映画と本の『たんぽぽ館』

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灯台守の恋

2008年10月07日 | 映画(た行)
灯台守の恋

ハピネット

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しっとりした大人のはかない恋を描いています。
舞台はフランス北西部ブルターニュ地方、ウエサン島。
小さな漁業の島ですが、ここに一つの灯台があり、沖を行く船の大事な道しるべとなっている。
この灯台には数人の灯台守の仲間たちが二人ずつ組んで交代で勤務。
この灯台、岬の先端にあるのではなくて、海中に立っているので、
灯台に入る時は船を使い、ロープに宙吊りにならないと入れないという、なかなか大変なもの。
さて、その灯台守の一人が亡くなり、代わりに経験もないよそ者が本部からまわされてきた。
名前はアントワーヌ。
彼は同じ灯台守のイヴォンと、その妻(亡くなった灯台守の娘でもある)マベの家に世話になる。

さて、しかし、この小さな島の人たちは、この新米が気に入らない。
この地方はもともとイギリスから渡ってきたケルト人の子孫の地といわれており、
フランス語とは別の言語も持っている。
フランスでありながら、また独自な文化を持つ地方なのですね。
そのため田舎にはありがちですが、余計に結束が強くまた排他的でもある。
アントワーヌはどこへ行っても、冷たくよそよそしい仕打ちを受けてしまう。
しかし、真っ先に親しく接してくれたのは美しいマベ。
またその夫イヴォンも、はじめのうちはアントワーヌが気に入らなかったのですが、彼の人柄を知るにつけ、だんだん親しみを見せるようになり、
よき灯台守の相棒となっていく。

ところが、いつしかアントワーヌとマベはお互いを意識し、惹かれあっていることを自覚してゆく。
イヴォンは無骨ではあるけれど、深くマベを愛しており、
また何かとアントワーヌの面倒も見てくれる、すごくいい人なのです。
それがわかりすぎているほどわかっているので、
二人はイヴォンを裏切ることができない。

ある祭りの夜、イヴォンは灯台の当番に当たっており、
アントワーヌとマベはとうとう耐え切れず罪を犯してしまいます。
花火の打ち上げられる中でのそのシーンは、切なくもロマンチック・・・。

まあ、悲恋に終わることは想像つくと思いますので、これ以上語るのはやめましょう。
荒涼としたこの地の雰囲気は最果ての地と呼ぶにふさわしく、
それだけで、なんだかもの悲しい気がしてきます。
それがこの悲恋の物語にいっそうの効果を上げている。

ここで、イヴォンが本当に味のある人柄なのが見所です。
彼は手先が器用で、灯台の仕事の傍らいつも椅子を作っているのですね。
あまりたくさん作るものだから、彼の家ばかりでなく、
近所の店や教会にまで彼の椅子があふれかえっている。
お祭りの花火をこっそり盗んで、灯台から花火を上げてみせる。
島の人々の拍手喝采。
そんな彼が妻の不倫を知ったとき・・・。
こんな切なさもあって、いっそう物語に深みを添えているわけです。
この恋は、はかなく終わりますが、
それだけではすまないおまけが・・・。
まあ、じっくり味わっていただきたいですね・・・。

2004年/フランス/105分
監督:フィリップ・リオレ
出演:サンドリーヌ・ボネール、フィリップ・トレトン、グレゴリー・デランジュール、エミリエ・デュケンヌ