頭上を飛び交う刺客たち、降り注ぐ竹の槍。スピーディーでしかも斬新。これは武侠映画の名作「侠女」へのオマージュだろう、非常に力のこもった見応えのある場面だ。ところが三角関係が露呈してからの後半は前半の勢いがなくなってくる。ラストの雪原の戦いだって、妙に間延びしてしまってしつこささえ感じられた。それも愛の深さ故?そう思えばそれを克明に描いた丁寧さには頭が下がります。チャン・ツィイーでラブシーンをよっぽど撮りたかったんだろうね。武侠映画の精神性では欧米人に受けないので、恋愛映画にしてしまったのだろうか。結局「謀(はかりごと)」をめぐるサスペンスとのバランスの問題なんだろうね。そういう意味では「HERO」よりも女性に受けそうな映画とも言えるかな。ワダ・エミの衣装は今回も独創的で美しい。

(2004年筆)




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風立ちぬ

2013-07-09 | 映画(か行)

■「風立ちぬ」(2013年・日本)

監督=宮崎駿
声の出演=庵野秀明 瀧本美織 西島秀俊 西村雅彦

※ストーリーに触れる部分があります。
 宮崎駿監督が年齢を重ねた今だから撮れる映画。「風立ちぬ」は、そんな大人のためのジブリアニメだ。零戦を設計した堀越二郎を主人公に、宮崎監督の空への憧れを結集させた美しい作品だ。堀越二郎は映画「零戦燃ゆ」(1984)で北大路欣也が演じているが、あくまで軍人を主人公にした戦争映画の脇役にすぎない。「風立ちぬ」で描かれる二郎の思いはただ一つ。"いい飛行機を作りたい"それだけだ。そのために才能や技術を発揮すること、アイディアを出すこと、努力することを惜しまない。そんな「魔女の宅急便」のトンボを大人にしたようなまっすぐな主人公。監督は二郎というキャラクターに、自分自身の空へのあこがれを惜しみなく注ぎ込んだ。

 宮崎アニメには飛行シーンはこれまでの作品でも幾度も登場する。ナウシカが乗るメーヴェ、魔女っ子キキがまたがるほうきやモップ、ポルコ・ロッソが駆る真っ赤な飛行機、千尋とハクは空を浮遊し、サツキとメイはトトロにしがみついて空を飛ぶ。「風立ちぬ」は空を舞う飛行機が次々と登場する。二郎はイタリア人設計者カプローニに幼い頃から憧れ、夢の中で彼と会い、ときに啓示を与えられ、励まされ、生涯彼を師と仰ぐ。カプローニが登場する夢の場面は、「風立ちぬ」の中で従来の宮崎アニメ的なファンタジー部分を担っている。翼の上に立って会話する二人、大勢の人々を乗せた巨大な複葉機。

 しかし。第二次大戦を突き進む当時の世界にとって、飛行機は戦争の道具でしかない。「風立ちぬ」では設計者にとっての厳しい戦時下の現実も描かれる。それでも開発に携わる技術者たちが仕事したり、設計について議論を交わす場面は生き生きとしている。好きなことをやっている、決して国のためとか大義のためという気負いはそこには見られない。しかし彼らが開発した飛行機たちは決して戦地から戻ってはこない。映画終盤ではカプローニとの夢の場面でそうした苦悩も描かれる。また、国際スパイの存在や秘密警察、満州事変などあの時代のきな臭い部分も描かれている。いつしか二郎もつけ回されることになっていく。上司が「会社が全力で君を守ってやる。君が使えると思えるうちはね。」という一言もクールな現実。

 だがこの映画は戦争という時代の厳しさばかりを描いてはいない。若い頃列車で出会った菜穂子と避暑地で感動の再会。病身である菜穂子と二郎のエピソードは、堀辰雄の「風立ちぬ」を下敷きにしている。ここから続く二人の一途な純愛物語は戦中の話であることを忘れさせるような部分。病身の彼女とのやりとりは堀辰雄の小説でも心にしみるが、それはこの映画でも同じ。残された時間が少ない彼女が、二郎に寄り添うことしかできないながらも彼の心の支えになっている様子は悲しくも美しい。家に仕事を持ち帰った二郎の手を握って離さない、大仕事を成し遂げた二郎にそっとふとんをかけてあげる菜穂子。そして、病が悪化した彼女が選んだのは・・・。エンドクレジットで流れるユーミンの「ひこうき雲」。失われた命と空へのあこがれを歌う「ひこうき雲」の歌詞が心にしみる。適度にファンタジー、適度に現実の厳しさ、そして純愛。密度の濃い126分。いい場面がいっぱいだし、いい台詞もいっぱい。

 映画が終わっていろんなことを考える。ジブリが初の外国映画配給をしたのは、戦闘機乗りが主人公のチェコ映画「ダーク・ブルー」。あの映画の邦題候補は「この空に君を想う」だったそうだが、採用されずキャッチコピーとなった。不採用だったタイトルに込められた気持ち、「風立ちぬ」を観ると理解できるような気がした。高原のサナトリウムに"なおこ"という病身のヒロインとくれば、「ノルウェイの森」。もしかしたら村上春樹もあの小説を書くのに、堀辰雄の「風立ちぬ」を頭の片隅に置いていたのかもしれないな。




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機動戦士Zガンダム 星を継ぐもの

2013-07-08 | 映画(か行)

■「機動戦士Zガンダム 星を継ぐもの」(2005年・日本)

監督=富野由悠季
声の出演=池田秀一 飛田展男 古谷徹 鈴置洋孝

 初日に同僚のガンダム好きたちと劇場へ。TVシリーズはそれほど見ていないので、その分だけ真剣に見ることができた気がする。「ミリオンダラー・ベイビー」や「オペレッタ狸御殿」と同日公開だったので、そんなに客はいないだろうと思った僕らが甘かった。ちょっと年齢層高め、男性客中心の場内、いかにも思い入れがありそうな会話が劇場のあちこちから聞こえてくる。あぁ、こういうのはやはり同じ思いの人と一緒に見たい。同僚引き連れて行って大正解だったね。

 TVシリーズの再編集だから物語をうまく運ばねばならない。カミーユはいきなり捕らえられている、そこへMk-llがいきなり降ってくる、問答無用の導入部。後から説明らしき場面は挿入されますが、強引だなぁという印象。しかしそこから先は、急な展開ではありながらもうまい具合にストーリーを端折っているのでそれなりに予備知識があれば着いていけます。Z(ゼータ)そのものをよく知らなくてもファーストシリーズの知識があれば大丈夫かな。

 もちろんMSのドンパチも力が入って面白い。ジャブロー攻略のために大気圏突入する場面の緊迫感!。改めて百式の勇姿に惚れ直す。でもこの頃のガンダムの面白さはやはり人間ドラマなのね。最近の「SEED」はバトルシーンがやたらと多い印象を受ける。ファースト世代だけにそう思えるのだろうけど。今回は三部作の最初だけにまずは物語の舞台と人間関係を紹介することに重点が置かれている。だからシャアとアムロの再会というファースト世代にはたまらない場面でエンディングを迎えるというのが実に憎い。10月公開の第2弾が「恋人たち」と題されているから人間模様がグッと深まってくるのかな。Gacktの主題歌は思いの外かっこよかった。次回もガンダム好きたちと見に行こう!。

(2005年筆)

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カンフーハッスル

2013-07-07 | 映画(か行)

■「カンフーハッスル/功夫」(2004年・香港=アメリカ)

監督=チャウ・シンチー
主演=チャウ・シンチー ブルース・リャン チャン・クオックアン

これは愛の映画だ。偉大なるカンフー映画の先達たちへの限りなき敬意と愛の結晶なのだ。日本における時代劇と同じく、製作されることすら減ってしまった香港映画のお家芸。それは真の武術家たちが映画を活躍の場に選ばなくなったこともあるだろうし、そうした人々がいなくなりつつあるからだ。これはニッポンも同じ事。そこで我らがシンチーは声をあげた。「何故誰もブルース・リーの話をしなくなったんだ!」そして自らがカンフー映画をつくることでその思いを世に知らしめたのだ。コメディという彼のフィールドで、SFX技術という現代の技術で、やりたいことをやりたいだけやったのだ。いいゾ!シンチー!。僕らは彼のそのガッツに拍手を贈ろう!。

墜ちるところまで墜ちながらもはい上がって勝利をつかむ。そんな本来カンフー映画にありがちな”復讐劇”というスタイル。「少林寺三十六房」だって「酔拳」だってそうだ。「少林サッカー」はその伝統を違った形で活かしたのだが、「カンフーハッスル」ではそれを避けている。豚小屋砦で戦う面々は、身に降りかかった危機に向かっているだけで、復讐という要素はない。やるところまでやらない、シリアスさがない、とつまらなさを感じた人ももしかしたらいたのでは。でもよーく考えよう。シンチーはブルース・リーになりたかったのだ(ファンクラブの会長でもある)。ラストの死闘で彼が身につけているのは「燃えよドラゴン」でブルースが身につけていた衣装にそっくりだ。ブルース・リーの映画に復讐という要素があっただろうか。「怒りの鉄拳」だって「死亡遊戯」だって「ドラゴンへの道」だって降りかかる火の粉をはらっただけのお話じゃない。キャンディー屋台だって「ドラゴン危機一髪」のノラ・ミャオを思わせはしないか?。実はこんなところでもブルースへのリスペクトがあるようにさえ思われる。ただその思いばかりが全面に出て、「少林サッカー」程の感動に結びついていないのも事実。

(2005年筆)



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レインメーカー

2013-07-06 | 映画(ら行)

■「レインメーカー/The Rainmaker」(1997年・アメリカ)

監督=フランシス・F・コッポラ
主演=マット・デイモン クレア・デーンズ ダニー・デビート

 ジョン・グリシャムの映画化作品は、観ていて本当に力が入る。本作は低所得層の一家が白血病に対する保険金支払いをめぐって保険会社を相手に起こした訴訟がメインの物語となっている。そして司法試験に合格したばかりの正義感に燃えた主人公が、公判を通じて成長していく様を描く。同じグリシャム作品でも「依頼人」の様なサスペンス的面白さはないけれど、法廷映画としては「評決のとき」とともに申し分ない出来といえるだろう。司法の世界を熟知した作家の原作だけに、司法界に対する目はとても厳しい。

 コッポラのメガホンとプロデューサーであるマイケル・ダグラス下に、スタアキャストが結集し、主演の若手を支えている。ジョン・ボイドの悪徳弁護士役は貫禄ものだし、ダニー・デビートもこういう役はさすがに巧い。特筆すべきはお久しぶりのミッキー・ロークだね。主人公の雇い主であるダーティな弁護士役だけど、出番が少ないのに異様な存在感。訴訟中の主人公を助けるところはかっこよかった。経験もない主人公だけに訴訟の準備はさぞかし大変なはずなのだが、その辺りはあまり描かれないのでその辺のリアルさは今ひとつかな。でもロースクール卒業後の就職や司法取引の様子などは、他の映画では見られないようなリアルさがある。法廷ものがお好きな人なら、きっと満足できるはず。 

(2003年筆)

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時をかける少女 - 80's Movie Hits ! -

2013-07-05 | 80's Movie Hits !

- 80's Movie Hits! - 目次はこちら

■時をかける少女/原田知世
from「時をかける少女」(1983年・日本)

監督=大林宣彦
主演=原田知世 高柳良一 尾美としのり

 80年代アイドルの中でも”角川三人娘”は、活躍の場がほとんど映画というフィールドだったという点でもかなり異質な存在だった。薬師丸ひろ子が「ザ・ベストテン」で歌う!となるとオオッ!と思ったものです。それくらいにテレビ出演は少なかった。しかし知世チャンのデビューは「ねらわれた学園」や「セーラー服と機関銃」のテレビシリーズ(残念」ながら僕の出身地では放送されていなかった)。同じオーディションで1位を獲得した渡辺典子は「伊賀忍法帖」の主役(知世チャンが憧れていた真田広之の相手役)を獲得、知世チャンは特別賞であった。それで映画からデビューということにならなかった訳。

 角川映画に知世チャンが初登場するのは、ご存じ「時をかける少女」。僕は当時筒井康隆の小説(特にショート・ショート)に夢中で、同氏のジュブナイルが原作だけでも嬉しかったものだ。劇場公開時は見逃してしまったが、テレビの特別番組で観てから、僕は映画にそして知世チャンに夢中になった。大林監督の色彩美、原作にはないどこかおセンチなムード。そして大ヒットしたユーミン作の主題歌 時をかける少女。「時かけ」はファンだから認めるというタイプのアイドル映画ではなく、多くの人を魅了し、心に残る作品となった。それ故製作に関わった人々にも忘れがたい「時かけ」は、97年に角川春樹氏のメガホンでリメイクされている(主役は中本奈奈)。主題歌 時のカンツォーネ を担当したユーミンは、知世チャンヴァージョンと同じ歌詞に違うメロディをのっけた。そして同原作は、細田守監督によるアニメ版など多数のリメイクを生み、世代を超えて語り継がれている。

 「時かけ」以後の知世ちゃんの活躍振りは、申し訳ないけど渡辺典子のはるか上を行く。ひろ子・知世の2本立て公開された「愛情物語」ではバレエの経験を生かしたミュージカル映画だった。当時はキャアキャア言って観たものだが、冷静に考えるとこれは単なるアイドル映画だったようにも思う。森村桂原作の「天国にいちばん近い島」、「少年ケニア」や「幻魔大戦」ではアニメの声優も経験した。主題歌も美しかった「早春物語」では初のキスシーン。幸運なお相手は林隆三、ファンにはドキドキものだった。「黒いドレスの女」はハードボイルドサスペンスだったが、これはすっかり知世チャンが浮いていた。

 映画だけでなく、シンガーとしての活動は他の角川アイドルとは違い積極的だった。僕はそのほとんどを所有している(恥)。1stの「バースデイ・アルバム」ではユーミンの楽曲をカヴァー、2ndの「撫子純情」(名作!)では坂本教授のプロデュースの下で白井貴子や大貫妙子の提供曲を歌った。3rd「パヴァーヌ」は大貫妙子プロデュース作で、その雰囲気に癒される佳作。でもミーハーだった僕の一番のお気に入りは4th「NEXT DOOR」。秋元康、後藤次利の80年代を代表する名コンビ(?)と組んだポップなポップな作品。僕はこのアルバムのコンサートツアー”マスカット・リップス”に足を運んだ。熊本市民会館の前から2列目!。素敵でしたぁ・・・。中崎英也の名曲 早春物語 (後にセルフカヴァー)、どうしてますか 雨のプラネタリウム 等良い曲が多い(ひいき目)。

 角川事務所から独立後は、スクリーンでも大活躍。「私をスキーにつれてって」と「彼女が水着にきがえたら」のホイチョイ・プロ作品は、リゾートムービーとして大ヒットを記録した。歌の方は、この頃からアーティスティックな面が開花する。フレンチに挑んだ名作 ♪彼と彼女のソネット はエルザのカヴァー。そして90年代のトーレ・ヨハンソンプロデュース作は、従来のファン以外にもアピールして成功した。近頃は映画での華々しい活躍がなくなってきた。ちょっと寂しくはあるけれど。

※原田知世の歌が流れる主な映画
1983年・「時をかける少女」 = 時をかける少女 愛のためいき(duet with 高柳良一)
1984年・「愛情物語」 = 愛情物語 地下鉄のザジ ダンデライオン~遅咲きのたんぽぽ~ Curtain Call
1984年・「天国にいちばん近い島」 = 天国にいちばん近い島 愛してる 草冠の姫君
1985年・「早春物語」 = 早春物語 星のデ・ジャヴ
1985年・「二代目はクリスチャン」 = 二代目はクリスチャンのテーマ(BIRDS with 渡辺典子・原田貴和子・野村宏信)
1995年・「あした」 = あした




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トラフィック(ぼくの伯父さんの交通大戦争)

2013-07-04 | 映画(た行)
■「トラフィック(ぼくの伯父さんの交通大戦争)/Trafic」(1971年・フランス)

監督=ジャック・タチ
主演=ジャック・タチ マリア・キンバリー マルセル・フラバル オノール・バステル 

 なんてお洒落な映画だろう。ベルギーで開かれるモーターショウにパリからキャンピング・カーを出品しようとする3人の珍道中を描いたロードムービー。ジャック・タチ作品は実は代表作の「ぼくの伯父さん」しか観たことがなかった。あの文明に振り回される現代人をおかしく、しかも暖かく見つめる視点がなかなか好きだった。本作でもそれは同じだ。渋滞の車の中での人々の同じような仕草や、アポロの月面着陸を見てゆっくり動いてみせる大人な達。台詞で多くを語らずとも映像はとても雄弁だ。この映画は登場人物たちにカメラが近寄らず、そこで何が起こっているかをきっちり見せているのが特徴かな。だから無用なカメラ目線の演技もないし、クローズアップで表情のおかしさを撮ることもない。例えばモーターショーが始まった途端に、あちこちで開けたり閉めたりする行動が繰り返されていたりするところとか。

 「ぼくの伯父さん」のユロ氏はどこか間の抜けたでも人間味のある人物として描かれていたが、それはここでも同じ。キャンピングカーの設計者という役どころなのだが、このキャンピングカーが楽しい仕掛け満載。フロントグリルでバーベキューしたり、バンパーを引き出すと椅子になったり、一見子供じみた発想かもしれないがそれもユロ氏の自由な精神が表現されているのだ。他の登場人物もユロ氏に負けず魅力的な大人たち。広報担当のお洒落なお姉さんはその筆頭だろう。クビを言い渡されたユロ氏が、車に乗らず地下鉄にも乗らず、彼女と相合い傘で消えていくラスト。人々が次々と車を降りて地面を埋め尽くす自動車の間を歩き回るこの場面は、モータリゼーションを皮肉って人間回帰を訴えているようでもあるではないか。この映画はビデオリリースのみだったが、1995年に原題のままのタイトルで劇場公開された。

(2003年筆)




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